ネット銀で不正引き出し多発…保護適用外で泣き寝入り
インターネットバンキングの利用者が知らないうちにパスワードを盗まれ、預金口座から現金を引き出される被害が相次いでいる。
2月に施行された預金者保護法では、偽造、盗難キャッシュカードによる預金引き出し被害は銀行から補償されるが、ネット上での不正引き出しは対象外。表面化していない被害が多いとみられ、被害者が泣き寝入りしているのが現状だ。
「心当たりのない場合は、テレホンセンターまで……」。4月24日朝、東京都目黒区のネット通販業の男性(28)の携帯電話に、身に覚えのない振り込み確認のメールが届いた。不審に思ってその場で連絡すると、同センターの職員は聞いたこともない名前を口にした。「ヤマグチショウゴ様に50万円、マキノユタカ様の三つの口座に50万円ずつ振り込まれております」
男性はすぐに送金ストップを依頼したが、銀行側が相手方口座を調べる作業に1時間を要し、その間に200万円全額が引き出されてしまった。ネット通販を廃業に追い込まれたこの男性は、「早急に対応していれば被害を防げた」と補償を求めた。だが、銀行側は「契約時の規定により、こうした預金引き出し被害は補償できない」と拒否した。
パソコン上から振り込みなどができるネットバンキングは、手軽さから利用者が急増。財団法人「金融情報システムセンター」(東京都中央区)によると、一般銀行がネットバンキング用に開設した口座は昨年3月末時点で約1632万口座。このほかネット専業の3行に約343万口座あり、計約2000万口座に上る。
全国銀行協会によると、ネットバンキングでの不正な預金引き出し(届け出分)は、3月までの1年間で37件、被害額は約3000万円に上る。
NPO法人「日本情報保全協会」(大阪市)には4月以降、「知らない間に預金を引き出された」など利用者からの相談が相次いでいる。同協会の木村耕一郎理事は「被害額が数万円と少額なため、被害者が預金を引き出されたことに気づかないことも多いほか、泣き寝入りしているのが実態」と指摘する。
ネットバンキングが預金者保護法の適用外であることについて、金融庁は「パソコンウイルス感染など、利用者側に一定の過失が認められるケースもある。ネットバンキングだけに補償を認めると、ネット上での商取引全般の補償に応じなくてはならなくなる」と説明。同法は2年後に見直しが予定されており、同庁は「今後、インターネットバンキング利用者を救済できるかどうか、議論していく可能性はある」という。
(2006年7月29日15時29分 読売新聞)
最新の画像もっと見る
最近の「ニュース」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事