トヨタはHVやPHVにこだわって電気自動車EV(動力源の効率の高さ 温暖化ガスの排出の少なさなどが評価)に熱心でないとこれまでもいわれてきた。背景にはHVのプリウスで世界に先行した成功体験があるとされ、さらにFCVの開発で先行しているとの思いもあるようだ。今トヨタは次世代自動車として燃料電池車FCVにこだわったためにEVの開発が後手になったという批判が強まっている。
英仏政府は2017年7月 将来の(2040年までの)ガソリン車の販売禁止をうちだした。続けて中国もガソリン車ディーゼル車の販売禁止の検討に入っていることがわかった(2017年9月 2018年あるいは2019年にも自動車メーカーに一定比率以上の生産を義務付けるとのこと)。これで欧州と中国のEVへの転換が事実上きまった。つまりHVもPHVも終わった(背景には日本車がHVで得意であるので、欧州や中国がEVシフトを進める側面もあるようだ。他方で、HV車は電力事情の厳しい新興国でまだ売れるとの指摘があり、トヨタは日米欧中ですでにHVの一貫生産体制を構築している)。トヨタはHVやFCVにこだわってEVで立ち遅れたのではないかとの評判が広がっている。すでにベースの問題としてFCVはEVの倍の販売価格になっており、価格競争力の勝負はついている。
トヨタがEVの課題として挙げるのはまず航続距離がまだ短いこと(EV400km HV1500km ガソリン車1000km) 充電時間が長いこと 電池の寿命が短いこと(その結果 短期間で中古車の値段が下がると予測されている)。またEVになると部品点数が4割減り部品メーカーへの影響が大きい、FCVの方が現在のサプライチェーンをいかせるなど。しかし後段の理由付けは従来型の部品メーカーの存続にこだわって、産業構造の変化にまさに立ち遅れることを意味しているのではないか?
燃料電池車FCV:fuel cell vehicle。 2014年12月15日 世界に先駆け トヨタが燃料電池車MIRAIミライの市場発売を開始した(価格は723万 航続距離650km 年400台生産の想定 国が200万程度の補助を予定なので負担は523万 受注2015年1月で1400台 納期に3年と説明 潜在的にはさらに大きな需要が存在 生産規模拡大へ) 。水素5kgで700km走行可能(3分程度でフル充填 ガソリン車並み) 現在は末端で1キロ1000円 廃棄は水だけの究極のクリーンカーとされる。しかしこれらを総合したとき、計画に無理があることは明らかではないか?
トヨタは普及にむけて特許技術5680件の無償提供を表明した(2015年1月)・・・オープンアンドクローズド戦略 自社の技術を業界標準とすることで市場で主導権確立 (米インテル:PCのマザーボードの技術を台湾企業に提供 米アップル:端末の製造情報などを中国企業に開放)
⇒ サムソンとアップル 特許戦略の違い サムソン:標準化 アップル:オープン&クローズ 日本企業:自前主義
FCVが普及する上での壁(2016年度FCVの国内販売台数約1000台 )は、水素ステーションの整備が遅れていることと、水素価格がなお高いこと(2016年度FCVの国内販売台数約1000台 )など極めて多く厚い。水素ステーションの普及はその後もめどが全くたたない(国が設置経費の半額を補助)。ステーションの建設費も高額、現在4-5億を1億円台(ガソリンスタンド並み)に引き下げる事が課題。水素の製造流通コストの大幅な引き下げが必要とされる。これらに関連する膨大な投資のめどもたっていない。問題なのは、日本だけでステーションを整備してもFCVは世界レベルで普及しないということ。・・・結論から言えばFCVの構想は将来図として根本的に実現の見通しに欠陥がある。このように欠陥のある計画を現在も進めているトヨタのこのこだわりや経済産業省の支援はよく理解できない。はっきりいえばFCVの課題よりはEVの課題克服に全力を挙げるべきではないだろうか? 中途半端に水素ステーションを整備することは膨大なムダを作り出す可能性は高いのではないか。FCVでは水素ステーションの整備が必要。他方、EVは逆に自宅充電が可能で、ガソリンスタンドを不要化することも可能。こうなるとどちらを普及させるべきがすでに結論はでているのではないか?一説にはFCVはEVの次の技術だという。そうだろうか?EVで負けてしまってからFCVで巻き返しは可能だろうか?
2017-12-25(2015-05-05)