ギャラリー柳水(りゅうすい) 日々のよもやま

40年以上を陶磁器とともに過ごしてきました。
見て美しく使って楽しい陶磁器の世界をご紹介いたします。

寛次郎の流描(ながしがき)

2020年06月14日 | 日記
鉄薬の上から黄色い釉薬をかけ、乾かないうちに竹串で黄色い釉薬を引っ掻く。
すると筆では描けない自然な線ができる。
一時英国に渡っていた濱田庄司が帰国して、河井寛次郎の家に滞在していた時に
濱田から教えてもらった技法だ。

紙を染める技法で墨流しがある。
水面に染料を浮かべて、息を吹きかけたり、竹串で動かしたりして模様を描き、
紙をかぶせて転写させる。
イタリアのマーブル紙も同じ方法

どちらも液体の流動性を利用した装飾技法

もうずっと前のことになるが、陶器の山を買った。
その中にはひょっとしたら寛次郎のものかもしれない流描の皿があった。
本物か偽物かわからないときは、自分にとっていい方向にしか考えない。
疑いを持たないように、これは本物、これは本物と、自我がささやいてくる。

しかし数日ながめていると、だんだん偽物だとわかってきた。
線が硬い。こんなやわらかい曲線ではない。
よくよく見ると、どうも黄色い釉薬の部分が均一に盛り上がっている。
流描に似せた黄色の粘土の薄い層を貼りつけていた。
これ1枚だけが置いてあったら、よく見もせずに買っていたかもしれない。

ネットで売られる品物を見ていると、怪しげな作品が実に多い。
一見、流描の皿を見かけるたび、あの貼りつけ文の皿を思い出す。
流描の皿は、線の躍動感に注意して見てほしい。

(写真は河井寛次郎の茶碗の模様の部分を拡大したものです) 



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