もとより、確固たるアイデンティティの確立により達成されるパーソナリティの成熟という発達課題自体が崩壊しているのだから、別の成熟へと至る発達モデルが模索されるべきなのだが、本書ではそのような試みはなされていない。共同体の崩壊によるアノミーによる精神病理の増大という、もはや説得力を失った通俗的議論が展開されているだけである。
解離の経験をゆるやかに統合する柔軟なパーソナリティのモデルが受容されるようになれば、青年の精神病理や自殺も減るように思うのだが、どうだろうか。
目次
序章 二つの事件と青年たち
1章 現代の欲望と未成熟
2章 未成熟人格の諸相
3章 見栄え人間の時代
4章 精神世界の住人たち
5章 彼と彼女の交差点
6章 ビジュアル時代の青年たち
終章 遊牧民的感性のすすめ
「心の時代」はむしろ「心の病気の時代」ではないか。凄惨な事件を引き起こす未成熟な若者たちの心の病いは彼らだけのものなのか。無関心、冷酷さ、それと裏腹の優しさに潜む精神病理―心気症、境界型人格障害、醜形恐怖、不潔恐怖、自己臭妄想などを豊富な臨床例から分析、成熟を阻む社会の病理を明らかにする。
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