Entrance for Studies in Finance

Case Study on Japan Display

2015年3月期決算 最終損益122億円赤字(前期は339億円黒字) 埼玉県工場閉鎖で236億円の特別損失 売上高7693億円 前期比25%増 営業利益51億円 81%減少 2012年4月 ジャパンディスプレイ発足 産業革新機構が2000億円出資 パナソニックから取得した千葉県茂原工場活用 1000億円投資して中小型液晶パネル工場に転換 背景:地デジ移行(2010年peak 国内薄型テレビ出荷台数 急減 2010年2500万台 2011年2000万台 2012年645万台 米国や西欧先進国でも出荷台数減少 その中でサムソン電子24.8⇒27.7% LG電子13.8⇒15.0% シェア伸ばすソニー11.2⇒7.8 パナソニック7.8⇒6% ) 2013年 スマホ液晶パネル 値下がり続く 新興国でスマホ市場拡大 HD品は採算悪化 日本や韓国のメーカーは上位パネル(フルHD WQHD)に移行 中国スマホは急速に高精細化(中国で高速通信インフラ急速に整備) 2014年3月 上場(2013年の中小型液晶パネルの世界シェアは首位16.2% 2005年当時の統合前30%以上から下落 2006年36% 2番手にシャープ 2010年当時はシャープがtop14.8%2番手ガサムソン電子11.9% 奇美電子11.7% その後JD:東芝、日立、ソニー+産業革新機構 ) 上場により1200億円強を調達 上場により産業革新機構の比率36%弱。上場前の半分以下に下がり経営の自立度は上がった。
JDは埼玉深谷工場の2016年4月閉鎖を発表(2014年10月) 茂原工場(スマホ向け高精細で世界最大 2013年6月稼動開始 2015年3月稼働率9割超え)に高精細パネル生産を集約  韓国サムソン・ソニーが中国スマホ(華為科技ファーウェイ 北京小米シャオミなど)に負けて失速 2015年2月 PC用タブレット用値下がり 4kなど大画面化・高精細化進むテレビ用堅調 2015年3月 石川県白山に高精細パネルの新工場建設 投資額1700億円 大半はアップルが負担 アップルそして中国メーカー向け伸びる
またこの間にJD 産業革新機構 ソニー パナソニックでJOLED(ジェイオーレッド)を設立 有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス 薄型で省電力)の国内量産目指す(すでに中小型有機ELは韓国サムソン電子が先行して世界シェア9割 ノートパソコン用中型パネルで2017年にも量産目指す 2016年までに開発費700-800億かける 2013年12月 ソニーとパナソニックは有機ELテレビの共同開発を断念し提携を解消・・・2012年6月に合意して先行する韓国サムソン電子、LG電子を追い協業の検討を進めていたが早期の事業化は困難として4k液晶集中へ。) なお照明の分野でも有機EL照明パネル(面で発光 自然光に近い 軽くて発熱も少ない)はLEDに次ぐ次世代照明の本命とのこと(コニカミノルタが2014年秋にも量産へ パイオニアは2014年3月にも2014年後半に本格化 三菱化学など) displaysearch 液晶パネル市場動向
産業革新機構の巨額出資に至る背景
液晶事業は需要変動・価格変動が激しく数年おきに数100億円の巨額投資必要
→ サムソン 価格破壊でライバルに撤退促す
韓国・台湾勢による価格競争がある
また韓国メーカーは有機ELでは先行している
欧米のテレビ市場の低迷 中国の成長鈍化
中国メーカーによる生産も急増中
このため供給過剰 価格下落の悪循環 大型液晶は不採算事業化
→ 2011年にはサムソン LGすら新工場の着工 稼働を遅らせ始めた
  液晶関連では パネルメーカー テレビメーカーは価格下落で赤字
  他方 部材メーカーで世界シェアの高いメーカー(液晶ガラス インキ 偏光板 ポパーフィルム)は高水準の業績を維持している
2011年まで業界首位のシャープは中小型へシフト ホンハイとの提携強化は挫折
  2009年10月に稼働させた堺工場が誤算のシャープ
  単価下落 円高で大型液晶パネル事業は赤字化(2010年3月期) テレビ用パネルは生産中断
  東芝・シャープともにアップル向けの中小型パネル生産ラインを東芝は石川にシャープは三重亀山に新設計画(2010年12月)
  亀山を携帯端末用に転換(2011年4月 2011年6月にも報道)
  テレビ用パネルではホンハイと提携(ホンハイ傘下の奇美電子との提携報道:生産分担は2011年2月にも ホンハイとの交渉開始報道2011年  6月初旬 合意報道2011年7月中旬)
  シャープがその後 ホンハイと提携に踏み込みながら ホンハイからの出資が実現せず、逆にサムソンから出資を受ける経緯については   Case Study: シャープなお液晶首位のシャープはホンハイとの資本業務提携(2012年3月末)を試みるがその後シャープの株価下落があり交渉は中断、ホンハイからの資本の本格的受け入れは成立していない。
シャープ リストラ策発表(2012年8月)後もホンハイとの提携進展せず
 
他方2011年8月31日 共同記者会見 新会社ジャパンデイスプレイ 2012年春設立(12年4月事業開始)
 東芝・ソニーの液晶事業統合報道(2011年6月上旬) 2011年6月中の合意目指す
 次世代の有機EL量産も視野 産業革新機構が主導 東芝 日立 ソニー 中小型液晶統合プロジェクト
 続いて 日立の合流報道(2011年6月末)
ホンハイ(奇美電子を買収)との交渉はまとまらず(日立は奇美電子とは技術提携。生産委託も行っている。)。ホンハイはシャープとの間で合弁会社設立で合意(2011年7月 大型液晶パネルで提携).その後ホンハイとシャープとの提携は一定以上に進展せず(上記)  

東芝 ソニー 日立3社による正式な会見(2011年8月31日)
 技術優位があるうちに量産体制構築
 2011年8月31日 共同記者会見 新会社ジャパンデイスプレイ(JD) 2012年4月設立へ(2012年3月期単純売上高合計は5700億円)
 現在の工場は国内6ケ所 海外4ケ所 人員は国内7600人 海外を含めると2万5000人
 売り上げを2016年3月期に7500億円まで伸ばして上場を目指す予定であった。
 液晶子会社は親会社の意向を離れた迅速な意思決定できない 過剰プレイヤーで全員が消耗 が現状
 そこで液晶子会社を統合することに.合併すると22%程度のシェア(4位東芝9% 7位日立6% 6位ソニー6%) トップのシャープ(15:14.8%)を抜いて世界首位に(2010年出荷額ベース 2位はサムソン電子11.9% 3位は奇美電子11.7%)
 産業革新機構(政府が920億出資 民間が100億出資 政府保証枠8000億円 投資枠9000億円 民間に比べ甘い投資基準 国民リスク負担で大企業を支援?)が2000億円出資 政府保証で民間から集めたお金
 2011年11月15日 正式合意(3社と産業革新機構) 
 人員については配置転換や早期退職制度でスリム化を進めて2012年4月は6400人体制でスタート。営業や設計開発は本社に集約。既存ラインは製品別に最適化するとした。

ソニーはサムソンとの合弁解消(2012年1月) リストラの渦中にあったソニー
 ソニーはテレビ事業の連続赤字(12年3月期まで8期連続赤字)を受けて、サムソン電子との2004年以来の液晶パネル合弁事業解消に動いた(2011年12月末公表)。合弁会社の持ち株すべてをサムソンに対して2012年1月末をめどに売却するというもの。売却額は1兆800億ウオン(830億円 減損損失660億円)。パネルの安定調達のための合弁であったが、パネルの供給過剰が続いている状況で、合弁生産を続ける利点が失われたと判断したもの。
 国内テレビは2010年のエコポイント(2011年3月終了)と地デジ移行(2011年7月東北3県除き完全移行)の2大特需の反動で一挙に2011年に失速。需要の先食いであるため次の買い替えサイクルは6-7年先とされ、家電メーカーあるいは家電量販店の苦境を深めている。薄型テレビは値崩れで、パネルーメーカー、部材メーカー、量販店とも利益が出ない状態とされる(2012年3月時点)。その後 ロンドン五輪(2012年7月)特需が期待されたが不発に終わったとされる(2012年6月時点)。

新会社はパナソニックの工場を買収して使った パナソニックもリストラの渦中
 パナソニック茂原工場買収へ 毎日2011年10月21日 産業革新機構が取得の方針。2012年7月の報道では 2012年4月に取得 7月から旧設備の撤去作業開始とある。300億円で取得して1000億円を投じて最新鋭の中小型用装置を導入 低温ポリコシンという材料を使った高精細のスマホ用パネルを生産する
 2014年度中の予定を早めて2013年6月にも本格稼働(日経2012年7月21日)。
パナソニック 連続2期赤字見通し発表(2012年10月31日)
 なお2011年6月末に合流した日立(同じ茂原に研究拠点)が千葉のパナソニック工場の買収転用案を持ち込んだとされる。2012年2月にはソニーは愛知県東浦事業所でタッチパネルと液晶パネルを一体にした新型パネルの量産を開始。

2012年4月 日本ジャパンデイスプレー(JD) 中小型液晶パネルで世界首位メーカーの誕生(事業開始2012年4月)
 中小小型液晶パネルの最大手(2013年世界シェア出荷額ベース JD16.2% シャープ15.1% LGデイスプレー14.2% 群創光電:イノラックス11.3% 友達光電:AUO7.4%)。顧客:米アップル、韓国サムソン電子、小米科技(シャオミ)、中国華為技術(ファーウェイ)最大顧客はアップル
 2012年6月 アップルの資金支援受けた能美工場(石川県)稼働 iPhone5向けパネル → iPhone5の不調
       画面サイズ4型の高精細パネル 問題はパネルの歩留まり率 汎用品(1枚20㌦)の1.5培から2倍
パネルの画素内にタッチパネルの機構が組み込まれている 不良品は廃棄 テレビ用の生産ラインの転用で歩留り低下
 2013年3月期売上高4500億円(中小型で世界トップ 韓国LGデスプレーが猛追)
                                        → 1社依存のリスク ファーウェイなどを開拓
 薄型テレビ用液晶パネル化価格低迷(中国のパネルメーカーが高水準の生産 中国国内でテレビ需要伸び悩み)(13年4月)
 スマホ タブレット用中小型は高機能品中心に需要堅調
 日本板硝子の子会社からフィリッピンの液晶パネル組み立て工場を買収(現地従業員4000人を引き継ぐ) 

全国6工場はフル稼働(2013年8月現在)。→全国2ケ所の主要拠点に集約して業務を効率化へ。全社員数6200人。その6分の1を異動。
 2013年6月 千葉県で1500億円を投じたスマホ向け液晶パネルの最大級の工場(茂原工場:パナソニックから300億円で買収した工場 1500億円かけてテレビ用の大型液晶パネル工場を中小型パネル工場に転換。最終的投資額は総額で2000億円とも。その前工程)を稼働させた。低温ポリシリコンを材料に使う高画質パネルを生産。大型ガラス基板を使用。世界最大規模の能力をもつ先端工場。2014年度にも生産能力を倍増し首位を維持へ。スマホ研究部門も集約。カメラ、産業機器用事業部門の主要拠点。また回路の設計は海老名オフィスに。
 車載部門は鳥取工場に集約。石川、茂原、深谷から関連人員を移動。石川、茂原の車載生産ライン(旧式ライン)は閉鎖。鳥取工場に16年3月までに生産ライン新設。
 産業革新機構が7割出資 日立 東芝 ソニーの中小型液晶事業を統合(中小型でのシェアは16.2%で世界首位)
 2013年度中上場(2013年9月発表) 2013年3月期 売上高4500億円。営業利益は30億円。2013年度の上場案件では2013年7月のサントリー食品インターナショナルに次ぐ大型案件。時価総額7000億円規模。2000億円前後を調達予定。
 2014年3月上場(主要顧客のアップル向けは好調 中国スマホ台頭のためサムソン電子やソニー向け出荷が失速 中国スマホ(小米科技:シャオミあるいは華為技術:ファーウェイ)向け想定より伸びず シャープとは競合関係 中国メーカー台頭でパネルの単価下落:背景は中國での供給過剰による投げ売り 中級品の価格が年3割のペースで下落 他方で新製品投入サイクルが早く急激に高精細化が進む)
 中国メーカー向けで単価下落で業績下方修正続く(甘い見通し)。
 業績下降で公募売り出し価格の900円を上回ることなく推移(2014年6月現在 売り出しによる株を入手した個人株主からは不満 上場前 産業革新機構69.5% ソニー 東芝 日立が各9.9% 個人などその他0.7% 上場後産業革新機構35.6% 3社各1.8% 個人などその他59.1%)(2014年10月17日一時313円 機関投資家は売り一色)
 2014年10月 深谷工場(埼玉県)の閉鎖(2016年4月)を発表(国内5工場のなかで最も古い 年70億円の固定費削減)。主力の茂原工場(千葉県)に生産を集約 JDが強い高精細パネル:低温ポリシリコン使用でもシャープやサムソン電子が有機EL外販本格化へ JDについては過剰人員との批判絶えない
 
資料
 産業革新機構 2009年7月27日設立 wiki
 東芝 ソニー 中小型液晶連合 東洋経済オンライン June 22, 2011
 東芝 日立 ソニーが中小型液晶事業を統合 Reuters Aug.31, 2011
 Small LCD makers forming Japan Display with Government support, Sept.2, 2011

新会社:次世代は有機ELで大丈夫?:有力メーカーは多く3社の乗り合い体制:将来への不安は深い
人員については配置転換や早期退職制度でスリム化を進め2012年4月6400人体制でスタート。営業や設計開発は本社に集約。既存ラインは製品別に最適化するとした。新会社発足にあたり強調されたのは有機ELパネルの研究を進めて2013年度をめどに量産を開始する構想。技術開発の基礎力はあるが、この面では韓国勢が商品化ですでに先行している。そこで解像度の高い有機ELの量産の計画が新会社発足にあたり示された(2012年4月2日)。なお新会社に合流しなかったパナソニックはソニーとの大型有機ELパネルの共同開発をその後発表している(2012年6月25日)。しかし有機ELテレビの量産を2012年中と発表していた韓国勢(サムソン電子 LG電子)が薄型テレビ需要の低迷から年内の発売を延期。背景には低コスト化がむつかしく、採算が合わないことがあると見られる(2012年12月現在)。有機ELパネルの量産開始はかなり慎重を要する状況(2012年12月現在)。有機ELの研究開発に毎年100億円規模の研究開発費を投ずる予定
 自発光するため省電力、色再現性で優れている有機ELの課題とされる。先ほどのパナソニックの工場の転用案と区別が難しいが、有機ELパネルについては茂原で研究がすすめられており、2013年にラインを新設して試作。性能を検証の上、2014年から量産に入るとしている(日経2012年10月2日)。中小型有機ELパネルでアップルへの供給を目指している(サムソン電子がすでに有機EL搭載スマホを2010年から発売しているものの、供給余力に乏しい)。
 なお有機ELについては特性を生かして、照明に応用する研究がすすめられている。LEDがすでに省電力という点で普及を始めているが、有機ELには熱くならない、面で照らせるという特性があり、新たな用途開発も期待される。
 2015年1月にタブレットなど有機ELパネル開発会社JOLED(ジェイオーレッド)立ち上げる(革新機構75%とJD15%,ソニー5%、パナソニック5%の3社。なお中小型有機ELパネルでは韓国サムソン電子が9割シェア)。これは3社の技術を持ち寄ってタブレットむけに中型パネルを開発量産しようというもの。有機ELをパネルに塗布する方式で量産方式を確立。サムソン電子に巻き返しを図るという。

JD設立後も実はソニーやパナソニックは独自の有機EL開発を続けている。外から見ていると、ソニーやパナソニックは親会社で使えそうなものは、親の側に残そうとしているように見える。 なおカーナビゲーションなど車載用パネルにも期待高まる。

 産業革新機構の肩入れは、2009年にエルピーダに政策投資銀行が300億円出資した経緯と少し似ている。エルピーダはその後も困難な経営を続けたあと、2012年に入って経営破綻。2012年7月には米マイクロンの子会社になることが決まった。ジャパンディスプレイに対して、同様の結末の危惧があるのも事実だ。産業革新機構の巨額出資は大丈夫だろうか。
エルピーダの米マイクロン子会社化(2012年7月)
半導体事業 エルピーダ そして東芝 ソニー
 
originally appeared in Nov.2, 2011 and Dec.24, 2013
corrected and reposted in May 1, 2015

Case Studies 企業戦略論

   

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