小規模デイサービスに集う高齢者たちに、六車さんたちは話しを請う。そして、若かりしときの思い出、得意だった料理(のレシピ)等、ていねいに「聞き取り」を行う。
「聞き取り」を行うことで、六車さんたちは、ものを教わる立場にたつ。「介護する」、「介護される」という主客が入れ替わり、高齢者たちは一方的に支援される立場から解放される。
「聞き取り」により成立するのは、みごとな中動態の世界である。そこには、オープンダイアローグとも共通する、ゆたかな生活と意味の世界が成立している。
ここは沼津市のデイサービス施設「すまいるほーむ」。デイルームや入浴介助の場で、ふと語られる記憶の数々。意外な戦争体験、昭和の恋バナ、心に沁みるエピソード。多彩な物語が笑いと涙を呼び、豊かな時間が流れる。聞き書きや思い出の味の再現、人生すごろくなどユニークな取り組みが問いかける、老いることの価値とは。深い気づきと新鮮な感動に満ちた一冊。
目次
第1章 聞き書きの沃野へ―すまいるほーむの風景
清子さんのいなり寿司
彼女たちの挺身隊 ほか
第2章 死を想う
灯籠流しがつなぐもの
哀しみを共にしたい
第3章 すまいるほーむができるまで―村松社長への聞き書き
老人病院への「罪悪感」から始まった
自分も行きたいと思える場所をめざして
第4章 認知症の人と共に
聞き書きクライシス
共に食べる―食事介助の奥深さ ほか
終章 聞き書きで介護の世界が変わっていく
みんなで座談会
表現としての聞き書き
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