Entrance for Studies in Finance

新興国:ファミマ ユニチャーム ヤクルト スズキ

海外とくに成長率の高い新興国に成長エンジンをいち早く求めた企業が伸びている。
注目される国は、BRICs(ブラジル ロシア インド 中国)からさらにその周辺国に広がりを見せている。ベトナム(チャイナプラスワン)、東南アジア諸国(インドネシア マレーシア フィリピン シンガポール タイ)さらに周辺CLM(カンボジア ラオス ミヤンマー)というように。
国内市場は人口の高齢化、縮小がすでに始まっている。すでに市場としては成熟していることに加えと人口の高齢化と縮小が、市場の縮小傾向を決定付けている。国内ではブランド力を強化して市場シェアを改善すること求められる。これに対して新興国の人口は、年齢は若く、拡大しつつあり、市場として将来性は高い。
とはいえ円高もあり現地の低価格製品との競争もあるので、海外新興国に成長エンジンを求めるには生産拠点を現地化することが強く求められる。これに伴い、新興国では失業率の低下 賃金の上昇(消費の拡大から経済成長へ)という望ましい変化がみられる。東南アジアでは、幸い急速に貿易自由化がすすんであり、集中生産によりコスト競争力を高めることが可能になっている(2010年ASEAN主要6ケ国の関税はほぼゼロに。ASEAN(東南アジア10ケ国で構成 人口6億人規模 2015年までに経済共同体構築を目標)と日中韓、インドなどとのFTAは発効済み)。
新興国ブームに冷や水をあびせたのは、2011年に入ってからの欧州債務問題拡大 リビア情勢の悪化など。すでに2010年からみられたインフレ懸念からの利上げが国内の生産・消費を抑える面に加えて、このような国際情勢の悪化から、投資家がリスクを嫌って新興国から資金を引き揚げ株式市場低迷したりする面が見られる。しかしこれらの反動、調整は一時的だとして、東南アジア各国が引き続き、高成長を続けると予測する向きが多い。
いずれの国でも個人消費が急速に伸びており、またインフラ(上下水道 鉄道 道路など)整備のための建設機器に対する需要も旺盛である。賃金が上昇し始めた国では、工場のなかでは省力化投資(産業用ロボットなど)、そして個人消費(高機能品を購入する中間層の拡大を反映)が伸びる。日常品(洗剤 生理用品)から高額消費財(カメラ 事務機 電気製品 自動車 情報端末など電子機器)まで幅広いニーズが表面化する。

ファミリーマート(社長 上田準二)
国内を上回る約9000店をアジアを中心に展開(2012年度に世界の店舗数を2万店 2015年度には2万5000店にする計画)。うち中国は500店(上海、蘇州、広州の3都市に展開 全家Family Mart)。2011年秋には四川省成都市に進出する。そのための新会社を成都市に2011年春に食品大手の頂新グループと共同出資で設立する。このほか2011年のうちに浙江省杭州市、2012年には北京市、深�祁市に進出する計画。2015年度までに中国の店舗数を4500店にする計画である。
背景には国内市場の飽和と出資する伊藤忠の意向がある。国内店舗数は2009年度前年度比2.1%増の4万6069店 ところが1店舗あたり1日あたり売上高(平均日販)は2.4%減の48万7000円だった。
 ファミリーマートは1981年に西友ストアから分離し、1998年に伊藤忠商事が西友からファミマの株式取得。全都道府県に出店のほか台湾、韓国に積極的に店舗を展開。2009年8月に海外店舗が国内上回っている。
 2009年11月には、これも伊藤忠商事と共同でam/pm(もともとは1990年に共同石油がノウハウ・商標権を導入して設立。2004年レックスHD傘下 2006年にレックス自体がアドバンテッジパートナーズ傘下に入った 店舗数1100 売上2000億円08/03)買収を発表した(買収額120億円)。この結果、国内の合計店舗数で8700で、9700の国内第二位のローソン(売上1兆5600億円08/03)に肉薄。なお国内店舗数トップはセブンイレブン12500店 売上2兆7600億円(08/03)である。
 なおam/pm買収は2009年春にローソンがしかけたが、米国のam/pm internationalとの連絡をとらずに進める不手際があり、同業への譲渡禁止のライセンス契約条項、am/pmの店名を残すこと、などの問題が浮上してゆき詰まった。事情は分からなず誰の責任かはわからないが、買収のプロセスに誤りがあった。

ユニチャーム(社長 高原豪久たかひさ)
 売上高に占める海外比率42%(2011年3月期 国内は伸びないものの大人用紙おむつ ペット用品などの市場は増収 連結営業利益は前期比2%増の460億円程度と従来並みを確保) 国内企業内ではグローバル化が進んでいる(1990年代に海外に本格進出 高所得層向けでブランドイメージ確立 新興国経済の発展をにらみブランドを生かした低価格品投入で支持集める インドネシア タイ 台湾で紙おむつでシェア1位) 1991年3月期に約40億円だった海外売上高は2011年3月期には40倍以上に膨らんでいる。中国 インドネシアなどアジアがけん引役。
 2011年4-6月 売上高は前年同期比12%増の1017億円 純利益は50%増の91億円。経常利益は23%増の125億円。
 紙オムツが一人当たりGDPが3000ドルを超えると一気に売れ始める。 
 日本での生産も継続。消費であるところで生産する。
 1995年に現地生産始めた中国事業は年率30%以上で成長 中国でのシェアはP&Gについで2位を恒安国際集団と争う。現地品並みの価格商品(商品名マミーポコ)の生産も進める(こうした低価格路線をインドネシア、マレーシア、中国などで順次展開 その結果 インドネシアではシェア首位に)。2011年1月から中国での開発 生産 販売機能を中国の現地法人に順次移管して中国の現地法人を中国本社に格上げする また4ケ所目となる工場を天津市周辺に設ける。 
国内で大人用おむつ(利益率高い)、マスク、ペット用品が堅調。中国(沿岸部から内陸部へ浸透)、東南アジアで子供用紙おむつで好調を維持。内外の工場での原材料費の低減、生産効率の改善。円高で欧州で減収少。2009年10-12月四半期ベースで、売上高(965億円 前年同期比4%増 うち国内631億円)利益(純利益74億円 前年同期比2.8倍)ともに過去最高を記録。アジアでのシェア30%(現在20%台)、世界でのシェア10%(6%)が目標。紙おむつ、生理用品など吸収体で米プロクターアンドギャンブル(P&G 商品名パンパース)、米キンバリークラークを追う。アジアではP&G、恒安国際集団(香港)と競合。
 2006年3月 資生堂の生理用品事業を吸収で資生堂と合意
 2008年9月 豪州2位の紙オムツメーカーAPPPを約150億円を投じて買収 オセアニア市場へ参入
→なお中国の紙おむつ市場には花王が参入を表明している(2010年12月28日)。中国の現地法人、花王投資が100%出資の生産会社を設立。安徽省に工場を建設。2012年に稼動を目指すとのこと。商品名は日本と同じメリーズを検討中。
成長企業ユニチャームの国際展開(2009年2月24日)
→ユニチャームの戦略は、意識的に現地価格と競合できる低価格商品を同一ブランドで投入することで、量産効果を高め、ひいては「世界ブランド」化(世界で年商10億ドルが目安 代表格コカコーラ、ペプシなど)を目指すものとなっている。世界ブランド化に成功すれば、量産効果、巨額な売り上げ、安定した利益を確保できると指摘されている。
 ユニチャームは米ペット用品大手の米ハウンテンマウンテン(2004年に住商が400億円で買収)の株式51%を2011秋にも取得見込み(100億円強)。米ペット市場を狙うあたりなかなか優れた嗅覚だ。

資生堂 ブランド刷新の重責を担う新社長の発表(2013年12月)
  新社長の登場により資生堂の経営がにわかに安定するとは思えないがどうなるだろうか。 

ヤクルト 最大株主のダノンに反旗(2013年4月)
 2009年の中国でのヤクルト販売高は約128万本 前年比36%増 上海、上海に続き新工場を天津で2011年稼働予定(生産能力4割増)
なお国内での乳製品売上高は1日900万本を超えている(2010年度)。2010年6月の1日あたり平均販売本数約3000万本を始めて超えた(3022万本)。日本国内は972万7000本。2009年4-12月期連結決算 売上高2217億円(前年同期比3%減)、営業利益192億円(18%増)、純利益129億円(36%増)ヤクルトレディを現地採用
2011年3月期 経常利益は4%増の257億円 純利益が1%減の131億円 売上高は5%増の3059億円
海外進出は1964年の台湾から、2010年7月現在32ケ国でヤクルトを販売。
中国(2002年に参入 販売数量毎年4割増 通期で初めての黒字化へ)、インドネシア、タイなどアジア地域で乳酸菌飲料販売好調。国内ではコスト削減(広告宣伝費、販売促進費等見直し)。主力は米州、円高でメキシコ(1981年進出)、ブラジル(1968年進出)などの米州地域で減収。なお1999年から販売を始めた米国でも販売量が伸びており2012年にカリフォルニア州ファンテンバレーに工場を稼働させるとのこと。
 なお食品のなかでヤクルトに注目するのは同社の利益率の高さからである。たとえば売上高では味の素は3倍、キッコマンは2倍の規模がある。ヤクルトは規模は小さいものの利益率が高い。
 1964年 台湾:1968年 ブラジル:1981年 メキシコなど早期に海外進出 海外では直営で利益率高い。国内では販売会社が販売するので
利益率低い。:インドネシア 1991年進出:中国 2002年進出 
 ヤクルトを巡っては世界的食品大手ダノンとの関係が注目される。両社の関係は2000年4月にダノンの市場取得で持ち株が5%を超えたところで始まる。両社は提携協議を始めるも7月に解消。しかしダノンは買い増しを続け、ヤクルト側の警戒感が高まる構図。その後2003年4月には20%となり、両社は5年間出資比率を変えない代わりに海外での販売協力など提携を2004年3月に結ぶ。協定は2007年5月に更新(2012年5月まで)。しかしその後両社の交渉はまとまらず2013年4月に事業提携契約は解消され、ダノンがヤクルトをTOBする可能性が残された。ヤクルトは業務提携により、経営の自主性が損なわれていること(ヤクルトはダノンとの契約が事業提携などの機動的経営の障害になっているとして解消に進んだ)。両社は、インドとベトナムにおける合弁事業の継続と友好関係を強調しているものの、ダノンがヤクルトの筆頭株主である構図は変わらない。
 提携解消は、ヤクルトによるダノンへの反旗ともえいる。この結果、ダノンは折を見て、ヤクルトにTOBを仕掛ける可能性はあるとされ、今後もヤクルト株はこの懸念を抱えることになる。その歯止めになっているのが、ヤクルトの株の割高感とされる(2012年4月23日時点でPER38.6倍。同日に日経平均採用銘柄いの平均はPER22.08倍。2013年4月でPER50培前後)。

小型車のスズキ、日産、二輪車のホンダの好調とトヨタの立ち遅れ
新興国にシフトしている企業が、業績を維持する構造は、自動車メーカー各社で顕著である。スズキのインドシフトは有名だが、ホンダも二輪車や小型車(インド、インドネシア、中国などで二輪車での低燃費、耐久性への信頼、が四輪車へのブランド力にいかされている、二輪車に続き四輪車についても2011年の低価格車からインドで現地鋼板採用に切り替えるほか、部品の共通化、現地低価格調達+集約化によりコスト低下。先進国では小型車シフトがホンダに有利に働く。またインサイト成功にみられるトハイブリッド車戦略を加速する:2010年2月にはCR-Zを発売。2010年12月にも東芝から電池供給を受けて電動二輪車発売へ:ターゲットは日本郵政の二輪車約9万台 四輪車約2万台の環境対応)が、新興国で堅調(同じ二輪車でも大型二輪車の川崎重工業は低迷)。日産も中国シフト、小型車シフトが成功している(東風自動車と組んで生産している小型車ティーダが人気とされる 2009年前半に販売高で日中逆転)。海外生産への移管もあり国内生産減る。
 これらと対比して興味深いのは、トヨタ(ホンダ同様に*2011年投入の低価格車からインドの現地鋼板を採用へ スズキはすでに現地鋼板採用で先行)が、中国市場でも北米市場と同様に、戦略的ミスを重ねているように見えることだ。また北米市場同様に製品の品質に問題がでているようだ。
 日本の経営学者なかには、トヨタのコスト削減力だけを議論してトヨタを称賛するトヨタ礼賛論者が多い。しかしトヨタが、中国でも、戦略的ミス(2008年については小型車の品揃えがなく販売機会を失い、セールスの場所である自動車ショーに超高級車をならべ中国のウェッブ情報上失笑を買ったなど)やリコール問題を繰り返し重ねていることは注目されてよい。同じようなこと(やはり2008年について車種選択の誤りやリコール問題。リコール問題では対応のまずさからバッシング受ける)が北米でも起こっている。同じようなことが違う場所でも起きるのは、トヨタという会社の体質に問題があるからではないだろうか。
 *ホンダは競争の主戦場は新興国で、低価格車に需要がシフトするとしてこれを乗りきるには新興国で現地調達比率を高めた量産、量販が不可欠とみているようだ。ホンダは二輪車でのブランド力を四輪車につなげようとしている。ホンダの二輪車のシェアは インドで48%(合弁ヒーローホンダ)、インドネシアで47%(合弁アストロホンダ)。しかしホンダはこの成功している合弁を解消(2010年12月)。全額出資の二輪車子会社に現地新工場を建設させる方針。世界戦略車CBR250Rを2011年3月にも生産開始とのこと。合弁事業では主導権がとれないジレンマがあったようだ。成功している合弁を解消する結果がどうなるかは注目される。四輪車については低価格の戦略車ブリオを2011年にもタイとインドを始めるとのこと。
 
 2009年8月の中国におけるトヨタ車リコール問題(2009年8月26日)
ホンダ業績見通しを上方修正(2009年10月27日)
トヨタが北米でペダルの無償交換を実施(2009年11月25日)

コマツ、日立建機など建設機械
 コマツや日立建機では2012年3月期 海外売上高比率は8割を超えた。中国 インドネシア向けが伸びている。
 各工場では製造手法の統一で、品質の一定化。それを前提にしたグローバル生産体制を布いている。世界2位だが、中国(新車の販売が多く利益率高い)、東南アジア、インドの販売シェアでキャタピラを抜きトップに立っている(しかしキャタピラも猛追)。

ダイキン工業
ダイキンは業務用と合わせて空調の売上高で米キャリアを上回り世界首位。
 
河西工業、ケーヒン
河西工業:自動車部品 製造費の安いアジアで生産。利幅高める。
ケーヒン:主力の4輪車向け燃料噴射装置で部品の共通化でコスト抑制。

TOTO
高級衛生陶器に絞り込み 高価格高利益率実現

originally appeared in January 9, 2010
corrected and reposted in Dec.21, 2013

世界シェアの高い日本企業一覧
新幹線、リニアモーターカー
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日本の淡水化技術



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