これに先だって中国との関係強化に理解のある国民党政権下の台湾は2009年7月1日から中国企業の直接投資を100分野について解禁している(6月30日発表。解禁を見送った分野には半導体、液晶パネル、発光ダイオード、太陽光発電、鉄鋼、化学がある)。解禁の背景には金融危機以降の台湾経済の輸出減による落ち込みがある。
2009年11月16日には台湾の金融監督管理委員会と、中国で銀行、証券、保険を監督する3つの委員会が覚書を調印。双方の金融機関が相互に支店を開設できることにになった。
中国側には台湾の資本や技術力を吸収する狙いがあるとみられる。
中台の合意により、一部の工業製品については、中台共通の工業規格が、世界標準になる可能性も高まっている。この事態に日本政府はどのように対応するべきだろうか。中国に進出している台湾企業は台湾の銀行と直接、人民元・台湾ドルによる決済が可能になる。また中国から台湾への直接投資や証券投資も容易になる。
中国経済の発展が急速であるなか、日本政府が自由貿易協定FTAの拡大にむけてさらに積極的に努力する必要は高い。日本政府は農産物への影響を避けるためFTA協定に消極的だっとされる。これに対して韓国は積極的に動いているとされる。
実は中国主導のASEAN(10)+3(日中韓)に対し、TPP(環太平洋戦略的経済パートナーシップ)に米国は参加を表明(2009年11月14日のオバマ大統領東京演説)。貿易圏づくりで米中は競っている。米中間に挟まれた日本政府の対中国政策、対アジア政策が問われているのである。
鳩山由紀夫首相の東アジア共同体構想(ASEAN+3+3(インド、オーストラリア、ニュージーランド)も、こうした競合する構想の中で出されたものだが、この構想は米国を含まず、インドが入ってくる点が変わっている。
鳩山構想について河合正弘氏は、まずASEAN+3でまとめて、次にASEAN+6に拡大することを提唱している(「経済先行、ASEAN核に」『日本経済新聞』2009年12月17日)。また農業や外国人受け入れで開放的な政策をとらないと、アジア各国から信頼を得られないとしている。投資だけでなく、財・サービス、投資をセットに経済連携協定EPAの交渉をすすめるべきだとしている。大変現実的な考え方であり支持したい。
先行するASEANではAFTA(ASEAN自由貿易地域)実現に向けて域内関税の撤廃に取り組んでとくに先発加盟6ケ国で着実に成果をあげている。これは途上国間であっても対話を通じたコンセンサスを重視することで経済統合に進めることを示している。
なお米日中を含むアジア太平洋経済協力会議APECを、アジア太平洋自由貿易圏FTAAPに発展させようという構想(2006年にブッシュ前大統領下のアメリカ政府が提唱)はすでにある。しかしAPECになると関係国が21の国・地域に及ぶので調整はむつかしかもしれない。2010年日本はAPECの議長国となる。この機会に日本は開放性を示して経済連携協定締結に向けた積極的姿勢をアピールするべきだろう。
最新の画像もっと見る
最近の「Economics」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事