とくに目新しいことが書かれているわけではないが、賃労働と家事・育児労働におけるジェンダー間格差という語り尽くされた感のあるテーマについて、横断的(地域間)、縦断的(歴史的推移)比較を組み合わせて考察することで、説得力のある手堅い論述が展開されている。
少子化問題の克服の鍵となるのは、手厚い公的育児支援と、税制度、社会保障制度改革による女性就労の促進、そして移民の積極的な受容である。後者については、移民自身の家族を分断しないよう、「出稼ぎ型」ではなく「定住型」の受容がめざされなければいけないだろう。
目次
第1章 日本は今どこにいるか??
1 工業化と「国のかたち」
2 各国の多様性
3 現在の仕事と家族を見る視点
第2章 なぜ出生率は低下したのか?
1 少子化・未婚化の要因を探る
2 日本で未婚化が進んだのはなぜか
3 女性労働力参加率と出生率の関係
第3章 女性の社会進出と「日本的な働き方」
1 なぜ女性の労働力参加は進んだか
2 日本の女性労働の変化
3 「日本的な働き方」と均等法
第4章 お手本になる国はあるのか?
1 自由主義、社会民主主義、保守主義
2 サービス職の特徴とグローバル化
第5章 家族と格差のやっかいな関係
1 家族にどこまで負担を負わせるか
2 家事負担の平等化はなぜ進まないか
3 家族と格差のこれから
終 章 社会的分断を超えて
男性中心の労働環境のため女性が活躍しづらく、少子化が深刻な日本。仕事と家族のあり方は限界にきている。一方、「大きな政府」を代表するスウェーデンと「小さな政府」を代表するアメリカは正反対の国と思われがちだが、実は働く女性が多く、出生率も高いという点で共通している。それはなぜか。歴史的な視点と国際比較を通じて日本の現在地を示し、目指すべき社会を考える。この国で働き、家族と暮らす全ての人へ。
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