非正規労働者の主流は、高度経済成長期の国民皆婚時代において、男性稼得者の扶養家族として、家事労働をこなしつつ家計補助を行う既婚女性のそれでしかなかった。しかし、就職氷河期世代の中高年齢化がすすみ、高止まりした離婚率のもとで困窮化するシングルマザーが増加するなか、もはやワーキングプアの問題は限定されたマイノリティだけの問題ではなくなった。
本書では、韓国のワーキングプアの現状を紹介しつつ、ウェルフェアどころかワークフェアさえ実現できていない日本社会の病理と、ワーキングプア問題の解決に向けた日韓の取組事例が取り上げられている。
本書も、現在でもまったく色あせていない問題提起の書物である。ワーキングプアの問題は、労働法制、税制度、社会保障制度等が入り組んだたいへん複雑なものであるが、対談を適宜入れ込んで書かれた本書は、明解でわかりやすい。
目次
第1章 「年越し派遣村」から見えたもの―社会的連帯は可能か
第2章 プレカリアートの増大―非正規労働者の日韓比較
第3章 日本における主婦パートの誕生とその変遷
第4章 子供の貧困からみえてくるもの―貧困の次世代への連鎖を断ち切れるか
第5章 壁を壊せるか
第6章 社会的連帯は可能か
第7章 だれもひとりでは生きられない―韓国社会の非正規問題へのアプローチ
第8章 希望の経済学
終章 多様性を包み込み活かす社会へ
「年越し派遣村」は非正規労働とワーキングプアとが背中合わせにあることを明らかにした。同じ深刻な「貧困問題」を抱える韓国などとの比較を通じて、多様な労働者を包み込む社会制度の確立のための道を、豊富なデータと取材から探究する。
最新の画像もっと見る
最近の「本」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事