佐賀県 大興禅寺 日天
NHKテレビ「人生の終い方」録画を見る。落語家桂歌丸師匠がナビゲーターを務め、80歳の痩せ衰えた体から絞り出すような声で番組を引き立てる。
歌丸師匠はつい先日、50年出演し続けた「笑点」の司会を後進に譲ったばかりであるが、今も長時間古典落語を高座でやってのける。あのパワーの源は気力だけとしか思えない。今を一所懸命生きることが、歌丸師匠の人生の終い方だということ。
若くしてご主人を末期がんで亡くした親子、夫婦の話、50年も居酒屋をやってきた90歳と66歳の独居の母子で、認知症気味の娘を残して逝った母親の話など、この番組に寄せられた手紙は500通にもなったという。
人生の終い方は人それぞれ、終い方も何もできないで突然死ぬ人もいる。死ぬとわかっていても、家族に何をどう伝えたらわからない人も多いと思う。この番組で放送された、余命わずかな父親と小学生の姉弟のように、お父さんの最後の姿を子供たちが、しっかり受け止めていたが、内心は想像を絶する悲しみと寂しさが交錯していたのだろうと推測してしまう。
私の前妻が末期がんで余命1ケ月と言われ、亡くなるまでの4ケ月ただひたすら延命と救命を祈るのみであった。ガンの告知をしなかったことが、いまでもよかったのかわからない。もしも余命が告知されていたら、3歳と生後3ケ月の息子に、この番組のように親としてのメッセージを残してくれたのかもしれない。
私の場合は、妻の死後殆ど息子に母親の話をして来なかった。話をしたらかえって息子たちが寂しい思いをするだけと思っていた。もっとも私が話さない分、育ててくれたおふくろがかなり母親のことをしゃべっていた。このことに反発しておふくろと喧嘩したこともあった。
いま、もしも自分が末期がんになったとしたら告知してほしいと思う。好き勝手して生きてきた父親として、何もしてやれなかった息子たちに詫びたいし、感謝の気持ちを家族に素直に伝えたい。
前妻が亡くなったのは27歳、それからすれば45年も長く生きてこられた。いつ死んでもいいくらいだが、今のカミサンや、息子たち家族のことを思うと、まだまだ生きて生きつづけて、やり残したことをコツコツやっていくことが、私の人生の終い方だと思っている。
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