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本書は、さまざまな雑誌に掲載された原稿を寄せ集めたものであるが、わたしのように、はるかむかしに岸田唯幻論に夢中となった者が飽きもせず固定的な読者となっているのだろう。こんな雑文集でも、書物として刊行されるのだから、たいしたものである。
出版社は「快刀乱麻の切れ味で明快に迫る」とうたっているが、岸田センセも後期高齢者ともなると筆致が鈍るのであろう、はっきり言って切れ味はよろしくない。
それでも、岸田唯幻論を知らない人には、けっこう斬新な内容であるのかもしれない。
と、こんなふうに、退職を見越して、本棚の書物を読んでは古紙回収に出しているわけであるが、まだまだ道のりは遠い。
国家は幻想、時間も幻想、愛と性、自我も幻想―、すべては幻想とする「唯幻論」。母子問題・人間関係から、国家権力構造そして近隣外交まで、日本が直面する難題に、快刀乱麻の切れ味で明快に迫る。
目次
1
敗兵たちの亡霊
原発と皇軍
歴史のなかの原子力発電
日韓関係の問題
日韓関係に関する疑問
戦後は終らない
中国のナショナリズム
日本人はなぜ西郷びいきか
聖俗分離と和魂洋才
ジョン・ダワー『忘却のしかた、記憶のしかた』
皇室の適応能力
二つの自己に引き裂かれた日本
2
唯幻論始末記
唯幻論批判に対する反批判
唯幻論の背景
フロイト理論とは何か
動物行動学と精神分析
3
通じ合わない心
自分に嘘をつかない
足を引っ張りたい心―嫉妬、この厄介なもの
談志師匠と精神分析
草食系男子について
わたしの太宰治
人生に意味はあるか―アンケート
私の丸中丸高時代
ものぐさ老人日記
わたしの死亡記事
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