Manabus Column

路地裏から尾根道を行く

ゴールデンスランバー

2011-05-14 | Weblog

『坂の上の雲』をやっと長い間掛けて読んだので、次は何の本を読もうかなと思っていた。

もちろん候補がいくつかあり、古本屋に行っては色々物色してきたりしていたのだが、とりあえず家にあった伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』を読む。

ゴールデンスランバーってビートルズの曲ではないかと思ったが、やはりそうだった。

おまけに映画化もされてそれも観たかったから、サクっと読めそうで丁度良かった。

 

ページを開いたら、あっと言う間に伊坂ワールドに突入で、これからどうなっちゃうのかと引きこまれ大変面白く読めた。

ストーリー的には首総暗殺の濡れ衣を着せられた主人公が、映画の逃亡者みたいにとにかく警察から逃げまくる内容だ。

それに負けじと主人公を助けようとする昔の仲間達や脇役がなんとも個性的で良い。

この灰汁が強く時には訳の分からないどうも憎めないキャラクター達が、必死で逃げる主人公に絡んで良いスパイス的要素となっている。

 

話の進行は、青春時代の過去に話が飛んだり、現在の逃亡劇になったりと、その辺の構成の仕方と言うかカラクリミみたいなものが実に面白い。

『ラッシュライフ』もそうであるが、一つ一つの断片的なパーツが最終的には一つの目的に向かって構築されていくので、それがどうなるのかなかなか本を閉じることが出来なかった。

それらが、仙台の街と言う少なくともそれ程広いとは言えない(わりとこぢんまりとした)舞台で展開していく様も、この作者の特徴ではないかな?

それと、タイトルの「ゴールデンスランバー」と言う歌が全編に流れているのだが、それが単なるドタバタ劇で終わらず、青春時代のメランコリックな部分とのバランスに一役買っている。

 

ビートルズの実質的なラストアルバムであるアビーロードのB面(レコードでは)は、ポールマッカートニーが断片的な曲を繋ぎ合せそれを見事にメドレーになっている。

一つ一つは(ジョンレノン曰く)どうでもいい曲だが、それらが繋がると壮大な流れになってくる。

その最後の方にゴールデンスランバーという「かつてはそこに故郷があった」という詩の内容の曲が収録されているのだが、その少し切ない曲と詩の内容が見事に本の物語とマッチしているのだ。

だから、CDを聴きながら本を読むと、盛り上がり方がちょっと違うかもしれない。

 

ストーリー的にちょっと偶然が多すぎてどうも話が上手くなり過ぎかな?と思ったり、結末がどうも自己中心的で治まりが良くなかったりとある。

でも、単純に読んでいて面白かったし、娯楽としてはこれで良いのだ。

まあ、現実もそういった奇怪なニュースや話って結構あるんだよな...。

 


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