永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

私の正月物語

2014-01-09 | メバル
正月の釣りが尾を引いていた。

釣りは物語である。

やっていると自ずと物語が生まれ、釣り師はその物語を完結させたいと思う。

うまく完結できたり、できなかったり。

それがまた自分の物語になるのである。


尺に5ミリ足らないやつが3匹。

5ミリなんてどうってことないし、釣れるときはあっさりと尺は釣れるが、

今回はこの5ミリが遥か向こう、漠然とした途方もない距離に感じる。

たかが5ミリ、されど5ミリである。


ともかく尺越えをひとつ釣りたかった。

釣らねば私の人生は一歩も前に進まない、といったらちと大袈裟かもしれぬが、そんな気分だった。



実は一昨日(6日)でかけたのだが、予期せぬ寒さで手が凍え一時間で退散したのだった。勿論アタリさえなかった。

そして昨日、気温が緩んだので満を持して再び出かけたのだ。

ここ数年の釣行で思うことはこのポイントは普段はおちびさんしか釣れないが、正月前後だけは尺クラスが期待できるということ。

産卵を前にしてたっぷりと栄養を蓄えにこの浅い磯にやって来るに違いないが、その極端さが面白いところである。


長期の天気予報を睨むとおそらく、昨夜がそのポイントで尺が狙えるラストチャンスだった。




このところの数回の釣りはなんとか釣りが出来るという海況だったが、昨夜の海は静かで大人しかった。気温も前日とは違い指先が凍えることはなさそうだったし、なにより緩い追い風だった。

夕まづめ、いつもの釣り座に立ちキャストを開始。


最初はプラグでやってみるが反応なし。やはり活性は低そうだ。

で、フロートリグ。


始めは全くアタリらしきものはなかったが、完全に暗くなってからぼつぼつとアタリが来はじめた。

しかし、ヒットしてもみんなリリースサイズ。

そのうちサイズアップするが23センチどまり。




で、表層は諦め、底を狙うことに。

思い返せば昨年も一昨年も尺は底でヒットしたのだった。やはりあまり活性のない状況だったが、しつこく底をやっているうちにガツンと来た。

凪ぎ状態では活性は低い。決して魚がいないのではない。警戒心からか表層に出て来ず、底の岩礁の隙間でじっとしているのだ。

デカイやつほど警戒心は強い。だからこそ長く生きてデカくなれたのだ。

ならば、そんなやつの目の前にワームを持って行くしかない。いくら警戒心が強くても目と鼻の先にうまそうなものがぶらさがったら思わず食いつくだろう。

まあ、こちらの勝手な妄想かもしれないが、表層で駄目なら深いところだ。


リグをフローティングからシンキングに替える。

羽咋のあさの釣具で仕入れたドーヨ玉12g。リーダーは長めでジグヘッドは0.9gを付けた。ワームは言わずと知れたガルプ、ベビィサーディン。(言うのも恥ずかしいくらい)

とにかく遠いところである。フルキャストして着水後カウント10~15。ゆっくりと引き始める。

時々ジグヘッドが海底の岩礁にコツ、コツと当って来るくらい。

このシンキングリグは素晴らしい。ゆっくり引いてジグヘッドが軽く底に当る状態を保ってくれるのだから。

根掛かりのリスクはあるが、早めに察知してロッドを煽ってクリアする。


フォールを待って引きはじめた途端、ココン!ときた。直後、ぬっとした感触。合わせる。重さがロッドに伝わった。

思った通り一投目から来た。遠くの底だ。

ホーリーアイランドを立てて浮かせる。根にいるやつだから浮かせるのに少し時間がかかる。

この時間が面白いところ。デカメバル釣りの醍醐味だ。



尺にはちょっと足らないようだが、いい魚体、28か。

その後、ぼつぼつ25センチ前後。

その後、一段と重いやつに根に潜られた。元々根に潜んでいるやつはあっという間もなく根に潜ってしまう。ロッドを立てて巻く暇もない。

底はそのリスクが大きい。


切られたリーダーを付け直し、キャストを再開した直後だった。

ヒット直後は大したことなかったが

巻いているうちにグンと重くなり、さらに重くなって

立てたロッドを支えるのに腕が疲れるほど強烈な引きとなった。

潜るなよ、と祈りながらひたすら巻いた。

魚体が浮くまで長い時間がかかったようだった。

おそらく、ここ数回の釣行で一番の引きだったと思う。

足元まで寄った魚体を見てやった!!と思った。

ヘッドライトの光の中、身を翻して黄金色の腹を見せたが、そのデカさ。

抜き上げもぐんなりと重く、暴れて落とさないようグワシと握った。





その掴んだ感触は、ついに来たか。と確信に近いものだったが、

前回のことが頭をよぎるわけで、喜ぶのは早いと気分を引き締め、たっぷりと水を入れたバケツに入れて釣りを続行。

計測は後の楽しみ、この時合いを逃したくはなかった。


しかし、その後アタリは徐々に遠のいて、7時半になると海もベタ凪状態となり、ぱったりアタリは消えてしまった。

左手遠くの磯でヘッドライトが点いたり消えたりしているが、彼は釣れているのだろうか。

空は晴れて南の空にシリウスが一際大きく輝いていた。


リグをフロートに戻したり、ワームの大きさを替えてみたり、プラグでやったり、イロイロやってみるのだがついにアタリは戻らず、9時過ぎ諦めた。


車に戻ると、丁度左の磯でやっていた釣り人も帰って来た。

「ゴロスケさんでしょう」と彼。

防寒帽で顔を覆い目だけを出しミイラ男のようなその人は輪島の釣り師Bさんだった。

久しぶりで何やら話していると、そこにまた釣り師がやって来た。

輪島の磯を知り尽くし地元では知らぬ人のいない釣り師池山さんだった。

彼も実に久しぶりの顔だった。

以前、彼に色々輪島の磯や釣りのことを教わったこともあり懐かしい顔である。

勿論、池山さんとBさんは釣り仲間である。





彼らの前でちと気が引けるのであったが、さて計測である。

彼らも正月の泣き尺3つのことはブログで知ってくれていたので興味津々というところ。

先ずは最初の尺に足らないだろうと思えたやつ。



28だろうと思っていたが29センチだった。

それならこいつよりはっきりと大きく感じた本命は尺を越えているかも、と期待に胸は膨らんだのだが・・・



うっひゃ~~!!またしても29.5センチ、だった・・・・。


なんと5ミリの遠いことか!!!

なんだか我ながら笑えてくるのをどうしようもない。



池山さんにブツ写真を撮ってもらった。背後霊はBさん。



その後、暫く三人で楽しい釣り談義の一盛り。


Bさんは明日仕事があるからと帰り、池山さんは深夜にアタリが戻るかもしれないと釣りを開始したので、俄然私もやる気が蘇り、しまいかけたロッドを再び出して釣り場へ戻った。

まだ尺の可能性はあるのだ、と。

遅れて釣り場に戻ると、すでに彼はメバルをヒットさせているようだった。


確かに彼が言うようにアタリは戻って来ているようで、底を狙うと頻繁に当って来る。

しかし、ヒットしても小さいのばかり。


でもなんだか楽しかった。メバルたちと遊んでいるように思えた。


池山さんと並んでロッドを振ったのはいつのことだったろう。光浦でやはりメバルを釣ったのだった。随分昔のことだとその頃を思い出した。


どのくらいやったのだろう、彼のやめるという声を潮時にやめることにした。

28センチがひとつ掛かったが、このベタ凪の海にもうこれ以上デカイのが来そうな気配は消え失せていた。




ひょっとしてまだチャンスがあるかもしれないが、

私の正月の物語は決着がついた気がした。

決着つかないままの決着。そのほうが面白い決着かもしれぬ。



春になったら、新たなポイントで尺といわず、35センチを狙ってやろうと考えている。

まだそこでメバルを釣ったことはないが、以前から気になっている磯である。

池山さんもその磯には確かに怪物がいるという。


楽しみである。