厳寒の朝、羊皮のハーフコートに身を包み、皮手袋とハンチングで最寄りの乗車駅まで歩いていると、前から乳母車で来た80代後半と思しきご婦人から、「寒いですから風邪をひかないようにお気を付け遊ばせ」と、丁寧な口調で声をかけられた。
言われた自分が、いうべき言葉かもしれない優しい声掛けに、嬉しくもあり、人に優しくして生きることの大切さ勇気をもらったような気がした。
83才で亡くなった母を思い出す。このご婦人と同じように、乳母車を押して歩いていた人で、道すがら他人の家でも雑草が生えていると黙っていられない性格で、草取りをすぐさま始めるような人だった。
いつからか「草取り名人」「草取りばあさん」などと揶揄されたこともある。母の葬儀で喪主を務めた時に、最後の挨拶でこのエピソードを話したことがある。20年もの長い間、息子二人の面倒をみてもらった感謝の言葉を連ねる中で、いつの間にか嗚咽してしまった自分を思い出す。
このご婦人のように、母は人に優しい人だった。父との別居生活が長かっただけに、私と息子との生活はある意味倖せだったのかもしれない。このご婦人のように、また母のように、人に優しい人になりたいと思う。
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