Case Study : Seven & i HD 鈴木敏文会長の退任劇 社外取締役の見識かあるいは横暴か
2016年3月8日 セブン&アイHDは、傘下の百貨店2つとイトーヨーカ堂の不採算店20店の閉鎖を発表。コンビニに経営資源を集中へ。2016年度過去最高の1800店の大量出店へ(2015年度末で1万8600店)⇒国内2万店が視野に。(ファミマとユニー:サークルKサンクスが経営統合基本合意で1万8000店で後を追う 2015年10月統合合意発表)
3月末の指名報酬委員会(4人 鈴木氏 村田氏に社外の一橋特任教授伊藤邦雄氏 元警視総監米村俊朗氏の二人)で社外取締役(村田氏と伊藤氏)が井阪氏の交代を含む人事案に反対し、結論を出せなかったたとされる(後述)。だが米村氏は警察の公安畑の出身。経営者をどうするかについて特段の強い判断(失礼ながら見識)があるとは思えない。となると・・・・ただ一人の社外取締役(伊藤氏)が経営が振りまわしたようにも見える。
背景としてセブンイレブンの業績が好調(5期連続最高益)であるなか。創業家伊藤雅俊は名誉会長は交代に反対。8歳年上の古屋氏への交代について指名報酬委員会(4名)は社外取締役2人の反対で結論だせず。鈴木氏の判断に次男の鈴木康弘氏の処遇と実は関係していたとのお話しもある。
この鈴木氏の井阪氏交代案に先立つものがある。2016年1月に生じた、イトーヨーカ堂戸井和久社長の辞表提出劇。2014年に就任後1年8ケ月で自ら退任し、2014年5月までつまり前任の社長の亀井淳顧問が社長に復帰した。このときも退任は自発的とはいえ伏線は鈴木氏が戸井氏のリーダーシップに不満を示したこと。GMS(総合スーパー)という業態では集客売り上げが困難になっており、特に従来型の単独店舗を中心に売り上げ不振が続いている。しかしこちらはまだ売り上げ不振で責任をとったともいえる。GMSは従来型のメーカー卸から仕入れる流通構造にのっていたため、商品開発・価格体系の見直しまですすめなかった。これに対してSPAに示される垂直統合型のファストや良品計画などでは、明らかに製造に踏み込んで買いたい商品の提供にまで進んでいる。従来型では、商品が標準化で魅力がなく、価格面でも特徴を作り出せない。
専門店に特化したdiscount storeや、独自商品で売るSPAに対して、総合スーパーは特長を出せず後退が続いている。利便性ではコンビニやネットストア(電子商取引)との競争もある。総合スーパーの多店舗による大量購入低価格というモデルでは、店舗に魅力が出ないということだろう。それは詰めて言えば、販売している商品そのものの魅力を高めるということだろう。
総合スーパーのもう一つの問題それは郊外にある単独店舗だろう。人々が都市に集中して住み、高齢化を前提に出歩く範囲にコンビニ(1974セブニレブン開業 営業時間帯 定価販売でも客は来る バーコード 共同配送による物流合理化=系列物流網の否定 収納代行会誌1987 セブン銀行2001 米セブンイレブンを子会社化2005 セブンプレミアム開始2007 社会インフラとの評価)がある。
流通3極 スーパー主体のイオン(7兆800億円) コンビニ主体のセブン&アイHD(6兆400億円)、コンビニ主体のファミマ+ユニー(スーパーが収益のあしかせ)1兆4000億円 ファミマユニーの1万8000店舗はローソンをうわまたった。2015年4月から統合協議 8月の基本合意を延長 10月に基本合意 2016年5月の株主総会で合意 9月新会社発足
2016年10月 井阪隆一氏のもとでの新たな経営方針(構造改革 就任後100日以内を目指したが133日後発表となった)が発表された。業績不振の百貨店部門の縮小(H2Oとの資本提携 関西3店舗のH2O:阪急・阪神への譲渡 首都圏への経営資源転換 2006年にミレニアム:そごう・西武買収に始まる百貨店事業の思い切った縮小)。総合スーパーについては不振店の閉鎖と店舗特性(ショッピングセンター型 食品主体型 総合スーパー型)に応じた改装。伸びが続くコンビニは高水準の出店と並行して出店基準も厳格化(平行して閉店)するとした。
この方針そのものは支持できる。商品知識のない店員が店頭に溢れかえり割高なものしかない百貨店や、ただただ面積が広いだけの売り場に安物が大量に並ぶ総合スーパーはいずれも過去の遺物、そもそも存在を続けることが社会悪だろう。総合スーパーGMSは、薄く幅広い品ぞろえ。1990年代に入り、豊かさが進むと、奥行きのある品ぞろえと低価格を実現した、垂直統合型専門店チェーン(SPA 製造小売り ユニクロ、ニトリ、無印良品など)が支持されるようになった(ニトリの百貨店への進出が最近では注目されている2016/09東急百貨店東横店 2016/12タカシマヤタイムズスクエア)。
もともと米投資ファンド サードポイント(2015年10月に大量保有が判明)は、百貨店事業の切り離しを求めており、その障害となる鈴木敏文氏の経営からの排除を求めていた面がある。井阪体制(持ち株会社側)の改革案は、結果としてサードポイントなど外部資本の意向に沿ったものになった。また、百貨店事業、ネットと実店舗の融合を目指したオムニチャンネルという鈴木氏の路線をいずれも否定。それを表現する言葉として投資リターン重視を上げた。
2017年2月期 セブン&アイHDは連結営業利益で7期連続過去最高益を記録したとのこと。スーパーでのコスト削減が進めた成果が表れているとのこと。(なお人手不足が販売管理費用を押し上げ加盟店の経営が悪化している。本部の負担を増やすなど支援コストが上昇している。「スーパーではセミセルフレジ:バーコード読み取りを店員が行い、精算は顧客が行う。の普及が始まっている。コンビニについてはICタグを使った無人レジが構想されている)。主力のコンビニは一見安泰。しかし2016年9月に伊藤忠商事が出資するファミリーマートがサークルKサンクスと合併。2位連合となり、セブンイレンブンとの店舗差を一気に縮めた(19400対18000 19年2月末としていた転換を前倒しで急いでいる)。他方、三菱商事はローソンをTOBにより完全子会社化。反抗を急いでいる。こうしたなか、2017年4月7日、 セブン&アイHDは米国の中堅コンビニ、スノコLPから1100店舗を33億ドルで買収するとした。国内の成長に限界があるなか、成長余地のある米国での積極策は好感できよう。
2017/05/21加筆修正更新(2016/05/26投稿)