「野球の神様は見ている」
3195日ぶりのプロ2号ホームラン。3578日ぶりの本拠地ヒーローインタビュー。5月18日に福岡ソフトバンクホークスの城所龍磨選手が一躍時の人となった。交流戦でブレイクした、プロ13年目の選手です。
愛知県出身の30歳。幼少期には実家近くにトヨタ自動車工業サッカー部(現; 名古屋グランパスエイト)の本拠地がありサッカーに夢中になっていましたが、小学校三年生時から野球を始め、中学校では野球部に入部すると同時に硬式野球チームにも所属していました。岐阜・中京高校時代には、一年秋から1番・センターで出場し、二年夏と三年春に甲子園に出場。2003年のドラフト会議で当時の福岡ダイエーホークスからドラフト2巡目指名を受けました。
昨年まで一軍出場は589試合で通算安打は48本、ホームランは1本。しかし、俊足強肩で守備固めや代走要員として過ごしてきました。それでもチームでは人気があり、城所グッズのTシャツやタオルマフラーが売られており、似顔絵とともに「キドコロ待機中」というコピーが付いています。
しかし、城所選手だってスーパーサブの立場のままでいるつもりもなく、レギュラー奪取のためには打てなければ話にならないと考え、思いきって変わることが必要だと思い、三年前にジムに通い詰めて筋肉ムキムキの身体に改造しました。
ですが、結果を出すどころか、昨年は一軍出場わずか1試合に終わってしまいました。まず2月にオープン戦の初戦で左腕にデッドボールを受けて骨折。出遅れた焦りもあって今度は右ふくらはぎを痛めてしまいました。ケガからの復帰後、8月にやっと一軍昇格したものの、最初の試合で三塁盗塁時に左肩を亜脱臼し、手術を受けました。
今年1月、毎年恒例となっている西岡剛選手(阪神タイガース)らとの自主トレが大きな転機となりました。「西岡さんのトレーナーの方に言われたんです。『城所くんはスピードを生かしたプレースタイルだ。筋肥大になったボディビルダーみたいな体は違うと思う。トレーニングを見つめなおそう』と」のことです。
パワーを追い求めて身体を大きくしたのですが、それは自分に合ったスタイルではなく、バランスを崩した結果、ケガの原因になったのではないか。トレーニングは身体を強くするほかに、ケガの予防のためなのにトレーニングを頑張ってケガをしたら意味がないということに気付いたそうです。
パワー = スピード × 筋量
これは筋肉量が落ちてもスピードが上がれば、結果的にパワーは上がるということです。だから身体の切れ増すために、瞬発系のトレーニングを重点的に行うように切り替えました。ただ、今まで身体を強くするトレーニングをあまりやっていなかったこともあり、基礎体力や基礎の筋肉をつけたおかげで、今の考え方の練習が出来たと言っています。急がば回れと言うことです。
若手の頃、当時の王貞治監督(現; 福岡ソフトバンクホークス会長)が「ウチの若手で一番飛ばす力があるのは城所だよ」と言っていたそうですが、何でも器用にこなせるのがアダとなり、結果を出せなければ、すぐに違うものを追い求めてしまう。能力があるからある程度出来るが、結果的にはどれも中途半端となってしまい、時間だけが過ぎてしまったそうです。
「藤井(康雄)コーチをはじめ周りの指導者の方のアドバイスを素直に聞き入れて、1つの道を突き進もうと腹をくくれたのは、ようやく一昨年あたりからです。それからずっと同じ考えでやってきたのが、今の結果に繋がっていると思っています」
交流戦が終わった翌日は完全オフだったそうですが、ヤフオクドームには城所選手の姿があったそうです。2013年のオフから丸一日休んだことはなく、「やって駄目なら後悔はない。やらなかったら後悔しかない」とのことで、「キドコロ無休中」とのこだそうです。
交流戦首位打者となる打率.415、ホームラン5本、12打点でMVPを獲得。
工藤監督は交流戦での城所選手の活躍について、こうコメントし称えていました。
「練習に行くと(他の選手は休日でも)必ず彼の姿があった。野球の神様は見てくれていると思った」
努力を続けること、遠回りでもあきらめないこと。そういう姿を野球の神様は見ているのでしょうね。