村本邦子・松本周子,2024,婦人相談員物語──その証言から女たちの歴史を紡ぐ,国書刊行会.(11.22.24)
婦人相談員は売春防止法によって設置され、性暴力、DV、人身売買など、さまざまな困難を抱える女性たちに寄り添ってきた。本書は、これまであまり光をあててこられなかった婦人相談員の証言から、彼女たちの人生とともに、彼女たちが出会ってきた女性たちの物語を紡ぎ、女性の苦難とつながりの物語を歴史(herstory)として記録したものである。
婦人相談員(女性相談支援員)、婦人保護施設(女性自立支援施設)、母子生活支援施設は、売春防止法、DV防止法、女性支援法(困難な問題を抱える女性への支援に関する法律)、児童福祉法を根拠法に、性搾取、暴力被害、貧困等で苦しむ女性たちの保護、自立生活支援を行ってきた。
本書は、婦人相談員のライフヒストリーを中心(第2部「婦人相談員の物語」)に据え、わが国における女性福祉の歴史と現状をとりまとめる。
「困難な問題を抱える女性への支援」の中心には、性搾取の予防、性暴力被害者の保護と、適切な医療の提供を含む自立生活支援、最低生活保障、以上が据えられるべきだと考えるが、行政が既存の公的施設だけでなく民間シェルター等に惜しみなく財政援助し、幾重にもはりめぐらされたセーフティネットを構築していくべきであろう。
また、併せて、売春防止法を売買春防止法に改定し、買春者を処罰する法規とすべきであろう。
目次
第1部 婦人相談員の歴史
売春防止法前史
売春防止法の成立
高度経済成長と売買春の変化
追加される法律と制度
婦人相談員の仕事
第2部 婦人相談員の物語
婦人相談員こそ天職―高里鈴代(1977年‐1980年、1982年‐1989年)
支え、支えられる関係はいつまでも続く―早川和江(1984年‐2004年)
好きな仕事をして人が喜んでくれるなら最高―中田美佐子(1987年‐2012年) ほか
第3部 婦人相談員から女性相談支援員へ
婦人相談員の時代
社会の変化と若い女性たちへの支援
困難な問題を抱える女性への支援に関する法律の成立
未来にむけて