2017新語・流行語が先日発表されましたが、そのノミネート語の中には政治の世界から発生した言葉もありました。そもそも政治家は言葉を生業(生活を立てるための仕事)とする職業です。つまらないバラエティー番組を観ているよりも、国会中継や政治に関するニュースを観ていた方が面白い場合もありますが、見た後、なぜか腹が立つのは私だけではないと思います。
あんな失言で職を辞した人、こんな珍言で失笑を買った人。与野党議員らの「迷言」珍プレー集です。なお、もちろん、書ききれなかったことは言うまでもありませんでしょう。
では、スタートです。
「酉年は必ず大きく政界が動く年だと思っております。民進党が羽ばたける一年にしたいという思いを持って参拝をさせていただきました」
蓮舫元民進党代表(1月4日、三重県伊勢市の伊勢神宮参拝後の記者会見)
現状をまったく想定していなかった。おめでたいにもほどがあるというものでした。蓮舫さん、前原さんと国民の期待を裏切り、民進党自体が羽ばたくところを見失い、迷い鳥となってしまった一因は感じていないのでしょうか。
「器が小さいんだよ!」
山尾志桜里議員(4月19日の衆議院法務委員会で、安倍首相の答弁中にヤジ)
委員会で山尾議員は安倍首相の過去発言を取り上げ追及していましたが、山尾議員からの質問に「苦笑してしまった」などと笑顔で答弁していたことに対してのヤジです。「安倍の器は知らないが山尾のガソリンタンクは確かに大きいよ」と、ガソリンプリカ問題(2万円ガソリンプリカを年に105回購入していた問題)に絡めて皮肉を言われ、その後、本人の不倫疑惑の件もあり、どれもこれも説明責任不足。自民党に「説明責任どうなってる」と言っても「お前がそうだろ」って言ってあげたいです。
「国会で追及してほしいことをお寄せください」
長妻昭元厚生労働相(3月1日、ツイッターで呼びかけ)
ツイッターで「国会で追及してほしいことをお寄せください」と呼びかけたところ、ネットユーザーからは、民進党のあんな疑惑やこんな不祥事の“追及”を求める声が相次いで寄せられました。蓮舫さんの「二重国籍」問題や「ガソリーヌ」こと山尾さんの政治資金問題、後藤祐一さんの暴言問題などなど、旧民進党議員の疑惑や不祥事を追及のテーマに据えるよう求める意見が集まりました。こういう結果になることは予想できていたと思うのですが。
当時の第一野党である民進党は「迷言」の宝庫でしたが、政権をつかさどる与党の自民党も当然、負けていません。さらに言いたい放題です。
「出て行きなさい!」「うるさい!」
今村雅弘元復興相(4月4日、福島第1原子力発電所事故の自主避難問題に関するフリー記者の質問に対して)
福島第一原発事故で今も帰れない自主避難者への対応について、フリーランスの記者から質問されてです。その後、「感情的になってしまった。おわびを申し上げ、今後はこういうことがないように冷静適切に対応していきたい」と陳謝した舌の根も乾かぬ4月25日、所属する自民党二階派のパーティーで、東日本大震災の被害に関して「まだ東北で、あっちの方だったから良かったけど、これがもっと首都圏に近かったりすると莫大な甚大な被害があった」と述べ、即日更迭。
「1行でも悪いところがあれば、『けしからん、首を取れ』と。なんちゅうことか」
二階俊博自民党幹事長(4月26日、上記のパーティー中での今村雅弘元復興相の発言に関して)
マスコミへの八つ当たりは違うでしょう。そもそも身内の議員が管理できなくて、政府を管理できるというのでしょうか。その前に2行も3行も悪いところがあるようですから、即刻辞職ものでしょう。
「政府が持つ長靴が、えらい整備されたと聞いている。たぶん長靴業界は、だいぶ儲かったんじゃないか。今日のパーティーには長靴業界の方を呼んでいませんが、そういう方々にも来ていただくようになったらいい」
務台俊介衆院議員(3月8日、政治資金パーティーで岩手県の豪雨被災地視察の際、長靴を準備せず職員に背負われて水たまりを渡った件)
半年前にこの件で被災現場の水たまりをおんぶされて渡っていたとし、「不適切だったと猛省している」とし、長靴を持参しなかったことについても「大いに反省している」と述べていたはずなのに。
今年、一番の盛り上がりを見せた学校法人「森友学園」をめぐる問題。「森友劇場」とも呼ばれ、何人もの大根役者が次から次へと登場しました。未だに真相ははっきりしません。その舞台で出てきた、迷セリフです。
「夫婦で来ていたと思います。籠池さんと奥さんと。紙に入ったものを『これでお願いします』ゆうて。オバハンの方が。一瞬でカネだと分かりましたよ。だからそれを取って『無礼者!』と言ったんだ。男のツラ銭ではたく、政治家のツラを銭ではたくような。そんなん教育者ちゃう、帰れ、と。ただ、それがカネであったか、コンニャクであったか。カマボコかウイロウか知らん。確かめてへんから」
鴻池祥肇元防災担当相(3月1日、森友学園口利きに関する記者会見)
「昭恵夫人が名誉校長に就任している小学校の開校を延長したら、『昭恵夫人に恥をかかせたのか』『安倍首相に恥をかかせたのか』(と言われかねないので)財務省だって忖度するでしょう」
福山哲郎元民進党幹事長代理(3月6日、参院予算委員会)
「忖度するという形で、政府などが破格の優遇をしたのではないのかという問題はますます深まってきた」
山井和則国元民進党対委員長(3月10日、記者団に対して)
「忖度以前のゼロ回答だったと思う」
菅義偉官房長官(3月23日、記者会見)
「昭恵夫人が私と2人きりの状態で『どうぞ、安倍晋三からです』というふうにおっしゃって、寄付金として封筒に入った100万円をくださいました」
「もうアヒルの水かき運動のごとく、(財務省に)何回も何回も何回も行かせていただいて…」
「事実は小説よりも奇なりであります。私が申し上げていることが正(ただ)しゅうございます」
籠池泰典社会福祉法人肇國舎代表(3月23日、国会証人喚問にて)
国会証人喚問で虚偽の発言をすれば偽証罪に問われる可能性があるにもかかわらず、堂々と言い切っています。大したお方です。
大したついでですが、面白ネタの宝庫でもあります。
「良き天気。心安らかなり」
「日本の夏 蝉の声 いま静かにして 木の下に宿れるなり 我が心 その宿れるなりと同じき 安き心にある」
「行ってきます」
「お父さん、かっこいい」
籠池泰典社会福祉法人肇國舎代表、詢子夫人(7月31日、大阪地検特捜部出頭直前)
27日にも一句詠っていたそうですが、そちらは発掘できませんでした。たぶん、学園予定地に埋め戻したのではないかと。それよりも私が気になったのが、27日ころのニュースでコーヒーを飲んでいたマグカップで、この31日はそうめんのつゆを入れて、昼食を取っていました。なかなか上手いやり方をするものだと感心しました。大阪の方では流行っているのかと、そちらの方が気になりました。
「排除いたします」
小池百合子東京都知事(9月29日の定例記者会見会見で希望の党への民進党議員合流について)
今年の衆院選で鳴り物入りで登場した希望の党のまさかの大失速により、与党・自民党の圧勝となる、G党ファンにとっては羨ましい展開になりました。希望の命運を決めた決定的な瞬間と指摘されているのが、この〝排除発言〟です。民進党からの合流組の一部を「排除いたします」と笑顔で言い切った姿がテレビで繰り返し報じられると、小池都知事や希望の党のイメージは一気に悪化してしまいました。希望の党とはいったい何だったのか。森友・加計門と並ぶ、2017年三大政治ミステリーの一つとなりました。
「風雪に 耐えて5年の 八重桜」
安倍晋三首相(4月15日、東京・新宿御苑での「桜を見る会」で、第2次政権が5年目に入ったことに絡めた自作の俳句)
「プレバト!!」(TBS系 木曜午後7時)の俳句コーナーの夏井いつき先生に添削してもらうまでもないでしょう。「季重なり」で「切字」もありません。大体からして「風雪に耐えている」のは国民なのです。
政治の世界は時に身内の言葉で足を引っ張られ、時に他人の言葉で足場を失う魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する世界。ただ、政治の世界から聞こえてくる「迷言」からは、風雪に耐えたことの重みはみじんも感じられないのは、私だけでしょうか。