台湾と新疆ウイグル自治区出身の女性、柳凝月(りゅうぎょうげつ)と玉麗吐孜(ユルトゥズ)との間に展開される恋愛譚。
といっても、きゅんきゅんするようなエピソードはない。
ご自身もレズビアンである李琴峰さんの小説には、しばしば、レズビアンの女性が登場するが、直截的な性愛の表現は抑制されており、恋愛ストーリーを縦糸に、本作品で言えば、出自家族との確執、(中共政府の)ウイグル少数民族の弾圧、日本の官憲による外国人差別等のエピソードが挿入されていく。
とても美しい女性同士の恋愛譚であり、これまで自らがトレースできる、同性間の恋愛と性愛のストーリーをもちえなかったセクシャルマイノリティに、自らの生と性を意味付けていく力を与えてくれるものであろう。
ここでなら、自由になれると思った――。
異国の地・日本で出会った、二人の女性の物語。
日本語教師として東京の大学で働く台湾人の柳凝月(りゅうぎょうげつ)と、新疆ウイグル自治区出身の留学生・玉麗吐孜(ユルトゥズ)。恋人同士の彼女たちだが、柳がともに日本で暮らす未来を思い描く一方で、玉麗吐孜の心は揺れ動いていた。家族、政治、セクシュアリティー。共通の言語を持ち、幾夜も語り合ったはずなのに、柳は彼女が背負うものの重さを知らずにいたことに気がつき……。新日本語文学の旗手が描く、静かな祈りの物語。
(ファン・ゴッホの「聖月夜」)
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