ノーマン・マクリーン
渡辺 利雄訳
集英社
★★★
北西部モンタナの渓流での鱒釣りを背景に
展開する家族の絆の物語。
不器用で堅実な兄、ノーマン。
フライ・フィッシングの名手ながら、
新聞記者としての才能も発揮できず、
奔放に生き、破滅していくポール。
ノーマン父子は、終生、
ポールの死について、こだわり続ける。
他の作品に
『マクリーンの渓谷』(全米批評家協会賞受賞)
『マクリーンの森』
ブラッド・ピットの出世作となった
ロバート・レッドフォード監督の
「リバー・ランズ・スルー・イット」の原作。
今世紀初頭の、アメリカへの
ノスタルジア文学としてベストセラーに。
著者は、ワーズ・ワス研究者です。
著者は、アイオワ州クラリンダの
スコットランド系移民の、牧師の家庭に生まれ、
フライ・フィッシングの名手だった父に育てられ、
シカゴ大学で、英文学教授を定年後の74歳で、
自分よりも才能に恵まれながら、
若くして死んでしまった弟の想い出をもとに執筆。
1977年ピューリッツアー賞小説部門の
第1候補になるも、「ルーツ」のジャンル分けの議論
(歴史or小説)の影響を受け、落選。
同年は同賞の受賞作品は「該当なし」に・・・。
物語全体に漂う、フィッシャーマンの誇りが
独特の世界観を、形成しています。
ロッキー山脈の自然を愛し、川を
神聖視するマクリーン家の人々。
物語が展開する場所は、ほとんど
「ビッグ・ブラックフット川」と「エルクホーン川」です。
家族の話題も多いのですが、内容の7割は
フライフィッシングのキャスティングについてです。
前半40ページは、ちょっと退屈です。
50ページで事件が発生します。
ネイティブアメリカンの登場人物も登場し
舞台はにぎやかに・・・。
39~43ページの、フライ・フィッシングの
描写は素敵ですよ。
静寂を楽しみながら、お気に入りの場所で
読みたい一冊。
山肌を、垂直に駆け上がるクマや、
ブラックフット川を泳いで渡るオオアカヤマネコ。
大きなブラウントラウト。
ロッキー山脈の大自然が、余す所なく
描かれています。
ブラックフット川の水底で、泡が立たない程
冷やして飲む「ケスラー・ビール」。
当時は、人口が1万人いる街では、当たり前の様に
地ビールが、作られていたみたいです。
古き良きアメリカへの思慕が綴られています。
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いつも有難うございます。
セリア・リーズ 著
亀井 よし子 訳
理論社刊
★★★☆☆
ネタバレ注意
中世イギリスの魔女狩りから逃れて、アメリカの
入植地(ピューラ)へ渡った、少女メアリーの物語 。
メアリーの実母は、当時としてはめずらしい、
意思の強い聡明な貴婦人でしたが・・・
軍人の家系だったため、夫も舅も出征
してしまい、幾年にもわたる長い長い戦争
の間、メアリーの母は、たったひとりで、
広大な屋敷に取り残されます。
その間に、彼女は、ひとりでメアリーを
出産します。
メアリーは、かつて、彼女の母親の
乳母だった、老婦人に引き取られ
大切に育てられます。
町外れの林の奥で、祖母(育ての親)と
一緒に、静かに暮らしていました。
ふたりは、実母からの仕送りで、
貧しい中でも、安定した暮らしを
することができました。
どうして、働き手もいないのに、
『あんな豊かな暮らしができるのか?』
ふたりの暮らしぶりをねたんだ村人によって、
祖母は、魔女として告発されてしまいます。
当時、身寄りのない女性や、一人暮らしの
娘は、魔女として告発されることが、
多かったようです。
先住民族の信仰(自然信仰)を、
捨てない人々も、魔女として扱われました。
教会の礼拝を、一度も、かかさず通って
いても告発されてしまうのです。
産婆や治療師・薬草の知識に長けた人々も、
魔女ではないかと、疑われました。
『生かす力を持つ者は、殺す力も持っている』と
言うのが、当時の考え方の主流だったようです。
不幸な偶然が、かさなり・・・
メアリーの祖母は、
上記の全ての条件に当てはまる人でした。
祖母は、民間の魔女狩り人
オバダイア・ウィルソンによって、
メアリーの目の前で、
公開処刑されてしまいますが・・・
祖母の、最期の瞬間、メアリーは
謎の貴婦人(実母)によって、
群集の中から、救い出されます。
馬車にゆられ、宿屋で過ごすうちに、
メアリーは、実の母親だと気付きますが、
ふたりは、名乗り合うこともなく、別れます。
命がけの船旅の中で、 清教徒に
変装したメアリーは、同じく、
魔女狩りを逃れて、清教徒になりすました
治療師(産婆)マーサと知り合います。
マーサは、船底で、難産に苦しむ女性
(レベカの母親)を助け、
メアリーは、仮死状態で生まれてきた
男児を蘇生させます。
これって、善いことですよね。
ところが、後に、この事が、メアリーに
魔女の嫌疑がかかる、発端になるのです。
世界中の薬草を集めて回っている、
薬種屋のモース・大工のトバイアス父子
とも、船の中で仲良くなり、三人は入植後、
一つ屋根の下に暮らすようになります。
イギリスよりも、寒い土地でしたが、
暮らしは幸せでした・・・。
ところが、メアリーがジョンソン師の甥(牧師)
の、求婚を断った事と・・・。
レベカが、ジョンソン師の求婚(再婚話)を
断ったことが、かさなって、メアリーの立場は、
危ういものになります。
ジョンソン師の妻は、そのわずか2ヶ月前、
衰弱した体で、無理なお産をして亡くなりました。
5人の子供を残して・・・。
亡くなったジョンソン夫人は、独身の頃、
天涯孤独の身になり、魔女狩り人に追われて、
川底に沈められ、溺死寸前の所を、
偶然通りがかったジョンソン師に、助けられました。
そのまま、赴任先の教区について行き、
ふたりは結婚したのです。
レベカと大工のトバイアスは挙式間近で、
そのことは、村の誰もが知っていました。
もちろん、ジョンソン師もふたりの結婚を認め、
祝福していたのに・・・。
しかも、この時、レベカのお腹には、
トバイアスの子が・・・。
その事実を知った、メアリーは、
泣きじゃくるレベカを、慰め、励まします。
親友として、当然の行為だと思いますが・・・。
ところが、その事を伝え聞いた、ジョンソン師は、
メアリーのせいで、破談になったと、逆上。
メアリーは、ジョンソン師の
恨みをかってしまいます。
間の悪い事は、重なるもので、
ちょうどその頃、オバダイア・ウィルソンが、
魔女を追って、入植地にやってきます。
入植地の近くの森の奥で、魔女の儀式を、
行った形跡が見つかったと・・・。
儀式をした真犯人は、村の実力者の娘でしたが・・・。
集会で、魔女だと名指しされた、メアリーは
ネイティブアメリカンの青年カケスが待つ、
森へと逃げ込みます。
季節はずれの雪が、足跡を消し去り、
メアリーの行方は誰にもわかりませんでした。
数日後に無事出産したレベカは、
生まれた女児をメアリー・モースと名付けます。
メアリーの手縫いの「キルト」は、
マーサに託されました。
やがて、年老いたマーサは、
「キルト」をレベカに、譲ります。
レベカから、娘へと「キルト」は
受け継がれました。
娘のいない時は、長男の妻が
受け継ぎました。
こうして、メアリーの「キルト」は、大切に
代々、受け継がれていったのです。
この「キルト」は、お産の時、母と子にのみ
使うように代々、申し送られていました。
「キルト」をかけてもらった、新生児は、
ひとりも亡くならず・・・
同様に母親も、産褥熱を発症した人は
ひとりもいなかったそうです。
このお話が、どこまでが、フィクションなのか
私にはわかりませんが、
清教徒が新大陸に入植してから、 間もな く、
アメリカ初の魔女裁判が、行われたそうで・・
それには、とても、驚きました。
続編では、森の中で凍えているメアリーを
カケスが発見し、ふたりは、結婚します。
カケスの祖父、白いワシ(シャーマン)は
疫病で亡くした娘(白い小鳥)の花嫁衣裳を
メアリーにおくり、 暖かく迎え入れます。
ふたりの間には、息子(黒いキツネ)も生まれ
メアリーは幸せでしたが、白人との戦争が勃発し
再び、 時代の渦に巻き込まれてゆくのです・・・。
イギリスで「ハリーポッター」を出版した
ブルームズベリー社の、一押しの作品。
世界16ヶ国で、出版されました。
「キルト」の中から発見された、メアリーズペーパー
(魔女狩りを逃れて、中世イギリスから新大陸へと
渡った少女の日記)をもとに書かれたフィクションです。
メアリーズペーパー発見のニュースは、
大きく扱われたので、ご存知の方も多いのでは。
私は、数年前、そのニュースを耳にした時から
読みたかったので、本書を見つけた時は、
うれしかったです。
北米インディアンの暮らしぶりや、
毛皮を用いた衣服、部族ごとの慣習などが
克明に描かれていて、おもしろい。
魔女狩りが公的な機関ではなく、
個人の魔女狩り人によって、行われた
事は、意外でした。
魔女狩り人は、集落を、魔女の危害から
救ったと言う理由で、役場から、
謝礼を受け取るのです。
続編では、本編よりも、巻末にある、
ピューラ(入植地)の村人達の、その後の
消息のほうが、興味深く感じました。
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