井上荒野,2019,あちらにいる鬼,朝日新聞出版.(11.22.24)
人気作家・みはるは講演旅行を機に作家・白木と男女の関係になる。一方、白木の妻・笙子は夫の淫行を黙認、平穏な生活を送っていた。だが、みはるにとって白木は情交だけに終わらず、〈書くこと〉を通じてかけがえのない存在となる。父と母、瀬戸内寂聴をモデルに3人の〈特別な関係〉に迫る問題作。
荒野さんは、この小説で、父、井上光晴とその愛人、瀬戸内寂聴、そして母とのドロドロの三角関係を描き出した。
作家・井上光晴とその妻、そして瀬戸内寂聴…長い三角関係の心の綾 井上荒野さん「あちらにいる鬼」
白木篤郎(井上光晴)の女癖の悪さ、虚言癖が、うんざりするほど細かく描写されている。
生皮──あるセクシャルハラスメントの光景に登場する性加害者、月島光一のモデルは、荒野さんの父、井上光晴であったのだろう。
自らの権力を利用して性的放埒を繰り返す男のありようは、気色悪さ満点である。
井上荒野,2016,ママがやった,文藝春秋.(11.22.24)
小料理屋の女主人百々子七九歳と若い頃から女が切れない奇妙な魅力をもった七つ年下の夫。半世紀連れ添った男を何故妻は殺したのか。
荒野さんは、この小説で、母に父を殺させたのだろう。
どうしようもないクズ男を父にもった娘の業の深さを感じさせる作品だ。