必要書架量の推定
まず書庫設計は蔵書数から割り出される必要書架量の計算からはじめる。
書架は幅90cm 6段-7段でみる。
7段が実務上困難があれば6段で計算する。90cmの書架が1棚である。ここに配架できる冊数は、書庫については公共図書館の場合は30-40を想定している。大学図書館は専門書が多いので低めを主張できよう。実際には実態を計測してみて確認する必要があるが。和図書については25-35はどうか(仮採用値30)。洋図書と製本雑誌については20-30が現実的かもしれない(仮採用値25)。
文部科学省作成の報告書(保存図書館に関する調査報告書)では1棚25冊(1書架6段で150冊)を採用している。つまりこの数値は報告作成者がどのような意図で報告書を作成するかで操作される数値であるようで、大学図書館については低めの数値(たとえば25冊)を採用するようだ。この冊数で蔵書数を割って必要書架量を求める。
開架書架の場合は、書架を満杯とせず8割程度で余裕をみる。書庫内の閉架書架については、この余裕率をいれず満杯での蔵書量を議論することも合理性がある。
なお参考までに実際の書架の大きさは90cm幅とされるものは95cmほどあり(944mm)、深さが25cmとして26cmほどになる(詳細はJIS規格を見よ)。しかしこの問題は余裕率のところで処理が可能であろう。
90cm幅書架として 図書については厚さ3.6cm(余裕を当初から入れている) 雑誌については厚さ5cmで計算。図書は1棚25冊。雑誌については1棚18冊で計算。6段として1書架の収蔵冊数を図書は150冊。雑誌は108冊としている。
固定書架スペースの計算について
必要書架量を計算したあと、書庫スペースの計算をする。ここで大事な言葉は芯芯距離。それから書架が、固定書架か、集密書架か、自動書架かである。後者の書架の種類によって、必要な面積(スペース)は異なってくる。
固定書架については、公共図書館の設計では芯芯距離は1.35m(書架壁面同士の距離)。(このままでは通路が確保されないので)通路のための余裕率は1.25である。6段使用とすると、1.35m×0.9m=1.215㎡に12棚(向き合わせで書架が2本)。公共図書館の設計では1棚40冊という数字もあるが大学図書館として図書の厚みが公共図書館より厚いとして30冊とすると360冊。25冊なら300冊である。これを平方メートルあたりに換算すると前者は296冊/㎡。後者は247冊/㎡。余裕率(1.25)を斟酌すると前者が237冊/㎡。198冊/㎡。になる。
蔵書10万冊についての必要面積を求めると、前者の30冊(公共図書館)では422平方メートル。後者の25冊(大学図書館)では505平方メートルになる。
事例2帯広市図書館基本計画(2001.2) 幅90cm書架 1棚40冊として計算 書庫は固定6段で395冊/㎡ 集密書架7段で658冊/㎡ としている。その通路などの余裕率で1.25倍の面積がいるとしている。
集密書架スペースの計算について
集密書架は通路をたとえば5ユニットに一つ設けることでスペースを節約する。書架の深さdepthが重要である。ここでは26cmと仮定する。5ユニットの深さは合計で0.26×8+1.35=3.43(書架がここで8本なのは図を書くとわかるが5ユニットで向き合わせの書架8本が収容されるからである)。その面積は3.087平方メートル(=3.43×0.9 余裕をみていないこの値は実際よりも過小である)。そこに6段使用として60棚分の収用が可能。30冊なら1800冊。25冊なら1500冊である。前者が583冊/㎡ 後者は486冊/㎡。余裕率を斟酌すると前者は466冊/㎡。後者は389冊/㎡である。
蔵書10万冊についての必要面積は前者は206平方メートル。後者は257平方メートルになる。つまり集密書架では、必要面積はおよそ半減する。500平方メートルあれば20万冊は収蔵可能という計算である。
自動化書庫の是非について
集密書架よりさらに面積効率の高い書庫の自動化については関心が高いところであるが、前提としてRFIDラベルの添付問題がある。この添付により貸出処理が迅速化して顧客サービスにつながる。蔵書点検が容易かつ迅速化して省力化が可能になる。といった効果のほか、書庫の自動化において、書籍を分類ではなく大きさや形態で収蔵することが可能になり書庫の効率的使用が可能になる。
今後はRFIDの添付により、省力化することがが望ましい。しかし利用頻度の低い部分を自動化書庫に移すとすれば、コスト面で利用頻度の低いものにRFIDを添付する投資を行う矛盾がある。
またこのような機器は数十年後には制御部分が劣化して巨大なゴミになる可能性もある。固定書架に比べて電力を動力に動くタイプの書架や書庫については、たとえば電力が止まった場合、手動で操作できるかを検討するべきだろう。また劣化する部分の交換が可能になるように、劣化する部分については交換部品を確保しておく必要がある。
自動化書架は密閉構造であり、人が入れる構造になっていない。ところが自動書架導入が進んだ近年になって、カビや害虫の発生が多数報告されている。人が入れないために被害の程度が把握しにくい。自動化書庫導入にあたってはこうした問題への十分な配慮が必要である。
自動化書庫導入事例
国際基督教大学図書館ミルドレッド・オスマー館(2000年9月開館)
国内初の自動化書庫ASRS automated storage and retrieval system(50万冊規模)
国学院大学渋谷キャンパス図書館(2008年4月開館) 国学院大学HP 日本で最大級の自動書庫(100万冊)に言及
図書館の蔵書管理(リンテック株式会社HP) ICタグ導入による効果について
新しい図書館
2013年12月 東京経済大学新図書館竣工予定
書庫増設の経済効果
書庫をつくることは経費がかかるだけと見られがちだが経済価値をうみだしていると評価する必要がある。
参考 法務省大臣官房施設課による政策評価(費用効果算出方法)
閲覧スペース増×周辺オフィス相場年間賃料
書庫スペース増×周辺倉庫相場年間賃料
original appeared in Oct.2009
reposted in May 2013