Entrance for Studies in Finance

財務管理答案例講義

学年 クラス 氏名(         )
以下の問いにこたえなさい。周りの人に相談したり答案を見せたりしてはいけません。自分の頭で考えること。携帯をいじってもいけません。

1)株主の立場から高いROEが好ましい理由を2つ述べなさい(1つでは不合格 ゼロ評価です)。
  1)-1  株主資本への収益の大きさを示すから
  1)-2  株主資本の運用の効率を示すから(運用効率の改善を示すから)
  1)-3  高い株価につながるから
高い配当を期待できるという答案がありましたが、ROEの問題と配当の大きさは別個の問題だと考えられます。あくまでROEの高い低いをどう評価するかが議論されるべきです。また一部の答案は安全性や安定性が高まるからと書いていますが、ROEはあくまで収益性の判断指標ですので、安全性や安定性という言葉をここで使ってはいけません。またROEの改善では自社株買いで、自己資本を減らすやり方でもROEの改善が可能です。つまりROEが高まることは資本効率の改善を意味することを理解するべきでしょう。
2013年度東証一部の平均は8.6%。欧州の約15%、米国の約20%に比べ低いとされる。上場企業の間では自社株買いをして、自己資本の増加を抑える姿勢が広がっているという指摘がある。差が出るのは売上高利益率で米国が7%に対して日本の2倍。日本企業は低収益事業に見切りをつけることが遅いとの指摘がある。ROEで運用先を選ぶ参考として、JPX日経インデックス400の参照を指摘する声もある。これは構成銘柄の選定でROEも基準の一つとした指数。

2)経営者の立場から利益の社外への流出を避けて内部留保に努める理由を3つ述べなさい(1つでは不合格 ゼロ評価です)。
  2)-1  経営の自立性を保つため(経営者が自由に使える資金を増やすため 利払いコストがない資金を増やすため)
  2)-2  借入困難に備えるため (将来の投資のため 資金繰りの困難に備えるため)
  2)-3  財務数値をよくするため (将来のより良い条件での借入の備えるため)

  内部留保したものの将来の使途、設備投資や自社株買い等を指摘した答案がありましたが、これらは内部留保のあくまで将来の使途です。この質問は内部留保という行為の理由を聞いているのですから、設備投資や自社株買いなどをここでの理由とするのは正しくありません。

3)創業して間もない中小企業が外部からの資金調達が困難である理由を2つ以上述べなさい(1つでは不合格 ゼロ評価です)。
  3)-1  財務の履歴が不十分なため(債務不履行リスクが高いと判断されるため)
  3)-2   担保となる資産が不十分なため(知名度がない ブランド力がないという回答がありましたが不適切です。有名だから資金調達できるとはいえません。)
  3)-3   信用の履歴が不十分なため(信用が低いという回答では不十分です。なぜ創業間もないとなぜ信用が低いかを説明すべきです)

4)債務についての利子率と、自己資本に期待される収益率とではどちらが大きいかを述べて、その理由を説明しなさい。
  4)-1   収益率は利子率より( 大きい )
  4)-2   なぜなら( 自己資本は経営のリスクを受けるため ) ここで一部の答案は株主の期待収益率の大きさを指摘しています。しかしなぜ利子率より大きくなるかを論理的に説明する必要があります。ですから自己資本が経営リスクをカバーする資本であることを明確に指摘する必要があります。

5)企業は株式の発行を避けようとします。その理由を2つ述べなさい。
  5)-1  外部支配の可能性を嫌うため(敵対的株主が増える可能性を減らしたいため)
  5)-2  株式の希薄化をさけるため(配当負担が増えるという答えがありましたが借入をしても利子の負担はありますので、これはここでの答えに適切でありません)

6)他方で企業が積極的に株式を発行するのはどのような時かを説明しなさい。
  6)-1  企業の成長が早くて成長に見合った自己資本の強化を必要とするとき(資本提携・M&Aなどでの必要などもOK)
  6)-2  株価が高くその株価を利用できるとき

一部の答案は追い込まれた企業が株式を発行することを指摘しています。そうしたケースで第三者割り当てなどの方法で株式が発行されることはそのとおりですが、設問の「積極的に」という言葉に注目してください。ここはあくまで「前向き」なアグレッシブな株式発行が、ときには選ばれることを問題にしています。そこで期待されている答えはここで書いたようなものになります。
 
7)企業が債務を好むと思われる理由を3つ指摘しなさい(3つ以上上げていなければゼロ評価とします)。
  7)-1 債務のコストは自己資本コストより低いから
  7)-2  レバレッジ効果により自己資本利益率を改善できるから(自己資本を増やさずあるいは自己資本の限界を超えて事業を拡大できるから)
  7)-3  節税効果が働くから

8) 協調融資枠commitment lineが市場型間接金融と呼ばれる理由、そして公募社債との違いを説明しなさい。 
  協調融資枠ではまず市場のリスク判断で利息の水準などが決定されます。これは融資枠はそもそも取引のなかった銀行も参加するものであるので条件に透明性が求められることが背景です。このように条件が市場を通したもの(競争的に決定されるもの)であることと、調達金額が大きい点は公募社債と似ています。両者の大きな違いは、協調融資枠が短期金融の手段であり、資金の出し手は金融機関に限られるのに対して、公募社債は長期金融の手段であり、その投資家は金融機関に限定されずさまざまな機関投資家などを含む点です。

9) 企業資金の内製・外製について。内製の以下の手法について説明しなさい。
  9)-1 CCCの短縮化 CCC(運転資金回転日数)の短縮化は販売力が強いことを示すが 財務的な意味は運転資金の節約である。運転資金の節約は運転資金需要を減らして、事実上、資金の内製手段となる。
  9)-2 CMSの導入 CMSは資金管理のシステム化により企業内資金の効率化(集中管理により、対外信用力の改善 社内での過不足調整により借入の節約 送金コストの節約)を図るもの。外部資金に頼る必要をそれだけ減らす効果がある。
  9)-3 資産証券化 これまでは第三者の資金に置き換えることがむつかしかったバランスシート上の資産が証券化という手法によって売却され、第三者すなわち会社の外部から資金調達する手段になった。
 
10)近年 日本の企業の借入が長期間低迷した理由を3つあげなさい。
  10)-1 新規資金需要が乏しいから (人口減により国内市場が縮小傾向にあるから)
  10)-2 内部資金に余裕があるから
  10)-3 必要な資金は内部資金で十分間に合うから(借入を避ける企業行動が定着しているから) 

長期金利の大きさには、経済成長率の大きさが反映していると考えられます。つまり経済の成長率が落ちて資本収益率が低下していることが企業の投資意欲が高まらない基本的な理由だと考えられます。現在の低金利は金融緩和政策の結果であるとともに、日本の経済成長率が低下した結果とも考えられます。参考:最近の金利動向と企業の資金調達について(内閣府 2014-12-19) 中小企業の資金調達意欲の回復傾向を指摘している

11.企業の合併による費用節約効果について説明した以下の文章を(  )内に語群Bから適切な言葉を選んで完成しなさい。
過剰)あるいは非効率な生産設備の廃棄。効率的設備への生産の集中。固定費の削減と生産の効率化。 (原材料)の共同調達 調達量が大きくなることで調達先への価格(交渉力)が強まること(同じことが、資金の調達や商品の供給についてもいえる)。製品の共同(配送)による輸送コストの圧縮。技術、商品、営業で(補完性)が働き、たとえば提供サービスの範囲、営業エリアが広がり競争力が高まること。など。
 語群B  従業員 原材料 再生力 交渉力 弾力性 企画 配送  過剰 過少 補完性 粘着力

12.企業がある事業を参入するときに既存企業の買収に参入するのは、既存企業がすでに先行して事業展開していることで有利性(参入障壁barriers to entry)をもっているからです。それを示す以下の3つの言葉を説明しなさい。
1) sunk cost(埋没費用) とは研究開発費、販売促進費など事業展開しているものがすでに支払っている費用。新規参入は新たにこうした費用が必要。
2) swiching cost(転換費用)とは新規参入者が、顧客を獲得するために現在使用している商品から乗り換えさせるために必要な費用のこと。新規参入者はこのコストが別に必要になる。 
3) learning curve(学習曲線)とは事業を始めたあと、時間とともに学習効果が働き効率が良くなると考えられる。つまり先行事業者は新規事業者より高い効率を達成していると考えられる。

13.以下の文章の3つのかっこの中に同じ言葉を入れて完成しなさい。

 近年注目される証券化は、かつて市場からの資金調達が困難になった企業が行った既存資産の証券化ではなく、これから行う(    )の証券化です。こうした(    )の証券化の考え方は、民間のお金や知恵を公共(    )に生かそうとするPFIでも使われています。

written by Hiroshi Fukumitsu, Jan.10, 2014

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