Entrance for Studies in Finance

Hitachi makes 5 listed subsidiaries wholly owned

日立が上場子会社5社をTOBで完全子会社化に踏み切ることになった。2009年7月28日正式発表。TOBは8月20日に開始して10月8日まで。最大2790億円を出資して5-7割り出資の現状から全額出資へ切り替える。買い付けた上で残りは日立株と交換。完全子会社化後は上場廃止の方針。これにより日立の経営改革が進むかが注目されている。

日立は2009年3月期に7000億円の巨額赤字を計上した。また2009年4月から日立マクセルにでていた川村隆氏が日立に復帰して社長会長を兼任する異例の返り咲き人事を行った。川村氏は就任後、脱総合電機を宣言するなどそれまでの古川一夫氏との路線の違いを明確にした。ただ古川氏も2006年就任時以来、社会インフラ企業としての日立の再生を目指したが、古川氏の前任社長の庄山悦彦氏が会長として君臨して発言を続けて思い切った見直しを妨げたとする見方もある。4月に庄山氏は退任。古川氏は副会長に就任している。

これまで日立は分社化を進め自主独立させて事業拡大を進めてきた。しかしそれには、グループの利益の社外流出の側面もあった。

すでに日立は上場16社を含む主要約40社について、情報通信、社会インフラと関係の深い企業の保有株を高める戦略とっている。

しかし今回の完全子会社化は自主独立を本社集権に転換するもので大きな転換といえる。日立は社会インフラ事業での垂直統合モデルの有効性を主張しているともとれる。他方で2009年度中に社内カンパニー制を導入して、とりこんだ子会社を並列に位置つけて重複分野の整理を円滑に進めるとしている。

子会社の扱いについてはTOB宣言以前にも行われている。それはもうかっていないところは関係を薄める。たとえばルネサンステクノロジをNECエレクトロニクスと経営統合することを決めて、半導体への関与を薄める決定をした(4月27日)。そしてもうかっているところは取り込むというもの。日立コミニケーションテクノロジーを7月に本体への吸収合併をきめている(4月27日)。

また本体の事業本部のうち赤字の自動車機器とデジタル家電について7月に分社化する方針も明らかにされている。つまり本社からは赤字事業を切り離そうとしていることになる。

今回の注目はそれが上場子会社の扱いに踏み込んだ決定である点にある。
日立の上場子会社は16社。連結子会社は943社(09年3月)。子会社の中には抵抗もあると予想されている。

今回の対象は上場16社のうちの5社である。
情報3社の日立情報システム(売上高1920億円 営業損益116億円 日立出資比率51.6%) 日立ソフトウエア(1658 123 51.3%) 日立システム(1262 73 51.2%)。日立本体の情報通信部門との重複。省エネ型データセンター事業が一つに課題。
日立プラントテクノロジー(売上3956億円 営業損益73億円 日立の出資比率68.4%)。プラント建設 交通システムの世界展開 原子力発電所の建設や水処理設備で実績。エネルギー分野での海外展開で不可欠。
日立マクセル(1726 -23 51.4%) リチウム電池(電気自動車やスマートグリッドにも必須)の開発
以上の5社である。

一般論として上場子会社(知名度上昇 資金調達はプラス)は上場親会社に支配されている状態にある。親会社と子会社の利益が相反していても子会社の少数株主は、それを覆すことは困難。つまり子会社には実質的独立性がなく、子会社の少数株主の利益が十分守られているとはいえない点で疑問が出される状態にあった(上場コストもかかる)。ただし確かに親会社の信用力が低下しているときには、子会社は資金調達力を活かせるかもしれない。

上場しているのに親会社がいるのは日本的とも指摘される。08年度末で398社。解消45社 新規31社 で14社減少。親子上場 親会社と連結子会社がともに上場。は成長が鈍化すると事業の重複など非効率な側面が目立つとされ、解消が進んでいるともされる。

このような先例として、電機メーカーでは2002年に松下電器(パナソニック)が上場4社、松下壽電子工業、松下通信工業などを株式交換により完全子会社化した例がある。パナソニックでは事業部制解体 雇用圧縮 経理財務改革を同時に進めたとされている。

又親子の関係が売上高とか資本の規模、あるいは利益などで逆転すると、小さな会社が大きな会社を支配するねじれ現象が生まれる。企業買収では、小さな親会社を買収するとより大きな親会社を支配できるという歪んだ現象も現れる。

また親子会社関係を解消するときに、親会社とともに新たに持ち株会社を設立してその傘下にはいるという形式も多い。たとえばヨーカドーの子会社だったデニーズジャパン(51.6%)の場合は、親会社のイトーヨーカドー、子会社のセブンイレブン(50.6%)(いずれも東証一部上場会社)とともに、2005年9月に株式移転方式でセブンイレブンホールディングスを設立してその完全子会社となっている。

ねじれを解消して子会社を親会社が吸収すると、資産規模(株式時価)の大きな会社が生まれる。それは買収対策としても有効だと考えられている。



Written by Hiroshi Fukumitsu.You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
Originally appeared in Aug.14, 2009.

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