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本と音楽とねこと

【旧作】ひとりになれない女たち―─買い物依存、電話・恋愛にのめりこむ心理【斜め読み】

衿野未矢,2003,ひとりになれない女たち―─買い物依存、電話・恋愛にのめりこむ心理,文藝春秋.(3.31.24)

 衿野さんの依存症女の本は、けっこう興味深くて、2冊ほど、読んだことがある。(一冊は二度読み。)

依存症がとまらない

依存症の女たち

依存症の女たち、依存症、依存症臨床論

 衿野さんは、難病、「全身性強皮症」で、2016年、53歳で亡くなったのだな。

 宇多田ヒカルの歌じゃないけど、人間、適度のアディクトは必要だ。



宇多田ヒカル - Addicted To You (UP-IN-HEAVEN MIX)

 凡庸な日常に、ちょっとした刺激を与えてくれるスパイス。

 恋愛、推し活、仕事や趣味への没頭、これらにアディクトはつきものだろう。

 ただ、それが、メンタル面も含めて、極度の不調、本業や人間関係の喪失につながってしまうのは、たしかに不幸なことではある。

 ここで紹介した女性たちは、レディコミの主人公のように、打算的ではない。人生に対して真剣だ。それでも、ひとつひとつのケースを見ていくと、恋ではない、べつの何かを求めていたように見えてならない。渚さんと奈美さんは、「サクセスストーリー」と「自信のなさ」のアンバランスを修正してくれるものが必要だった。映子さんは「両親への仕返し」を、民子さんは「親友がはなれていくという寂しさを埋めてくれるもの」がほしかった。
 恋愛は、一見、それらの欲求を満たしてくれるように見える。相手がいるわけだから、さびしさも忘れられる。しかし、彼女たちが本当に求めているものは、簡単には手に入らないものばかりだ。長い人生の中で、じっくり折り合いをつけ、見つけ出していくしかない。おまけに、「寂しさ」を一刻も早く埋めたい彼女たちは、じっくりと関係を作りあげていく恋愛ではなく、今、すぐに得られる恋に走る。「見つめるだけ」だったり、不倫だったり、「彼のためにお百度」だったりと、いびつになりがちだ。
 しかも、こうしたいびつな恋愛は、ある種の男性にとって“便利な"女性を手元にひきつける手段となりうる。無防備なセックスをくり返していた民子さん、経済的にも精神的にも、一方的な負担にたえている奈美さん、渚さんは、その典型だ。「『電話』依存症」の章で述べた若子さんも、見知らぬ男性たちにいいように扱われ、リスキーなセックスをくり返している。寂しさに耐えかねてあげた悲鳴を「私の寂しさを慰めてくれるなら、何をしてもかまわない」というメッセージだと受けとめる男性は確かに存在する。恋愛のパワーは強い。だからこそ、本当に求めているものと恋愛とのすりかえはおそろしいのだ。
(pp.102-103.)

 依存症の女はまわりにもいた、いる。

 なかでも強烈だったのは、前職時の同僚、Yさん。

 島崎今日子編著,1990,女学者丁々発止!―─われいかにしてフェミニストになりしや&ならざりしや,学陽書房.にも掲載されている、将来をとても嘱望されていた人。(さすがに直リンを貼れるほどわたしは鬼畜ではない。いややはり鬼畜か。笑)
 Yさんは、父親の死後、アル中になった。
 昼間から酒臭い。
 ある日、もち授業の成績をつけないまま、音信不通、所在不明になった。
 彼女の教え子の事務職員がなんとか受講生の答案を回収し、わたしたち、他の教員が手分けして、採点した。

 Yさんからの、夜間の長電話には閉口した。
 22時くらいに電話がかかってきて、夜中の1時、2時まで、拘束された。
 かわいそうで、さすがにガチャ切りができなかった。

 家人は、なにも言わなかった。
 当時のことを家人に尋ねたら、職場の人なのだから口出ししちゃいけないと思ってたらしい。
 迷惑だったろうな。

 Yさんは、その後、神戸の大学に転任。
 早速、授業を放棄し、大学はたいへん困ったらしい。
 その大学の某さんからは、なんで教えてくれなかったんだ、と恨まれた。
 知らんよ、そんなこと。
 それとも、メンタルやられてます、とでも言うべきだったと?

 その後まもなく、Yさんは、亡くなった。
 商店街で転倒し、あたまを強打したのが、致命傷となったらしい。

 依存症の問題は、当事者が治そう、人生をやり直そうと思わない限り、解消に向かわない。

 本書のように、数多くの依存症の事例に接すれば、その糸口になることもあろう。

 ときとして生きていくのは辛いよね。

友だちを失うほどの長電話、買い物でカード破産、男性はすべて恋人候補、手首を切って家族を脅す、近づいてはすぐに離れる友だち関係、次々と男を替える、やせの大食いの正体…。身も心もボロボロになり傷つきながらも、止められない度を過ぎた瞬間的快楽と愛情飢餓、家族の病「依存症」の実態。専門家とともにその予防と治療法を説く。

目次
序章 「依存症」に気づかなかった私
第1章 「買い物」依存症
第2章 「電話」依存症
第3章 「恋愛」依存症
第4章 「友だち」依存症
第5章 「自傷行為」依存症
第6章 「会社」依存症
第7章 「家族」依存症
第8章 「私は依存症」と自覚したら
第9章 依存症は予防できる


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