粗茶淡飯

中国・台湾・日本のお茶に関する色々。執筆者・徳田志保。

自然が相手

2017-04-03 19:08:26 | 緑茶(中国茶)

中国では二十四節季の清明節の前に摘まれたお茶を「明前茶」と呼びます。
中国の緑茶は明前茶が高級品とされ、
愛好家に人気があります。
この時期のお茶は単価も高いため、
お茶業界の人達は作る方も売る方も必死です。

が、そこは自然が相手の商売。私がいる産地、
2017年の春、江蘇省宜興市とその周辺は今年はなかなか難しい年となっています。

2017年春、最初の工場に入って目にしたのは
早生の新芽…



こんな調子で生育が良くないものがチラホラ…。

去年1ヶ月降り続き、洪水まで引き起こした長雨、
その後の酷い干ばつが茶樹に与えた影響は
相当なものだったらしく、
例年なら今の時期はこんな感じ↓なのですが



今年は… ↓



しかも枝をかき分けてみると…



パッと見ただけでも相当なダメージを
受けたことがわかります。
今年は4割位減産だそうです。

このダメージから復活するまでには
もう2、3年残るのではないでしょうか。






銀球茶(中国貴州省雷山県)⑤

2016-09-20 23:35:50 | 緑茶(中国茶)
最後は工場…

設備は旧式のものが多いのですが
基本、そんなに他と変わりません。



驚いたのはこの光景…。
炒り葉機にお箸を使って生葉を入れてるの、わかりますか?

おじさんが、独り、黙々とお箸を使って生葉を投入しているのです…まさに人力。
思わず私も数分凝視してしまいました。(苦笑)



熱源は石炭。
温度が固定できれば安定して良いのかもしれません。

お箸を持ったおじさんは、生葉を入れながら
音や香りで温度の確認もしていて、



炒り葉機のある部屋の外にいる女性は炒り上がったものをチェック。
その様子で石炭を増減していました。

この日、この産地についての話もありました。
元々中国の中でも貧しいことで有名なこの貴州省、
その困窮を脱するために茶業の推奨があったわけですが、80年代は国が浙江省から大量の龍井茶の種を送ってきて、この地で蒔き、発芽し、苗に成長したものを日本で言う、普及所みたいなところが配布していたそうです。その後90年代頃からは福建省から大量の苗が運ばれて配布されるようになったとか。

そこで思い出したのが8年前にこの地域を通りかかった時のこと。あれ?ここの土壌はお茶向きだなぁと、思った直後に茶畑が点在し始め、茶摘みをしているおばあちゃんに遭遇しました。

普通話(標準語)聴き取れるかなぁ?と心配しつつ
「ここのお茶は緑茶ですか?」
と聞いたら、笑顔で、コテコテの苗族訛りの普通話で
「龍井だよ!」
と話してくれました。
当時は、なんで貴州省で龍井なんだろう!?おばあちゃん、良いお茶は皆んな龍井茶だって思ってるのかなぁと思ったものですが、おばあちゃんは間違っていなかったことになります。(会ったらごめんなさいしないと…。)

雷山県には、他にも美味しい緑茶がありますが、
美味しいのは、画像のような作る人の勘どころが
工場の随所に生きていること、そして、この地に在来種の龍井茶がある…ということも一因なのかもしれません。

この、有名産地とはちょっと違う雰囲気のお茶作り。まだもう少し、のんびり感は続くでしょう。この大らかさは今の中国では立派な個性だと思います。

(終わり)





銀球茶(中国貴州省雷山県)④

2016-09-17 13:35:24 | 緑茶(中国茶)

翌日は茶畑へ…



アスファルトの道から民家の裏側を抜け、田んぼ、河原…山道を歩くこと30分以上。比較的平坦な道でようやくこの1枚を撮影…(^_^;)

どこへ連れて行かれるんだか…と思ったら、あらまあこんな素敵なところが。白いお花は「李花(スモモの花)」でした。



近年は、国の方から茶樹と果樹をこのように植えるよう指導があったようです。果樹ですので、農薬が気になり質問してみると、貴州省は中国の中でも貧しい省で、まだ個々の農家が肥料や農薬を買えるだけの経済力がないので、国の保護政策で、農薬も肥料も国から配布されるとのこと。よって国指定のものを使用し、茶樹にも果樹にも影響が出ないよう指導も入るので、与えられたものを使い、指導を守って栽培していれば問題は起きない…とのことでした。

この真偽のほどは、検査等で証明すれば良いですからさておき、この話通りに考えると…個々の農家が裕福になれば、他省と同じ問題が出るのでしょうが、幸か不幸かそこに至るはもう少し時間の猶予があるのかもしれません。



銀球茶(中国貴州省雷山県)③

2016-09-15 00:01:52 | 緑茶(中国茶)
工場に入ると、ちょうど皆さん、あの丸いお茶を製造中。成形は手作業だったのですね。



完全乾燥させていない、柔らかい状態のお茶を



手で成形していました。

私もやらせてもらいましたが、力が弱いと丸くならないし、力の入れ方が不均一だと乾燥機に入れた時にヒビが入ります。やり始めて、皆と同じ速さで合格品を作れるようになるのに、数時間かかりました。
今なら多分、工場で働かせてもらえると思います。(笑)

お茶を乾燥させる時は
このように1つ1つ網の上に置いていきます。



成形する時に、力を入れ、葉がちぎれるせいで、
乾燥中は乾燥室から花のような香りがしてきます。
このお茶を淹れると、時々花香がするのはそれが原因だったようです。
乾燥すること7時間…ようやくこのお茶が製品になります。

変則的になりましたが、翌日は茶園へ連れて行ってもらい、お茶を炒る工程を見せていただきました。