一番ケ瀬康子,1992,地域に福祉を築く,労働旬報社.(11.12.24)
『人生百歳・最後は一週間』のために。ゴールドプラン、老人保健福祉計画づくり、在宅介護にどうかかわるか?生協組合員や女性は安心な老後づくりに今何ができるのか?“老後は人権”だから私たちのボランティア精神に期待がかかる。
「高齢者保健福祉推進10カ年戦略」(厚生省)が策定されて3年目に出版された本書には、のちに深刻化する在宅福祉の空洞化問題が余すところなく指摘、予見されている。
一番ケ瀬先生は、1979年に政府が策定した「新経済社会7か年計画」中の「日本型福祉」構想を手厳しく批判する。
内閣府がとりまとめている「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」によれば、日本社会における高齢者と別居子との接触頻度は、米国、スウェーデン等と比較して著しく低く、このことは、「日本国民は他国と比べて老いた親に対する子どもの情愛が深い」──したがって、「日本には、子ども家族が老親を扶助、介護する良き伝統──福祉の含み資産がある」という言説が虚妄であることを示している。
本書は、ホームヘルパーの不足による在宅福祉の空洞化問題を中心に、現在にに至るまで解消されないままにある地域福祉の課題を的確に洗い出した論考集である。
目次
1 地域に福祉を築く
2 地域の変化、くらしの変化
3 安心な老後の条件
4 “人生百年”時代の福祉をめざす―高齢化社会と女性