日本サッカー協会の近くに「かつ亭津々美」というトンカツやさんがあります。
アルベルト・ザッケローニさんが日本代表監督に就任後、初采配のアルゼンチン戦で歴史的勝利(1-0)以降、2011年11月ワールドカップブラジル大会アジア三次予選での北朝鮮戦に敗れるまで約1年間、16試合無敗という強さを発揮しました。
この頃、サッカー協会会長小倉純二さん(当時)は複数の協会職員を昼食に誘って、このお店で食事をし、全員分をオゴっていたそうです。不思議と試合前にこれをやると負けずに、悪くても引き分けだったそうです。
しかし、2013年に入ると、3月ヨルダン戦、5月ブルガリア戦に連敗。6月のコンフェデレーションカップではブラジル、イタリア、メキシコに3連敗。東アジアカップの中国戦は引き分けながらも、内容的は負けといいところが見られなくなりました。
その要因として2012年8月に就任した大仁邦彌新会長がトンカツの儀式(?)をやらないようになったのだと言われています。前会長からの“引き継ぎ”行われていなかったようです。
さて、勝負の日の食事に縁起を担いで「トンカツ」「カツ丼」という考えもあると思います。
でも、試合前に油ものの食事はあまり良くないとのこと。「トンカツ」「カツ丼」では逆に力が発揮できないこともあるそうです。
カツ丼の白飯は炭水化物でエネルギーが含まれています。豚肉には疲労回復のB1や筋肉を作るタンパク質が非常に多く、脂質もあって、バランスよく栄養が摂取できます。
しかし、試合前にこれを食べると身体が消化するのに時間がかかる。
一般的に、おにぎり2個だと消化されるまで約3時間。一方カツ丼は約12時間も胃の中に残っていると言われます。
お腹いっぱい(胃の中に食べ物がある状態)です。
これを消化しようとすることにエネルギーを使います。そうすると脳と身体(筋肉)にはエネルギーが行きわたりません。胃袋にせっかくのエネルギーが使われています。
ですから、“ここ一番”に力が発揮できないということになるようです。
さて、ワールドカップ南アフリカ大会の時に、日本代表ベースキャンプの時の話です。
このときに日本代表は専属シェフを同行させて、シェフが選手の目の前で料理するライブクッキングを行ったそうです。夜はステーキ、お好み焼き、朝はオムレツ。
しかし、試合前日は決まってうなぎの蒲焼き、そして試合後は特製カレーというメニューだったそうです。これが日本代表の勝負メシということですね。
試合が近づいてくると、食事も脂質を抜いて和食中心に切り替えたとのこと。
南アフリカでは現地の新鮮なうなぎを調達。うなぎはビタミンA、B群が豊富で、疲れが取れて活力が出てくるという効果があります。
なお、2013年コンフェデレーションズカップでは、うなぎが現地で入手できず、穴子で代用したそうですが、結果は・・・だから、今回の本番ではうなぎの手配こだわっているようです。
試合後のカレーは日本代表の伝統。次の試合に向かう活力とするそうです。
ちなみに、ここでのカレーは本格派ではなく、家庭の味。
南アフリカ大会決勝トーナメント一回戦パラグアイ戦でPK戦の末に敗れた後のチーム最後の夕食もカレー。
PKを外した駒野友一選手はショックを引きずったままで、大好きなカレーを目の前にしてもスプーンを口まで運べなかったそうです。
シェフは「試合後にホテルに戻って岡田監督のあいさつがあって、中澤佑二選手が『最後の食事が終わるまで、W杯は終わらないよ』と言っていたことがとても印象的でした。メニューは恒例のカレーに、魚料理2品、ステーキに豚のしょうが焼き。駒野選手には声をかけづらい雰囲気ではありましたけど、みんなが痛みを分かちあっていた」と感じたそうです。
岡田元監督は「西さんの料理はもちろん美味い。でも、あの人はただおいしい料理を作ればいいで終わりじゃない。勝たせたいと思って料理を作ってくれている。それが俺たちにも伝わってくるんだよ」と言っています。
たかがご飯と言うなかれ。
毎日が“勝負メシ”です。