岩井志麻子,2009,死後結婚(サーフキョロン),徳間書店.(5.21.24)
死後結婚(ghost marriage)と言えば、アフリカ、ナイル川支流に住むヌエル族のそれがよく知られているが、日本も含めて、前近代社会においては、さまざまなバリエーションがありながら、珍しくもない習俗の一つであった。
主人公、京雨子は、白昼夢のなかで、死者たちと交歓する。
京雨子が死者の誰かの子を宿すところで物語は終わる。
京雨子の死者との交歓、韓国での「死後結婚」の儀式は、わたしたちの先祖が慣れ親しんでいたであろう、死者と共生する世界のありようを彷彿とさせる。
死者との交歓を、土俗的な習俗とエロティシズムをまじえて描き出すことにかけては、岩井さんの独壇場だ。
OL京雨子が慕うビーズデサイナー沙羅。その内縁の夫が自殺したのは桜吹雪のときだった。そして「モウ、ホネダケ」、京雨子に奇怪な声が聞こえはじめた。沙羅が京雨子に言う、「死後結婚に立ち会って」と。在日韓国女性沙羅の故郷に今なお残る死者との婚姻の儀式、サーフキョロン。頷いた京雨子は、何が待ち受けているかを知らなかった…。