Entrance for Studies in Finance

値下がりをどう処理するか 負債と「のれん」の評価

売買目的のものの時価評価は異論はない。
その他有価証券の時価評価
 下落率50%未満:評価損を損益計算書を通さず自己資本に反映する(自己資本 ー評価損+評価損×税率=ー評価損×(1-税率))が簿価は変えない。つまり評価損だけ損失が生じたことを自己資本にだけ反映させる。
 下落率50%以上:評価損を損益計算書に反映し(減損処理をし)、かつ簿価も変更する。投資有価証券の時価が帳簿価格の半値を下回るとその差額を原則として評価損に計上しなければならない。

持ち合い株式の扱い
 2009年秋に公表された国際基準IFRS案では持ち合い株式の時価変動を純利益に影響させない例外処理が盛り込まれた
 原則は時価変動を純利益に計上。持ち合い株式については包括損益への計上も選択できる
 貸付金は償却原価で計上
 ⇔時価会計厳しすぎると危機を助長する
 また将来の損失を見越して前倒し処理する新ルール案 ⇔ 損失認識の遅れ 含み損の不透明さに反省
                                    
米財務会計基準審議会案FASB(2010年5月下旬)
 時価評価の原理主義 決算の透明性重視する投資家に配慮
 持ち合い株を純利益に反映させずに済む例外措置がない すべて純利益に計上
 預金や貸付債権など国際基準では対象としていないものも時価評価
 原則は時価変動を包括損益に計上
 →米国内では機関投資家など投資家は透明性を支持。しかし銀行団体は毎期の収益のブレが、貸し渋りにつながると批判

満期まで保有する金融商品の扱い
 米財務会計基準審議会FASBは2010年5月に時価会計の全面適用を打ち出したが、貸し渋りにつながるなどの批判を受けて、2011年1月、満期まで保有する場合は、償却原価での処理を認めるように方針を変更した。
 時価会計が自己資本比率を悪化させ貸し渋りにつながるプロシクリカリティ(景気循環増幅効果)
 金融機関や米国議会の強い反発 満期保有の債券や貸付金 償却原価での処理を認めるようにFASBは軌道修正(2011年1月)

負債の評価益の計上問題
 国際会計基準審議会が先行して決定。米国では2007年11月から認められている。日本では認めていない。資産の評価損の計上の逆の問題。
 買い戻したと想定する。評価損益。問題は売買が成立しない証券化商品にどのように適用するか。
CDSが上昇する状況。発行している債券価格が下落したとする。
 安値での買い戻しをしたと考えて、元本との差額を利益と認識する。
 時価会計のもとでは資産として保有する債券の値下がりを損失に計上することに対応している。
金融機関が出す債券の評価が問題になった。
 証券化商品のように市場が存在しないもの(レベル3)の扱いはどうするかには問題残る。
 国際会計基準審議会が金融機関の負債の評価益を認めない決定 2010年10月28日 

負ののれん
 買収価格が企業価値(企業価値の時価評価)より高い分をのれんといい、日本基準では20年以内に均等償却するとして費用計上する。
米欧基準ではこの償却の必要がないが、そのために利益が押し上げられやすい。しかし収益力が低下したとき(著しく企業価値が下がったと判断されたとき)減損損失を計上する。そのため不況時には、費用負担が過大になる。
 他方買収額が純資産額より小さい場合は「負ののれん」として計上。純利益の押し上げ要因になる。

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
originally appeared in December 15, 2011
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