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【旧作】貧困の終焉【斜め読み】

ジェフリー・サックス(鈴木主税・野中邦子訳),2006,貧困の終焉──2025年までに世界を変える,早川書房.(6.27.2020)

 本書は、アメリカ合衆国の開発経済学の第一人者、ジェフリー・サックスによる、「貧困との闘い」の記録だ。
 国家経済破綻の危機に瀕した、ボリビア、ポーランド、ロシア等の経済顧問として尽力したサックスは、ハイパーインフレーションの抑制、対外債務の削減等に成功する。ときには、緊縮財政や公営事業の民営化を要求する世界銀行やIMF(国際通貨基金)と厳しく対峙し、経済危機に瀕した国々の、とくに貧困層の生活を守る。
 中国とインドにおける貧困問題の通時的考察に続いて、サックスは、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国(南ア共和国を除く)の絶対的貧困の問題に向き合う。多くの人々がマラリアやエイズにより死亡する現実に立ち向かい、合衆国をはじめとする先進産業国のODA増額を強く要請する。貧困国の債務については、U2のボノ等と共闘し、先進国に債権放棄を認めさせた功績は、よく知られている。サックスの視点は、自ら策定に加わった「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals : MDGs)」の達成による、2025年時点での絶対的貧困の撲滅に向けられる。
 500ページを優に超える大作だが、いま読んでも価値のある著作だと思う。

目次
地球家族のさまざまな肖像
経済的な繁栄の広がり
なぜ繁栄を享受できない国があるのか
臨床経済学
ボリビアの高海抜(ハイ・アルチチュード)ハイパーインフレーション
ポーランドがEUに復帰するまで
ロシアが普通の国になるための闘い
五百年の遅れを取り戻す―中国の場合
インドのマーケット再編成―恐怖を乗り越えた希望の勝利
声なき死―アフリカと病
ミレニアム、9・11、そして国連
貧困をなくすための地に足のついた解決策

現在、全人類のうち10億人が飢餓・疫病・地理的な孤立のために「貧困の罠」から抜け出せず、1日1ドル未満で生活することを強いられている。そのうち、生きる闘いに破れ、死に追いやられる人は毎日二万人もいる。しかし、人的資源の確保とインフラの整備さえ行なわれれば、自然と促される経済活動によって貧困を過去のものとすることができるのだ。そして、そのために必要な援助額は先進各国のGNPのたかだが1パーセントに満たない。私たちは、人類史上初めて「貧困問題を解決できる可能性を手にした世代」なのである。東欧革命中のポーランド、解体直後のロシアなど、世界各国の歴史的局面で経済政策の顧問を務め、トップの政治家たちに助言を与えてきた国際開発の第一人者が、その豊かな経験を振り返りながら、貧困をなくすための方策を明らかにする力強い希望の書。

国連ミレニアム宣言

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