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鈴木敏文会長の退任劇 社外取締役の見識かあるいは横暴か

 

Case Study : Seven & i HD  鈴木敏文会長の退任劇  社外取締役の見識かあるいは横暴か

2016年3月8日 セブン&アイHDは、傘下の百貨店2つとイトーヨーカ堂の不採算店20店の閉鎖を発表。コンビニに経営資源を集中へ。2016年度過去最高の1800店の大量出店へ(2015年度末で1万8600店)⇒国内2万店が視野に。(ファミマとユニー:サークルKサンクスが経営統合基本合意で1万8000店で後を追う 2015年10月統合合意発表)

2016年3月27日 米投資ファンド サードポイントも反対(2015年10月業績不振のイトーヨーカ堂のGからの切り離し求める。2016年3月27日には鈴木敏文氏(20年以上top 83歳)の井阪社長交代案に反対。これは次男の処遇とからんでいるとの指摘も出た。 

3月末の指名報酬委員会(4人 鈴木氏 村田氏に社外の一橋特任教授伊藤邦雄氏 元警視総監米村俊朗氏の二人)で社外取締役(村田氏と伊藤氏)が井阪氏の交代を含む人事案に反対し、結論を出せなかったたとされる(後述)。だが米村氏は警察の公安畑の出身。経営者をどうするかについて特段の強い判断(失礼ながら見識)があるとは思えない。となると・・・・ただ一人の社外取締役(伊藤氏)が経営が振りまわしたようにも見える。

背景としてセブンイレブンの業績が好調(5期連続最高益)であるなか。創業家伊藤雅俊は名誉会長は交代に反対。8歳年上の古屋氏への交代について指名報酬委員会(4名)は社外取締役2人の反対で結論だせず。鈴木氏の判断に次男の鈴木康弘氏の処遇と実は関係していたとのお話しもある。

2016年4月7日鈴木敏文会長(1992年にトップに就任 米社の救済合併 銀行業への参入を指揮 日本式ビジネスモデルを確立 業界を牽引 コンビニ=社会インフラに成長)による井阪隆一社長兼COO(セブンプレミアムの立ち上げ開発を指揮などで手腕 利益率の高いPBの売上高に占める比率を上げる作戦 メーカーも専用商品を提供)58歳セブンイレブン交代案(後任に古屋一樹氏66歳)を取締役会が否決(賛成7 棄権2 反対6)した。人事案流れたことで鈴木氏が退任へ(4月7日午前取締役会 午後全役職:セブンイレブンジャパン会長兼CEO イトーヨーカ堂会長兼CEO 米セブンイレブンインク会長 からの退任表明 ただ票数をみるとこの決定は微妙で社外取締役がいなければ結論が違ったことがわかる つまり社外取締役が鈴木氏のリーダーシップを否定した。これは正しい結論の導き方だったかどうか)。鈴木敏文氏は井阪隆一氏のリーダーシップに不満があったとのこと。
 
4月15日の指名報酬委員会 井阪氏をセブン&アイ 社長に昇格 村田紀敏社長(鈴木氏の人事案に賛成)の退任 セブンイレブン社長に古屋一樹副社長の昇格を決める副社長には後藤克弘氏。 鈴木氏の処遇で最高顧問案(村田氏が提案)に社外取締役が反発。・・・・任意の諮問機関で決定権は会社側との考えもあるともされるが、鈴木氏に追い出されるはずであった井阪氏が、逆にtopに昇格。社外取締役がこの場合 機能はしているわけだが。鈴木氏の処遇は最高顧問でなく名誉顧問としたの(5月26日 株主総会)は 井阪氏の意向ともされる。鈴木氏の影響力を排除したいということであろう。他方、加盟店オーナーからは、鈴木氏を慰留する声が強かった。
 
この「事件」は社外取締役が、会社のトップを誰にするかという問題で、社外取締役が「機能」した事例なのか。あるいは逆に「暴走」した事例なのか。少なくとも社外取締役の存在によって、次期経営者を誰にするかという企業経営の根幹で社内取締役の多数派の意向が否定された可能性を示したことは間違いない。社外取締役を導入を進めようとする上場会社に対して、大きな警鐘になったことは間違いない。 

この鈴木氏の井阪氏交代案に先立つものがある。2016年1月に生じた、イトーヨーカ堂戸井和久社長の辞表提出劇。2014年に就任後1年8ケ月で自ら退任し、2014年5月までつまり前任の社長の亀井淳顧問が社長に復帰した。このときも退任は自発的とはいえ伏線は鈴木氏が戸井氏のリーダーシップに不満を示したこと。GMS(総合スーパー)という業態では集客売り上げが困難になっており、特に従来型の単独店舗を中心に売り上げ不振が続いている。しかしこちらはまだ売り上げ不振で責任をとったともいえる。GMSは従来型のメーカー卸から仕入れる流通構造にのっていたため、商品開発・価格体系の見直しまですすめなかった。これに対してSPAに示される垂直統合型のファストや良品計画などでは、明らかに製造に踏み込んで買いたい商品の提供にまで進んでいる。従来型では、商品が標準化で魅力がなく、価格面でも特徴を作り出せない。

専門店に特化したdiscount storeや、独自商品で売るSPAに対して、総合スーパーは特長を出せず後退が続いている。利便性ではコンビニやネットストア(電子商取引)との競争もある。総合スーパーの多店舗による大量購入低価格というモデルでは、店舗に魅力が出ないということだろう。それは詰めて言えば、販売している商品そのものの魅力を高めるということだろう。

総合スーパーのもう一つの問題それは郊外にある単独店舗だろう。人々が都市に集中して住み、高齢化を前提に出歩く範囲にコンビニ(1974セブニレブン開業 営業時間帯 定価販売でも客は来る バーコード 共同配送による物流合理化=系列物流網の否定 収納代行会誌1987 セブン銀行2001 米セブンイレブンを子会社化2005  セブンプレミアム開始2007 社会インフラとの評価)がある。

流通3極 スーパー主体のイオン(7兆800億円) コンビニ主体のセブン&アイHD(6兆400億円)、コンビニ主体のファミマ+ユニー(スーパーが収益のあしかせ)1兆4000億円 ファミマユニーの1万8000店舗はローソンをうわまたった。2015年4月から統合協議 8月の基本合意を延長 10月に基本合意 2016年5月の株主総会で合意 9月新会社発足

2016年10月 井阪隆一氏のもとでの新たな経営方針(構造改革 就任後100日以内を目指したが133日後発表となった)が発表された。業績不振の百貨店部門の縮小(H2Oとの資本提携 関西3店舗のH2O:阪急・阪神への譲渡 首都圏への経営資源転換 2006年にミレニアム:そごう・西武買収に始まる百貨店事業の思い切った縮小)。総合スーパーについては不振店の閉鎖と店舗特性(ショッピングセンター型 食品主体型 総合スーパー型)に応じた改装。伸びが続くコンビニは高水準の出店と並行して出店基準も厳格化(平行して閉店)するとした。

この方針そのものは支持できる。商品知識のない店員が店頭に溢れかえり割高なものしかない百貨店や、ただただ面積が広いだけの売り場に安物が大量に並ぶ総合スーパーはいずれも過去の遺物、そもそも存在を続けることが社会悪だろう。総合スーパーGMSは、薄く幅広い品ぞろえ。1990年代に入り、豊かさが進むと、奥行きのある品ぞろえと低価格を実現した、垂直統合型専門店チェーン(SPA 製造小売り ユニクロ、ニトリ、無印良品など)が支持されるようになった(ニトリの百貨店への進出が最近では注目されている2016/09東急百貨店東横店 2016/12タカシマヤタイムズスクエア)。

もともと米投資ファンド サードポイント(2015年10月に大量保有が判明)は、百貨店事業の切り離しを求めており、その障害となる鈴木敏文氏の経営からの排除を求めていた面がある。井阪体制(持ち株会社側)の改革案は、結果としてサードポイントなど外部資本の意向に沿ったものになった。また、百貨店事業、ネットと実店舗の融合を目指したオムニチャンネルという鈴木氏の路線をいずれも否定。それを表現する言葉として投資リターン重視を上げた。

2017年2月期 セブン&アイHDは連結営業利益で7期連続過去最高益を記録したとのこと。スーパーでのコスト削減が進めた成果が表れているとのこと。(なお人手不足が販売管理費用を押し上げ加盟店の経営が悪化している。本部の負担を増やすなど支援コストが上昇している。「スーパーではセミセルフレジ:バーコード読み取りを店員が行い、精算は顧客が行う。の普及が始まっている。コンビニについてはICタグを使った無人レジが構想されている)。主力のコンビニは一見安泰。しかし2016年9月に伊藤忠商事が出資するファミリーマートがサークルKサンクスと合併。2位連合となり、セブンイレンブンとの店舗差を一気に縮めた(19400対18000 19年2月末としていた転換を前倒しで急いでいる)。他方、三菱商事はローソンをTOBにより完全子会社化。反抗を急いでいる。こうしたなか、2017年4月7日、 セブン&アイHDは米国の中堅コンビニ、スノコLPから1100店舗を33億ドルで買収するとした。国内の成長に限界があるなか、成長余地のある米国での積極策は好感できよう。

百貨店の売上高は1991年がpeakで9.7兆円。2016年の売上が5.98兆円で1980年以来36年ぶりに6兆円割れとなった。それらの中で免税店、新業態店、不動産事業、商業施設運営に取り組む高島屋が堅調。反対に経営不振を極めているのは三越伊勢丹。同社は旧態以前の百貨店事業への依存と高級路線。極めて高い人件費体質。肥大化した間接部門で知られる。ゆえに売上が落ちれば減益は当然。この結果を受けて、2017年4月 大西洋社長が辞任し、杉江俊彦氏(取締役 経営戦略本部長)が新社長に就任した。大西改革に対する現場の反発があったとされるが、大西氏が進めた多角化路線そのものは正しい。そもそも取締役で経営戦略本部長だった人が、大西改革に無縁だったとも思えない。とするとこの人事で三越伊勢丹の事業が回復するとは即断できないのではないか。

2017/05/21加筆修正更新(2016/05/26投稿)

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