鎌倉 海蔵寺
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さえ吹きすぎる
汚れつちまつた悲しみは
たとえば狐の革裘(かわごろも)
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる
汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがうなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠(けだい)のうちに死を夢(ゆめ)む
昭和の詩人、中原中也の処女詩集『山羊の歌』(昭和9年)に収録された有名な詩である。中原中也は若くしてこの世を去ったため、詩集は二つだけしか出版されておらず、もう一つは中也の死後出版された『在りし日の歌』。
ネットの説明を借りれば、「小雪」「風」で自然の冷たさや寒さをうたい、悲しみを表現している。そしてそれを「今日も」という。自然の冷たさや比喩の表現、それから内面の心情がよく出ている。
倦怠(ケダイ)とは、倦怠(けんたい)と懈怠(けたい)を重ねた表現で、懈怠とは行為をなまけること。そして何を望みもせず、死を望むのでもなく、死を夢みている状態と説かれている。
詩のタイトル『汚れつちまつた悲しみに』に惹かれ、とくに終わりの3行『なにのぞむなくねがうなく 汚れつちまつた悲しみは 倦怠(けだい)のうちに死を夢(ゆめ)む』は、いつぞやの自分を表しているようで胸にグサッとくる。
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