「デイ・アフター・トゥモロー(The Day After Tomorrow)」は、2004年5月24日(日本では2004年6月5日)に公開された米国映画です。
地球温暖化により、南極大陸の棚氷が融け始めた。棚氷の調査中にその光景を見た気象学者のジャック・ホール(演;デニス・クエイドさん)は、温暖化によって極地などの氷が融解して真水が海へと供給されることで海水の塩分濃度の変化が起こるなどした結果、海流の急変が発生し、これが将来的に氷河期を引き起こす可能性を考え、危機を訴えたが、実感のなさから、米国副大統領などには相手にされなかった。
しかし、その数日後から世界各地で異常気象が頻発し始めた。東京では巨大なひょうが降り注ぎ、ロサンゼルスは巨大な竜巻によって壊滅し、英国ではスーパー・フリーズ現象によってオイルが凍結して空軍のヘリコプターが墜落。ジャックの息子と友人のいるニューヨークには豪雨と巨大な高潮が押し寄せた。そして、ジャックの予測した将来的に起こるはずだった氷河期が到来するのであった。
私はこの映画は映画館では観ず、後日、DVDで観ました。
「デイ・アフター・トゥモロー」では急激な気候変動を引き起こす要因とされたのが、「大西洋南北熱塩循環(Atlantic Meridional Overturning Circulation:AMOC)」と呼ばれる大西洋海流の循環システムです。この海流は、赤道付近の温まった海水を欧州や北大西洋に運び、欧州西部の穏やかで温暖な気候をもたらしてくれる役目を担っています。
映画では、AMOCが完全に停止したことで、ほぼ一夜にして氷河期が始まってしまいます。一夜にして地球全体が寒冷化するというのは、映画ならではの話ですが、実際のAMOCについても気候変動の結果、循環が停滞し始めている可能性があるそうです。
これは、ドイツのポツダム気候影響研究所が2021年8月5日付で発表した論文の中で、AMOCが重要な転換点にさしかかっていると結論づけています。北極周辺の氷が融解した結果、限界を超える量の真水が大西洋に流れ込むと、AMOCが今後「突如として停滞」し、不安定化する可能性があるとのことです。
また、国際連盟の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)」が発表した気候に関する報告書も、AMOCが21世紀末までに停滞する可能性が非常に高いと指摘しています。
AMOCの停滞は欧州での気温の低下を引き起こし、さらに北に行くほど気温低下は激しくなるとのことです。そして、米国東海岸では、AMOCの停滞で海面が上昇すると考えられ、アフリカの中部および西部の一部地域は恒常的な干ばつ状態に陥ると考えられています。
これはAMOCが温かい海水を英国周辺の海域に運び、その後、冷やされてグリーンランド海、アイスランド海、ノルウェー海の底に沈みます。この冷えた海水はUターンを始め、海底を蛇行しながら南極海へと流れていきます。この海水の流れが停滞して弱まると、熱帯の温かい海水が北上しなくなるため、英国周辺の海水は冷たいままになってしまうからです。
そして、AMOCの循環速度は、塩分を含む海水と真水とのバランスによって決まっていて、現在、グリーンランドの氷床や氷河が継続的に融解しているため、塩分を含む表層の海水に混ざる真水の量が増え続けており、その結果、この海域の海水は塩分濃度が下がって軽くなり、沈みにくくなってしまっているのが原因と考えられています。
ポツダム気候影響研究所は、AMOCに由来する寒冷化がたとえ起きたとしても、映画のように、あっという間に地域全体が凍りつく事態は起きないとしていますが、寒冷化は数10年をかけて発生するとも指摘しています。
一方でAMOCの循環が元に戻るには、数100年から数1000年の時間を要するとしています。
映画においては、当初、ジャックの報告と非難の要請に対して誰も耳を貸さず、その結果として避難が遅れ、米国の北半分の国民の生命が絶望的となってしまいました。
現在、グリーンランドやロシアでは前例のない速さで氷河の融解が進んでいます。
映画の世界が現実となる可能性が起こっています。
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