Entrance for Studies in Finance

メガソーラー ソフトバンク プロジェクトファイナンス

今、メガソーラーが注目されているのは、2012年7月 再生可能エネルギー買い取り制度がスタートすることにからんで、日本全国で多数のメガソーラーの稼働が見込まれているから。同制度は、「適正利潤」を確保した固定価格での買い取りであり、かつ買い取り期間(10年あるいは20年)も明示することから、再生可能エネルギー事業に投資家による参入が続くことが予想されている。この制度導入により、普及が遅れていた再生可能エネルギーによる発電が一気に増えること、技術開発が進み発電効率が改善すること(コストが低下すること)などが期待されている。他方で買い取りの増加が、消費者に転嫁される方式では電気料金引き上げににつながる恐れがあるという議論もある。

実際 メガソラー事業への参入事業者としては
ソフトバンク、NTTなど通信事業者の動きが目立つ。実は電力発電に伴い発電量、使用量などのデータ転送の必要が生じるため
通信回線の販売、節電支援システムの販売など、新たな電力ネットワーク向け技術の開発と事業領域の拡大が見込まれるという。

ソフトバンクの場合(2012年6月末現在 全国10け所以上でメガソーラ建設)
事業会社 SBエナジー
ソフトバンクは京都(4200kw)と群馬(榛東2400kw)でメガソーラ発電を開始(2012/4着工 2012年7月発電開始)
北海道苫小牧で年内に建設開始。
徳島(松茂町2800kw 小松島市2800kw)と栃木で建設中。
鳥取(米子で三井物産と組んで30000kw級を2013年度稼働目指す)と長崎で地方自治体と近く調印。
付随して注目されるのは、債務の増加を避けるソフトバンクの方針である。

債務増加を避けるためメガソーラーではプロジェクトファイナンス方式をとる
プロジェクトファイナンスとはある事業を行う場合、事業者から切り離して
その事業実施を行う特別目的会社を設立するなどして、その事業の経費収益を事業者から分離することで、
該当事業の収益・リスクだけにもとずいて、該当事業の資金調達を行うとする方式を
指している。
プロジェクトファイナンスについて
本体からは新会社SBエナジーに出資。
電機メーカー、金融機関、投資ファンドなどを共同出資者とする。
本体(ソフトバンク)での借入を避ける基本方針がある。
とはいえソフトバンクは多額のリース債務を抱えている(資産としてはリース資産)とのこと。
ソフトバンクが2015年3月期末に純有利子負債をゼロにするというお話はこのリース債務は除外したお話。
リース債務を除外するというロジックについては疑問がないわけではないが、
このお話はプロジェクトファイナンス方式で外部資金を導入する意義を明らかにしている点は注目できる。
メガソーラーの資金は発電所建設資金はプロジェクトファイナンス方式で資金調達。売電収入担保に融資を受ける。
遊休地を利用 20メガワットの発電施設 投資額80億円ほど(構想の公表は2011年5月頃から)。

ファンド投資を通じてより多くの人が参加できる。
他方、自己資金が少なくてもはじめられる。

債務増加を避けるため連結対象外SPCを使うという考え方がほかでもみられる
ソフトバンクは2012年3月に福岡ドームをシンガポール政府公社GICから870億円で買い取ったときも
ソフトバンク本体に影響が及ばないように、連結対象外SPCを設立して、このSPCが借り入れる形式にした。
SPCと球団運営会社はリース契約を結ぶ。

参考 買い取り制度の対象と買い取り期間
太陽光の買い取り価格が42.00円1キロワット時あたり。かつ20年間(10キロワット以上)。
10年間(10キロワット未満)。
風力は20キロワット以上は23.10円。20キロワット未満が57.75円。いずれも20年間。
など 他方で現状の発電コストは
太陽光(雨天曇天で発電効率は大幅に低下 夜間は発電しない 1キロワット時40円前後 あるいは30.1円:2011・12)
風力(9.9円:2011・12)
であり、利潤が確保できる水準に買い取り価格が設定されている。なおこのほかの買い取り対象には
地熱
中小水力
バイオマス がある。

太陽光発電で数万キロワットレベルのものをメガソーラーという。太陽エネルギーは太陽が存在する限り使うことができる。化石燃料と異なり使用によって減少しない。またCO2を発生しない。使っても減らず、かつ使用時にCO2を発生しないエネルギーを再生可能エネルギーと呼ぶ。CO2削減の切り札とされた原子力発電に対して見直しの声が強まる中、再生可能エネルギーへの期待が高まっているが、メガソーラーは、再生可能エネルギーの一つである、太陽光を使った発電で、大型のものを指している。

1メガワットは100万ワットあるいは1000キロワットのこと。1万キロワットが10メガワットになる。
これまでは1000-2000キロワットのものが主流だった。10万キロワット(100メガワット)なら世界最大級される。
2012年6月末段階稼働中で世界最大はウクライナのペロボ太陽光発電所で出力100メガワット。そして
現在世界では500メガワットクラスが建設中とされる。日本国内稼働中で最大は東京電力扇島太陽光発電所で
出力13メガワットとのこと。今後は大規模なものが次々に完成する予定。
報道に示された数値から逆算すると想定は1世帯の必要電力は2キロワットから4キロワットの間。
この数値はかなりバラバラで、この数値の検証も必要であろう。

事例1) 3万キロワット(30メガワット)
約7500世帯の電力需要まかなう(1世帯4キロワット)
総事業費100億円前後
事例2) 5万2500キロワット
2万7000世帯(1世帯2キロワット)
事例3) 6万キロワット
約2万世帯分(1世帯3キロワット)

世界的には、再生可能エネルギーの主力は風力。設置容量の比較で太陽光との比率は3.4対1.しかし日本では太陽光が盛んで比率は1対2.とされている。発電コストからみると、再生可能エネルギーの中でコストが低い点で評価が高いのは風力発電。逆に太陽光は評価が低いはずだが、日本では人気が高い。その結果、メガソーラー 建設・保守管理、太陽電池の生産など周辺ビジネスも伸びることが期待されている。

昨年2011年をみると。欧米は石炭から天然ガスに発電シフトが進んだことでCO2排出量が減った。これに対して日本は原子力発電が相次いで停止する一方で火力発電が増えてCO2排出量が増えたとされる(2011年)。現在の日本は、2020年に1990年比で温暖化ガス排出量の削減目標25%減としてきた国際公約の見直し(2009年鳩山首相)を必要としている。原子力発電所の事故という大きな問題を抱えた日本は、まず原子力発電をどうするかを決めた上でこの削減目標の見直しをする必要があるだろう。そこで大事になる問題が原子力に依存した削減計画の作成である。つまりは再生可能エネルギーへのシフトであり、省電力社会への転換である。私は温暖化ガス排出規制にからんで、

日本はCOP17(第17回国連気候変動枠組み状卓締結国会議)で京都議定書の延長に反対しながら、CDMを通じた排出枠の使用を続ける構えだった。しかしCOP17は2013年以降も京都議定書を延長維持することと2020年に新たな枠組みを発効させることで決着した。議定書を批准しない米国、新興国として削減義務を負わない中国、インドなどをにらんで、延長に日本は反対したというのだ。また原発事故による原発稼働停止を踏まえると削減目標の達成がむつかしくなった事情がある。
なお改定議定書の議論は2012年カタールのドーハで行われるCOP18に譲られた。日本の産業界は、延長に反対して議定書から抜けるという日本政府の今回の方針を支持している。事実上、温暖化ガス排出削減を自主的な努力目標になるからだ(これは産業界の長年の要望)。だとするとこのままでは再生可能エネルギーの議論も危うくなる可能性がある。またこれまで期待されていた排出枠ビジネスは一気にしぼんでしまい曲がり角にある。(景気の悪化もあり)排出権をめぐる相場、市場とも縮小している。新しい事業を育成するためには、どういう社会が望ましいかについて、明確なビジョンをもちぶれないことが大事だ。

私は温暖化ガスの問題を別にして、再生可能エネルギーへの移行が、持続可能社会を作る上で本来望ましいというより大きな判断が必要ではないかと考えている。

福島原発炉心溶融事故について(2011年)
原子力エネルギーへの懐疑と代替エネルギー(2010年)
排出権取引について(2008年)
Area Studies Business Models Business Strategies 
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