Entrance for Studies in Finance

ユーデル「アセットべーストファイナンス入門」2004


きんざい より高木新二郎 堀池篤訳で2013年に翻訳がでている。なぜか訳者まえがきにもあとがきにも、英文フルタイトルがでてこない。調べた限りでは以下の翻訳と思われる。Gregory F.Udell, Asset Based Finance, Commercial Finance Association,2004.

冒頭で伝統的な銀行融資(financial statement lending)は、財務諸表、財務比率に依拠した無担保の短期融資だとする。

これに対してABLは全体的なキャッシュフローの評価ではなく、売掛債権と在庫品である担保物の価値評価に焦点を移したものだとする。売掛債権の質が重要になる。清算によりどれだけ回収できるかに与信判断の大部分が依存している。
 
 アセットファイナンスについて(みずほの説明) 
 (三菱とみずほの説明では、アセットファイナンスを基本的には債権買取を軸に説明している。企業の側から考えると、アセットを小さくする経営につながること。また金融機関の側からみると、実は金融機関のバランスシートの拡大も防ぐ仕組みとなっていることがポイントであろう。)

担保をとる通常の中小企業向け融資は、与信判断の基礎を企業の力に置いているがABLでは担保物の価値においており、担保物のモニタリングにそのビジネスの本質があるとしている。

(以上の出だしは大変印象的である。)
(以下2つ抜きだす。一つは担保価値には様々なものがあるという指摘。この長いリストはなかなか勉強になる。)
さまざまな価値(リストが長いので一分をはしょって抜粋した)
 再調達価値 全く同じ新品を作るのに現時点でかかる原価 
 取替原価 評価資産とほぼ同等の効用を有する類似商品を現時点でつくるための原価
 公正市場価格 公平な状態にある買い手と売り手の間で合理的に予想される売買代金金額
 秩序だった清算orderly liquidationにより売却する場合の価格 買い手をみつける合理的な期間(通常は180日)が与えられる場合
 強制清算価格forced liquidation value 倒産後比較的早い特定の日におけるオークション(入札)価格
 引揚価格salvage value 設置場所を動かすとした場合の価格
   スクラップ価格 材料として売却された場合の価格
 帳簿価格 貸借対照表記載価格

評価の手法には収益法、原価法、市場法がある。収益法つまり将来のキャッシュフローを割引率を用いて調整した現在価値を算出する方法は以上にはそもそも含まれていない。この方法は、買い手をみつける十分な時間的余裕を前提にしており、売却価格が資産の正味現在価値を十分反映すると仮定している、またキャッシュフローが資産ごとに特定できることを前提にしている。これはABLでは非現実的である。
ABLにおける価値評価手法にあるのは、原価法と市場法である。再調達価格法、置き換え価格法は原価法の一つである。これらは、市場に比較可能なものがない場合は、意味がある。いくらでうれるかという市場法がそれ以外であるが、こちらがABLでは標準的かつ現実的な価値評価方法である。

(もう一つは担保をめぐる詐欺について、あるいは気を付けるべき点の指摘である。この指摘も興味深い。担保の問題に加えて、資産の流出の問題や、倒産手続きの悪用の指摘は大事のpointである。)
担保の管理は重要である。それには、さまざまな詐欺(架空の売掛債権、存在しない在庫、二重担保、売掛債権の減少が報告されない、受取債権回収金が引き渡されないこと)がそこでは起こりうることも背景としてある。
 出荷前の商品・サービスの計上(請求書発行pre-billing)⇒出荷証明をチェック
 回収不能債権を新しい債権に移し替えること⇒個別の明細書をチェック
 売掛先信用情報の秘匿⇒信用情報の請求
   出荷留保への請求書(担保の二重化)
 架空の売掛債権創出fraudulent receivables
    在庫品価値の水増し計上
 架空在庫品の記載計上(倉庫・輸送中など 空箱・カラのコンテナーなど)
 陳腐化したものを評価減しないこと
 資産の隠匿(関係者・身内への支払い 架空業者への支払いなどによる資産・資金の外部流出) 
 在庫品のバッタ売り(在庫を大量に安値で換金処分すること。債権者にとっての問題は、資産価値が減ること、そして倒産手続きに入るとその現金は当面、回収できなくなること)
 倒産申し立て悪用。

#担保価値 #モニタリング #再調達価値 #引揚価格 #詐欺 #アセットファイナンス


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