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クッキ(菊熙)からトンイ(同伊)へ

クッキからトンイへ
 「クッキ」(1999)が映し出した太陽政策下韓国の政治状況

 「クッキ(菊熙)」(1999)は韓国の民間放送局MBCで放送されたテレビドラマで全21話。韓国では50%を超える高い視聴率を得たとされる。2006年4月から8月までNHKBS2で放送された。1930年代から現代にかけて韓国社会が変化する中で主人公が製菓業界で苦難を乗り越え成功してゆく姿を描いている。地味ではあるが、ビジネス成功物語としても興味深いドラマだった。ムチョン・ソンヒ脚本。イ・スンリョル監督。主人公を幼年時代はパク・チミ(1988-)成人後はキム・ヘス(1970-)が演じている。
 時代背景として対日関係や朝鮮戦争下の状況も描かれているため、日本がどう描かれているかが関心を呼ぶドラマだった。登場する日本人像も私たちからみて違和感はないものだった。これが中国のドラマだとしばしば日本や日本人が一方的に悪者に描かれていることがある。
 クッキが放送されていた当時のキム・デジュン(1925-)大統領(1998-2003)は日本とは親日政策をとり、北朝鮮とも太陽政策という融和路線を取っていた。

 クッキ wiki  その後のノム・ヒョン(1946-)大統領(2003-)President Roh Moo-Hyunは金大中の太陽政策は継承したものの、対日関係ではわざと反日を通すことで世論の支持を得て政権の延命を図っていると日本では指摘されることが多かった。キム・デジュン政権は概ねアメリカのクリントン政権(1993/1-2001/3)末期と対応するのにノム・ヒョン(2003/2-2008/2)が登場したときアメリカはブッシュ政権であり、2001年9月の同時多発テロ、2003年3月の対イラク侵攻と事態は推移した。

チャングム(2003-2004)の登場

 2003年9月から2004年3月まで韓国MBCで放送された作品であるが,毎回の視聴率は50%を超えたとされ驚異的な人気を博した。日本では「チャングムの誓い」が2004年から2005年にかけてNHKBS2で放映され、同様に人気を博した。チャングムを演じたイ・ヨンエ(1971-)の清純な姿やキン・ヨンヒョンの宮廷の人間模様や抗争を描く脚本も見事だった。ミン・ジョンホを演じたチ・ジニも人気を得た。このドラマは中宗(チョン・ジュン ドラマではイム・ホが演じた)(1488-1544)治世下での政争を背景としているが、それがかなり血なまぐさいものだったことはドラマで描かれているとおりで、そうした史実との関係がこのドラマの魅力でもあった。
 16世紀を描いたチャングムでは階級制度が厳しい封建制度のもとでの女性の生き方を描いている。また日本との関係では倭寇の問題などが、中国との関係では中国からの使節の接待の問題などが描かれている。 政治的にはノムヒョン政権の時期。盧武鉉の対日政策は2004年頃から硬化する。チャングムは対日政策が硬化する過程と時間的には重なっている。 

  チャングムの誓い あらすじ
  チャングム年表

 ノムヒョン(廬武鉉)政権下で生じた反日立法

 2004年3月2日成立 3月22日公布施行 親日反民族特別措置法

 2005年12月8日成立 12月29日公布施行 親日反民族行為者財産の国家帰属特別措置法

 2003-2004年は韓国映画の当たり年だった。テレビドラマ「チャングムの誓い」が韓国で放送されたのが2003-2004年だったほか、対北朝鮮政策の変更により政治的に抹殺されようとした684部隊の1971年8月の蜂起(決起した24人のうち20人が射殺され生き残った4人は死刑となった)に至る過程を描いた映画シルミド(2003)が公開されている。1950年の朝鮮戦争下の兄弟愛を描いた映画ブラザーフッド(2004)が公開された。朝鮮戦争では攻め込んだ北朝鮮側、またこれに対抗した韓国側その双方がいずれも結果として住民を虐殺する事件を起こしているがブラザーフッドではその悲劇が正直に描かれている。韓国映画の水準の高さとともに、これらの映画は戦後の韓国の苦難の歴史を改めて私たちに伝えてくれた。
また映画「大統領の理髪師」(2004)はイム・チョンサン監督、ソン・ガンホ主演で政治に翻弄される庶民の姿を描いた映画だったが、韓国の政治が日本、北朝鮮、中国そしてアメリカにより翻弄され、軍・特殊警察による強権が最近まで影を落としていたことを思い起こさせた。この映画は、韓国現代政治史とよく重なっており、イ・スンマンによる不正選挙(1960/03/15)、学生による糾弾蜂起(60/4/19)、パク・チョンヒによる軍事クーデター(61/05/16)、大統領暗殺を狙い北朝鮮の武装ゲリラ31人がソウルに進入(68/1/21 29人は射殺、1人は逃亡、1人を逮捕)、パク・チョンヒ暗殺(79/10/26)、チョン・ドファンによる軍事クーデター(80/05/17)、このクーデーターに抗議する学生・市民が正規軍により鎮圧され政府発表でも200名以上の死者を出した光州事件(80/05)など、韓国政治の暗部を思い起こさせた。こうした強権発動を繰り返す政治のもとで、政敵を逮捕拘禁するだけでなく、拷問やスパイ名目での処刑などが韓国ではつい最近まであったのである。そしてこうした非民主的な動きが正当化された背景に、北朝鮮との軍事的緊張があった。
 1980年代に入ってからも北朝鮮がチョン・ドファン大統領暗殺を狙ったされるビルマのラングーン市内アウンサン廟での爆破事件(1983/10/09 韓国・ビルマ両国の21人が死亡。ビルマ政府は北朝鮮の犯行と断定し北朝鮮と断交)。1988年のオリンピック開催を妨害するためとされるベンガル湾上での大韓航空機爆破事件(1987/11/29 韓国人を中心に乗客乗員115人全員が死亡)。などの許しがたい事件が起こっている。

2004-2005年:韓国が当面する社会問題の顕在化
   ところで2004年から2006年にかけて韓国社会が当面する2つの問題がはっきりしてきた。一つは少子化問題で2005年の韓国の出生率は1.08と2004年(1.16)に続き世界で最低になった。2006年には1.13と少し戻したものの、日本よりも低い数値となっている。背景には晩婚化、価値観の変化、教育費の問題が指摘されている。韓国は2020年からは人口の減少が始まるほか、国内消費の縮小も予想されている。そして今一つはウオン高である。この結果、国際的に競合メーカーの多い自動車などでは韓国企業は輸出競争力の低下に悩むようになった。比較的小さな経済圏しかもたない韓国が国際競争力をもつ企業をいかにして育てるのか、育てることができるのか。

チャングムから6年。トンイの登場(2010)
そしてトンイが登場する。トンイ(同伊)は2010年3月から10月まで同じく韓国MBCで放送されたもの。全60回。 トンイの視聴率は当初10%台と意外に低かったがそのご25%前後にまで上昇した。いち早く2011年4月から12年6月にかけてNHKBSで放送。その後2013年1月から再放送されている。こちらの舞台は17世紀末から18世紀にかけて。チャングムと同じく韓国宮廷の政争が中心。チャングムに比べると歴史的に分かっていることが多いようだ。時代は粛宗(スクチョン 1661-1720)の治世。官僚派閥である南人と西人の争いが背景。トンイとされるのはハン・ヒョジュ(1987-)が演じたスク・チョンの後宮スッピン・チェシ(1670-1718)。日本との関係では日本との交易などに触れているほか、中国との関係ではチャングムと同様に中国の使節の接待や中国によるセジャ(世子)の承認の問題などが描かれている。

 チャングムに比べて血なまぐさい場面は抑えた演出が目立つ。そこに韓国社会の成熟を確認できるようにも感じられる。時の政権はイミュンバク大統領(2008/02-2013/02)。 
     トンイあらすじ
     トンイ年表  

イミョンバク大統領の対日政策は政権後半に入った2011年後半あたりから硬化している。

具体的には 2011年12月14日 ソウルの日本大使館前に従軍慰安婦像が民間団体により設置されたのを黙認

         2012年8月10日 日本政府の中止要請を無視して竹島上陸を敢行 など

You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.  originally appeared in Mar.2008 corrected and reposted in Sept.2013

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