日の名残り

とても好みのジャンルでした。
「わたしを離さないで」のドラマを見た後だったので、もっとエキセントリックな話なのかと思いきや、古き良き時代の残像って感じの淡々とした物語でした。

執事さんの行動にちょっとイラッとしてしまうところもあるのですが、善し悪しの判断は難しいところです。時代が違いますし、イギリスの階級社会ってのも理解出来てはいないので。

執事さんはなかなか本心を見せません。
雇い主というフィルター越しにしか世界を見ないのは、職業的行動なのか本人の資質なのか。
彼女より仕事を優先したのは、執事の品格なのか私的好奇心がそちらに傾いたのか。
本心なのか言い訳なのかは計りかねてしまうのですが、それでも彼は、自分が追い求めていた物を手に入れたのかな・・・

新しい雇い主のために不得意な分野に対応しようと地味に努力をしている彼をみると、真面目なだけに滑稽にも見えますが、やはり偉大なる職業人としての姿が見えました。



　「日の名残り」カズオ・ イシグロ