本書出版時、筆者はシカゴ大学社会学科の親分。
筆者創作の寓話、「六つボタンのミナとカズの魔法使い」と、「ライオンと鼠」の日米各バージョンををめぐる筆者と学生との架空の討論、以上の二部構成だ。
「六つボタンのミナとカズの魔法使い」は、つまらないとまでは言わないが、「囚人のジレンマ」やら「予言の自己成就」やら、社会学の諸概念が、物語のなかに不自然に挿入されていて、げんなりした。しかも、概念のおもしろさや意義が伝わってこない。なんだ、たいしたことねーな、シカゴ学派、と思ってたら、後半部分で、筆者の面目躍如。教室の熱気がそのまま伝わってくるような、架空ではあるが、白熱の討論が続く。
筆者の関心の中心には、日本の若者が、先進産業国のなかで、とりわけ、自尊感情が低く、将来にポジティブな意味を見いだせていない点があるが、山崎正和の消費社会肯定論をぶった切って、消費社会のなかでぬるま湯に浸かっているかのような、物質的飽和状況のなかで自尊感情を鍛える経験に乏しく刹那的な享楽に興じるだけの日本の若者の現状を憂える。ここいらへんの議論を周知の寓話になぞらえて展開するあたりには感心した。
目次
六つボタンのミナとカズの魔法使い―社会科学的ファンタジー
ライオンと鼠―教育劇・日米規範文化比較論
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