
先月NHKホールで4日連続開催された小椋佳生前葬コンサート特集を、NHK・BSプレミアム録画で見る。生前葬コンサートとは小椋佳さんらしいと思っていたが、軽妙なしゃべりとすばらしい歌が聴けて感動した。
彼は今年70才、元銀行員、音楽大好きという点では私と同じであるが、スケールがまるっきり違うことは勿論承知している。しかしながら、2000曲以上と言われる彼の作詞、作曲の源はどこからくるのか知りたいものである。ちなみにコンサートでは一日25曲、四日間で100曲を唄ったようである。
この特集を聴いていて、知らなかった歌も多かったが、彼の20代からの年齢に応じた感性が其々の曲に迸る。いまこの年で同じ詞を作れるかどうか凡人の私には到底無理と思ってしまうが、類まれな彼の感性であれば、幾つになっても作詞作曲が出来るんだろうと敬服してしまう。
録画の前篇で興味をひく「ひたすらに」という歌があった。字幕に作詞大宅歩・小椋佳とあったので、すぐに私が生涯何度も読み返している大宅歩の遺稿集「ある永遠の序奏」を捲ってみた。あったあった、同名の詩が歌の一番分だけ書かれていた。小椋佳が私の最も愛読する本をおそらく読まれていたのかと思うと嬉しくなってしまった。
彼の歌を時々唄うことがある。「白い一日」「シクラメンのかおり」「山河」「少しは私に愛をください」「愛しき日々」などである。しかし、この特集で最も印象的だった曲は「あなたが美しいのは」で、彼の息子が14才で脳梗塞を発症、植物人間状態のある日、父親として息子の枕元でこの歌を唄ったら、息子が一字の間違いもなく口ずさんだという。
この時から懸命にリハビリを続けて10年後、健常者として結婚もして普通の生活をしているという。親の愛が通じた奇跡の出来事で、小椋佳にしてみれば、音楽家として歌手として冥利に尽きることだったと思う。
70才という年齢は、古来稀ではなくなってきていると思う一方で、いつ死ぬかもしれないという年代に入っているのも確かなことである。小椋佳も胃がんを経験している。
今日私はこれから故郷浜松に行って、高校吹奏楽部同期13人で51年ぶりに会食する。幹事を買って出たこともあって、唯一人病気を理由に欠席するY君に、様子をうかがおうと昨日電話してみた。13年前に脳出血で左半身が不自由になったとのこと。声はややたどたどしい部分もあったが元気そうだった。今夜の集合写真をY君に送ってあげたいと思っている。
テレビ画面のすぐ横にハチの絵や写真が見える。小椋佳さんの歌を聴いていて、ハチのことを思い出したりしてちょっぴり涙ぐんでしまった。
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