天童荒太,2024,ジェンダー・クライム,文藝春秋.(9.11.24)
誰もが容疑者。誰もが当事者。
性にまつわる犯罪……ジェンダー・クライムは連鎖する。
土手下に転がされていた男性の遺体。
暴行の痕が残る体には、メッセージが残されていた。
「目には目を」
なんと男の息子は、3年前に起きた集団レイプ事件の加害者だった――。
次々現れる容疑者、そして新たな殺人。
罪を償うべきは、あなたかもしれない。
天童荒太の原点回帰にして、記念碑的作品!
ある遺体から連鎖する“我々”の罪――『ジェンダー・クライム』(天童荒太)
大学生の四人組にレイプされた同じく大学生の女性。
廃人同様となった女性は、大学を退学し、故郷に帰る。
女性の兄は、四人へ謝罪を求めるも、拒絶される。
そんななか、犯人の一人(レイプの場に居合わせてはいたものの自らは犯行に加わっていない)の父親が殺害される。
そして、レイプ被害女性の兄と、父親を殺された、その犯人の一人が、別の殺人事件の現場に居合わせる。・・・
伊藤詩織さんをレイプした山口敬之の逮捕を警視庁刑事部長(当時)、中村格が差し止めた事件を想定した挿話が印象に残った。
山口敬之の逮捕をツブした中村格の警察庁長官に抗議殺到! 警視総監も安倍の元秘書官が就任で“自民党の秘密警察”化がさらに
「警察小説」ではあるが、標題どおり、性犯罪とセクシズムがメインテーマであり、性暴力が被害者に終生消えることのない苦痛を与えるものであることが、登場人物たちの人生のありよう一つ一つに反映されている。
エンタメ小説というより、メッセージ性の強いサスペンス小説としての性格が強い作品であり、性暴力が殺人に次ぐ罪深い犯罪であることをあらためて知らしめてくれる良い作品だ。