方方日記(1月27日) 日本語訳
皆さんの武漢や武漢市民に対する関心や心遣いに、引き続き感謝。私も引き続き、事実を伝えていこうと思う。
現在、大きな問題は、多くの人があまり心配しなくなったということだ。心配しても意味がない。感染していなければ、楽観的だ。
目下のところ、市民が憂慮しているのは、相変わらずマスク不足のことだ。今日、ある動画を見た。ある上海市民がマスクを買いに行くと、薬局で1枚30元(訳注:約450円)で売られていた。これに彼は怒り、スマートフォンで全てを記録し、薬局を指弾した。しかも、どうしても買う必要があるため、領収書を要求した。彼は、私よりずっと賢いし、ずっと勇気もある。敬服した!
マスクは消耗品で、使用量も多い。また、専門家の話では、ウィルス防止に効果的なのはN95マスクだけだそうだ。しかし現実では、この様なマスクは全く買えない。オンラインで買ったとしても、届くのは旧正月明けになってからだ(訳注:感染拡大を受けて期間は延長されたが、当初の予定では1月24日から1月30日までが旧正月の法定連休だった)。弟(訳注:年下の男のいとこだと思われる)は幸運だ。彼らの団地では、ある家族の親戚が1000枚ものN95マスクを送ってきてくれたのだ(なんて良い親戚だ!)。弟の家族は、10枚を分けてもらった。「心の優しい人はいるんだよ」と彼は感慨深そうに話してくれた。しかし、兄(訳注:年上の男のいとこだと思われる)の家でこんな幸運はなかった。彼らは、N95マスクを1枚も持っていない。ただ、私の姪が持ってきた使い捨てマスクがあるだけだ。こんな状況で、数も限られている。こうなると、家で洗い、アイロンで高温消毒し、再利用するしかない。これでは少し惨めだ(そういえば、シンガポールのチャーター機の件だが、姪の話では、まだ最終確定に至っていないようだ。Weiboで触れてほしいとのことだったので、ここに報告する)。
私自身も、大して変わらない。1月18日はお見舞いで病院に行く必要があり、どうしてもマスクをしなければならなかった。しかし、家には1枚もなかった。突然、あることを思い出した。12月中旬に成都へ行った時、後輩の徐旻君が「成都は空気が悪いから」と言って、私にマスクをくれたのだ。実のところ、武漢の空気も良くはないので、私は悪い空気に慣れていて、徐君からもらったマスクは使っていなかった。今回は救われた。幸運なことに、それはN95マスクでもあった。私はこのマスクで病院へ行き、空港へ行き、マスクを買いにも行った。何日もこのマスクを使っていたが、これは仕方がない。
私の家には、私のほか、16歳の老犬がいる。1月22日の午後、ふとドッグフードが無くなっていると気付いた。急いでペットショップへドッグフードを買いたいと連絡し、ついでにマスクも買ってこようと考えた。そこで、家から近い東亭路の某薬局へ行った(薬局の名前は出さなくてもいいだろう)。ちょうどN95マスクはあったが、1枚35元(訳注:約525円)だ(上海より5元も高い)。1袋は25枚入りで875元(訳注:約13,100円)。私は、この様な時になぜこう腹黒くなれるのかと言った。彼らは、卸業者が値上げをしたので、自分たち小売りも値上げするしかないと答えた。急を要しているので、高くても買うしかない。私は、とりあえず4枚だけ買い、また考えることにした。ここのマスクは個包装ではないため、なんと、店員は手で直接つかんだ。これを見て、こんな衛生条件なら、つけないのと変わらないと思った。結局、私はマスクを買わなかった。
大晦日(訳注:旧暦)の日、私はまたマスクを買いに出かけた。全ての薬局は、閉まっていた。ただ、家族経営の小さな売店が開いているだけだった。ある売店で、N95マスクを見つけた。ブランドは「沂蒙山」で灰色、個包装。1枚10元(訳注:約150円)。4枚を買った。ようやく気持ちが少し落ち着いた。兄の家にマスクがないと分かり、2枚を明日には届けると約束した。しかし明日になると、やはり外出は避けろと兄は言う。不幸中の幸いだろうか、外出はしないので、マスクもあまり使わないのだ。
先程、同僚とWeChat(訳注:中国のSNS、LINEと似ている)で話をした。多くの人が、現在の最大の問題はマスクであると言う。結局のところ、たまには外に出て、買い物をする必要がある。ある同僚は、友人が郵送してくれたが、届かなかったとのことだ。また、非正規品を買ってしまうこともあるそうだ。インターネット上でマスクを回収し、処理を施してまた売るという例もあり、こんなのは使う気にならない。誰もが1~2枚しか残っていない状態で、お互いに励まし合うしかなかった。大事に使おうと。ある笑い話は、全く的を射ている。マスクは豚肉に取って代わり、年越し(訳注:旧暦の)で最も売れ筋の商品となった。
私は、マスク不足が兄や同僚たちだけのことではないと考えている。武漢の一般市民たちは、多くがマスク不足であると思う。また、私はマスクが足りなくなっているのではないと信じる。足りないのは、市民の手元へ届ける方法だ。ここに来て、ただただ運送会社が早く通常勤務に戻り、武漢の物資に対しては対応速度も上げてほしいと願う。危機の克服を助けてほしい。(訳注:旧正月の連休中は運送会社も休むため、物流には大幅な遅れが生じてしまう。)