忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

ガチコメ的「レンコンの穴」

2008年03月09日 | 過去記事
■2008/03/07 (金) ガチコメ的「レンコンの穴」1

12~3年前の年末、私はとある卸売市場の「せり場」にいた。

外はまだ真っ暗。先ほど「卵とじうどん」と「おでん」と「熱燗」を摂取していなければ死んでいるだろうという寒さであった。しかしながら、この場は熱い。オサーン連中が声を張り上げ、正月商品の買い付けに目を血走らせていた。熱気ムンムンである。

「路地もん」と呼ばれる野菜などは、私自らが「手を入れて」買い付けるのだが、ここでは「仲買」のオサーンの独壇場である。番号の書いてある帽子をかぶれば私でも買えるのだが、普段はともかく、今日は戦争状態であるから「プロ」に任せる。

今日の私の狙いは「れんこん」であった。通常の相場ならば、徳島産で5キロ3500円とか5000円くらいだろうか、肉厚が薄く細かい「じゃみ」と呼ばれるものならもっと安かった。私は「じゃみ」が大好きでよく大量に買い付けて儲けさせてもらった。中には気前のいい農家の人もいるのだろう、多くの「じゃみ」の中には、よくよく「良いもの」が混じっているのであった。それを選別して取り出し、そのときの相場に合わせた価格で売るのであった。「じゃみ」だけで原価償却できる価格であれば迷わず買ったものだ。

ともかく、その「れんこん」が倍以上の相場になるのだ。価格はともかく、最悪は「買えない」ということである。正月が来るのに「れんこん?ありませぬ。」では商売にならん。お客様に怒られるから、私の早起きも仕方あるまい。

その年は、近年まれに見る不作であった。少ないしモノも悪い。私は売る前から「絶対に足りない」と分かるほどの量の「れんこん」を前に困っていた。高いし悪いし少ないし・・・

当時、20代半ばだった若き私は、早朝の卸売市場をフラフラと野良犬というか、野犬と一緒に歩いていた。そういえば、こいつらに囲まれて死ぬかと思ったこともあったなぁ・・・と茫然自失で歩いていると、いつもいつも、若き私を騙す仲買のオサーンが話しかけてきた。このオサーンにはいつも「安かろう悪かろう」の代表みたいな商品を掴まされ、その都度、文句を言うのだが、いつもいつも、この笑顔と講釈に騙され、またまた引っ掛かるのであった。

「お困りですね?」

いつもと違うキャラで迫ってきた。今思えば、ここで気付くべきだったのだ。

「2」へ

■2008/03/07 (金) ガチコメ的「レンコンの穴」2

冷蔵庫に連れて行かれる。

「ターレット」と呼ばれる電動の台車に乗り、国道を越えて着いた先は巨大な冷蔵庫である。その片隅に分厚い段ボールの箱が山積みとなっていた。

『なに?これ?』

不安がる私を見ながらオサーンはニヤリと笑う。

「はす(れんこん)やんか。国内産あらへんやろ?」

『どこのん?』

「ちゃい。ちゃいやけどな。」

もうお気づきだろう。

「ちゃい」とは「チャイナ」の「ちゃい」である。

ノンポリだった私は抵抗することもなく、興味津々で箱を開けるオサーンの後ろに立っていた。箱が開いて中からは「ポリタンク」が出てきた。なにやら「黄色い液体」の中に「れんこん」らしきものが見える。なるほど。これが中国産のレンコンかぁ・・・

オサーンがおもちゃ箱を開けるように「じゃぁーん!」とか言いながらタンクの蓋を開けた。途端に広がる異臭。オサーンはためらいもなく「レモンの匂いやろ?」と言い切った。若き私は、こんなレモンがあったら保健所に通報するわいと思ったが口には出さず、ただ見ていた。すると・・・

オサーンが取り出した「れんこん」は見事な肉厚であった。立派だ。なぜだか「節」が全て切られているのも気にはならなかったし、価格のほうも「相場ってなに?」というほどぶっ飛んだ安さであるし、なにより、私の頭の中にはもう、店の青果コーナーの売り場が広がっていた。

「今がチャンス!正月用レンコン・100グラム98円!!売り切れごめん!!店長真っ青!命がけ特価!!」

これはすごい。これは地域のお客さんも喜んでくれるだろう。まさに地域のオピニオンリーダー私。大型スーパーなんのその!奥さん!!毎度おおきに!!

「3」へ

■2008/03/07 (金) ガチコメ的「レンコンの穴」3

・・・・が、一瞬、不安がよぎる。

今思えば、この不安を大切にすべきだった。私の本能、野生的な直感、経験からなる気づきレベル・・それにこのオサーンには先月、小指の先ほどの人参を馬に食わせるほど買わされて、でかい袋にパンパンにいれて「69円」とかで売ったら、地域の奥様連中に「なにこれ?かわいー!」と笑われてまったく売れず、涙目の私自らがゴミ捨て場に台車で運んで捨てようとしたら、近所の小学校のウサギを思い出してフラフラと運び、純真な小学生達に「おっちゃん、ありがとお!」といわれてウサギに手を振りながら後悔したばかりではないか。しかも全部、私が『お買い上げ』である。今思えば、あの「岐阜産」と書いてあったのも怪しい。あのオサーンが書いた可能性はないか?ニヤニヤしてたし・・・

「部長も買ったで?早く押さえとかな、もうすぐ取り合いが始まるで?」

決め手だった。私の商売の師匠でもあるあの「加工部部長」が買ったというのか。商品の見極めは天下一品、細工は一流、家は三階建て、嫁さんも若く、子供は三人である。私がひとり暮らしの貧乏時代、飯も食わせてくれたし、なんと、冷蔵庫を買ってくれたではないか。ならば、間違いなかろう。それにこのオサーンも、先月のウサギの餌を詫びる気持ちで私に見せているのだろうし、人様の親切を疑うとはなんたる在日根性か。決めた。

『くれ。とりあえず今日、10ケース。明日10ケース。今後の入荷状況はどうかッッ!』

オサーンはニヤニヤした。

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http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080131-1068087/news/20080306-OYT1T00663.htm
<中国野菜輸入4割減、ギョーザ事件影響?キャベツ66%減>

日本の国土面積の7倍にも達した砂漠は、毎年毎年、200平方キロメートル、つまり「富山県」の面積くらいずつ砂漠化は広がっているらしい。北京の北80キロにまで砂漠は迫っている。マジで、どうするつもりなのだろうか。また、数センチもの毒砂が積もる北京の交通整理をする警察官の平均寿命はなんと49歳。支那大陸は毒で覆われているのだ。

そのような大陸から、生鮮野菜と称した膨大な毒が日本に流れ込んでいるのだ。私が驚いたのは「キャベツ」や「レタス」などという「生で食する可能性のある」野菜までも、大量に輸入していたということである。少なくとも、先ほど「れんこん」で騙されかけていた私が卸売市場に出入りしている頃はみなかった種類である。

「4」へ

■2008/03/07 (金) ガチコメ的「レンコンの穴」4

あの頃は「れんこん」や「小芋」、「ごぼう」や「人参」などの根菜のほか、「しいたけ」や「マツタケ」などのキノコ類、あとは「ブロッコリー」や「白ねぎ」くらいだろうか。

私はこの「レンコン事件」から「中国」と書いてあるものには近づかなかったから、よく知らんだけかもしれんが、今ほど多種にわたって輸入していることはなかったと思う。おそらくは爆発的に増えていたのだろう。この先、10年ほどすれば日本人のカラダに異変が起るかもしれない。

とくに「しいたけ」などは、店で袋を開けると、ちょっとした「異臭騒ぎ」になった。なんとも耐えがたき悪臭であった。もう、なんか、「絶対に口にしてはいけない匂い」が充満していた。後に「原木栽培」された「日本向け」と思しき「どんこシイタケ」がみられたが、それもかすかに「異臭」がしたことを記憶している。それに、普通の国内産のシイタケならば、日にちが経過するとシイタケの裏面が赤く変色し、時期にもよるが全体的に水っぽくなったり、シイタケの「かさ」の部分が黒く変色するのであるが、この「ちゃいしー」(※支那産のシイタケの隠語?私の周囲ではそう呼んでいた。)は、日が経過してもそういう変化は見られなかった。ただ、そのまま小さくなり「臭い乾燥シイタケ」のようになった。だから、みんなでわろた。

他のものも、国内産と比してどこか変だった。「れんこん」や「小芋」は粘りもないし、切っても糸が引かない。白ねぎはまるで「まるめた紙」のような感じだったし、「ごぼう」や「人参」は古くなると白く細い根が生えるのだが、それもない。「ブロッコリー」なんかも、国内産ならば、若干「萎びた」としても、その茎を薄く切り、発泡スチロールに水を張り、そこに立てたまま冷蔵庫で1時間でも置いておくと、水を吸ってシャキっと生き返ったのだが、支那産はフニャフニャのままであった。だから捨てるしかなかった。

「5」へ

■2008/03/07 (金) ガチコメ的「レンコンの穴」5

妙な言い方だが、普通の野菜は畑から採った後も生きているが、支那産の野菜は「死んでいた」のではないかと思う。薬品で殺されているような感じだった。

つまり、支那産の野菜は「死後」に起りえる変化をみせるのであろう。国内産の野菜は、それこそ真冬でなければ店内の温度にも耐えられない。すぐに痛んでくるというのが常識だった。管理が難しかったのだ。ところが、支那産のもの、例えばシイタケなんかは冷蔵装置付の陳列台でなくとも、真夏の店内であっても耐えてみせた。いや、耐えたというか「死体」だったのである。なんともないはずだ。死んでいるんだから。

しかし、それを食べ続けた人間が、なんともないことはないだろう。

これは将来的に大問題となるのではないか。考えるのも薄ら寒いが・・・

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「レンコン」の穴は8つ。

しかし、大陸から来たこいつには通じない。
6つとか5つとか10とか、個性豊かな穴の数を誇る。

「腐ったレモン」の水から出すと、隆々とした肉厚が艶々と光る。うむ。売れそうだ。

国内産のものは包丁を入れると、ぱきっ!という感じがする。切り離す際にも、しぶとく糸を引いて生命力を感じる。食べる前からしゃきしゃきした食感が想像できるはずだ。

ところが、大陸から来たこいつは違う。なんというか、肉厚からは想像もできない、ぼそっと、もちっと、する感覚だった。先ほどから鼻をつまんでいるパートのおばちゃんが、「幸田シャーミン」のような声でフォローする。

「もっちりした・・・感じやね・・・。」

とりあえず、加工してみる。大きめにカットして・・・木目調のトレーに入れて・・・檜葉なんかを飾ってみて・・・金色の「特選品」のシールを貼って・・・

「6」へ

■2008/03/07 (金) ガチコメ的「レンコンの穴」6

見た感じはグッド!!それにこの値段!!私のセンスも光る!!

プリンターを貼る。ここにも私のセンスは光っていた。

「中国特産品・蓮根(特選)」

うぅ~~~~む。あまりくどくもなく・・・あっさりとしすぎてもいない・・・さりげない高級感と自信たっぷり感・・・そして決めてはこの価格であろう。完璧だ。

「店長!!レンコンがなくなりそうです!!」

よっしゃ!!おばはん!!ちゃいレンコン切れっっ!!

全部だしてしまえっ!!売ってしまえっっ!!

うぇーはっはっはっはははっはっは!!

・・・っと・・・部長から電話が入る・・・ったく、この忙しいときになんなんだ。

「あのチャイレンコン出した?もう出したか??」

あったりまえではないか。すごい勢いで売れているわい。うぇーっはっは。

「あれ、ヤバイ。紫に変色する。空気に触れると変色するねん!」

う、うぇーはっは・・・は?

「すぐに引き上げたほうがいい!!俺のところもいま、すごい数のクレームが・・」

頼むよ。師匠・・・。

すぐに引き上げたが、もう、半分くらいは売れていた。市場のオサーンにも電話を入れて、明日の分はいらないと告げた。もちろん、今日の分も返品扱いで処理させたが、もう、売ってしまったモノは仕方がない。そして、その「物体」は、次の日を待つまでもなく、変化を遂げた。なんともまあ、科学的な毒々しい紫色・・・皮を剥いても中まで紫色・・・

部長は80ケースほど抑えていたという。
弘法も筆の誤り。河童の川流れ。辣腕部長に支那産。

欲に目が眩んだ日本企業よ。

笑えないだろう?

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