それは昨年の9月、姫路旅行を終えて駅の駐車場に留め置いた車に乗ろうとした時だった。
おりしも降り始めた雨に、慌ててトランクにボストンバッグを放り込み、助手席にはショルダーを置いて
エンジンを掛け、発進しようとして
「待てよ、トランクより助手席の方が、家に着いた時、本降りになっていても素早くおろせるなあ」
と思い、そのまま車を降りてトランクのボストンバッグを助手席に移し、助手席側のドアを勢い良く
閉めたその刹那―「カチッ」というイヤな音が聞こえた。
そうなんです、何故か全てのロックが下りてしまったのです。
シマッタ!……なんてシャレを言う余裕もなく
車の側で雨に濡れながら、いま、自分が置かれた状況を把握するに、何秒も必要無かった。
身に付けているものと言えば首から掛けた「携帯電話」のみ、なのである。
最初の車を買った時からJAFに入会し、これまで、一度も利用した事が無かったのに、ついに、ですか。
電話は直ぐに繋がり女性オペレーターさんが言うには
「夕方のラッシュ時故、到着までに40分は掛かりそうです」
と
「実は4年間のお付き合いを今夜限りで解消し、新しい彼女を明朝迎えに行くという段取りが出来ていた
その前夜に、こんな事件が起こるとは……やはり女性である、これまで全然、手もかからず
ずーっと良い関係が続いて来たのに、私の一方的な事情で、お付き合いを解消するなんて言った
から最後に、一寸だけ意地悪が、してみたくなったんだね」
(↑壊れたわけじゃないですからね、車を擬人化しているだけですよ)
高架下で雨を避けながらJAFの救援車を待つ間、そんなことを本気で考えている自分がそこにいた。
程なく、到着したJAFの隊員は未だ、若い方だったが、鍵穴をちょっと見ただけで自車から道具を取り出し
早速、解錠作業を始めた。
『すみません、一寸これを、このまま持っていてくれませんか』
と、言う隊員の段取りの悪さもそんなに気にならず、鍵穴に差し入れられた二つの道具を保持していると
隊員が救援車から持ってきたのは「瞬間冷凍スプレー」だ、これで微妙な位置関係を保持し(冷凍し)
つつ、次のステップ に行くという段取りだったのである、結果は一発で成功。
JAFの会員証を車から取り出し「解錠同意書」にサインを受けると、若い隊員は颯爽と帰って行った。
それ以来、車に乗るときは電子キーをベルト穴に繋げたホルダーで、どんな時でも肌身離さずの習慣を
励行しているのだが、新しいアクセラのスターターはプッシュ式 。
たまに、係員のいる駐車場で移動の為にキーを置いたまま車を離れる事があるのだが、このキーが
車の中にあると一切ロックが掛からないという新機構に最近気がついたという「落ち」なのである。
ああ、なぜ自然にロックが掛かったかというところですね……
ロードスターに乗車経験のある方なら、お解りだろうが、今の2000cc型でも意識的に車内空間が
タイトに作られています。所謂スポーツ車の「人馬一体感」がそこにもあるわけですが、小さめの助手席
幅が悪さをしてセンターコンソールとの間に、目一杯詰め込まれたボストンバックのコーナーが
「ドアを閉めた反動で、低めの位置にあるドアロックを、内側から押した形になった」
から、というのが原因だったんですね。
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