農林水産省が、養豚について、わたしたちの意見を募集しています。 2014.9.30締め切り
・インターネットから5分で意見を送る
https://www.contact.maff.go.jp/maff/form/8fbd.html
「養豚農業の振興に関する基本方針」の検討における国民の皆様からの御意見 ・御要望の募集について
http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/c_kikaku/140710.html
2014年6月27日に「養豚農業振興法」が施行され、同法第3条で「養豚農業の振興に関する基本方針」を策定することとされています。
養豚農業の振興に関する基本方針には以下の事項を定める事とされています。
・養豚農業の振興の意義及び基本的な方向に関する事項
・養豚農家の経営の安定に関する事項
・国内由来飼料の利用の増進に関する事項
・豚の飼養に係る衛生管理の高度化に関する事項
・安全で安心して消費することができる豚肉の生産の促進及び消費の拡大に関する事項
・その他養豚農業の振興に関し必要な事項
上記6点について、農水省はわたしたちに意見を求めています。
豚には意見する事ができませんので、皆さんからぜひ意見してください。
意見例
養豚農業の振興の意義及び基本的な方向に関する事項
●国際原則である動物福祉の「5つの自由(飢えと渇きからの自由、恐怖と悲しみからの自由、不快からの自由、通常行動への自由、病気と苦しみからの自由)」を盛り込むなど、畜産動物福祉の向上を基本的な方向のひとつとしてほしい。と畜場では水飲み場が設けられていないところがあり、妊娠ストールでは、豚は方向転換という当たり前の行動もできない。麻酔なしでの体の一部の切断も一般的に行われている。こういった状況を持続させるのではなく、改善していくという方向を示してほしい。
養豚農家の経営の安定に関する事項
●動物福祉に配慮した経営ができるよう、福祉レベルの向上にかかわる費用を補助する政策を盛り込んでほしい。養豚農家が動物福祉に配慮した経営をしたいと考えても、豚1頭あたり3万円程度の取引では生産コストを下げざるを得ず、放牧養豚の実施や妊娠ストールを廃止することは困難である。EUでは、畜産動物福祉の法定基準に農業者が達するための補助措置や法定基準以上の高い動物福祉をおこなう農家に減少した所得を補う直接支払い制度がある。日本にもそういった制度が必要だと考える。
国内由来飼料の利用の増進に関する事項
●国内飼料で、なおかつ豚の健康に良い飼料の利用増進をしてほしい。一般的に豚には粗飼料があまり給餌されないが、豚にも繊維質の飼料が必要である。「豚は配合飼料だけでは円滑な成長・繁殖を営むことができない」(「家畜飼育の基礎」2000年)。肥育豚の3/4が胃潰瘍であるといわれるが、その原因の一つとして粒子の細かい飼料や、粗線維の不足が挙げられている。
●自然循環型の放牧養豚を推進する内容にしてほしい。
北海道の放牧養豚場、ホープランドではブロッコリー・スイートコーンなどの収穫後の跡地に牧草の種をまき、豚が放牧されている。牧草を食べつくすと、豚はほかの畑へ転牧される。豚は収穫残さを綺麗に食べてくれると言う。このホープランドの飼料自給率は70%を超える。放牧養豚のメリットは自給率だけではない。雑草の根っこも豚は食べるため雑草の繁殖も抑えられる。排泄物処理の問題も解決する。豚の糞尿の肥料効果で、放牧跡地に作付けされた野菜は上質なものができたという。
ホープランドの放牧養豚に関する報告 http://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2010/feb/spe-01.htm
豚の飼養に係る衛生管理の高度化に関する事項
●衛生管理の手法のひとつとして放牧養豚を推進する内容にして欲しい。
年々、養豚の予防衛生管理技術は向上してきているが、同時に豚の疾病は増加傾向にある(「ブタの科学」2014年)。どんなに衛生管理につとめても結局のところ工場型の大規模養豚場では豚は本来の習性を発揮できず、常にストレスにさらされている。そのような環境は病気予防に適しているとはいえない。2013年にFAO(国際連合食糧農業機関)は「1940年以降新たに出現したヒトの感染症の約7割は動物起源だ」とする報告書を出しており、その原因の一つとして工場型の畜産の拡大をあげている。
より自然な状態での豚を飼育する事こそが、高度な衛生管理でではないだろうか。
●抗生物質の使用削減を盛り込んで欲しい
アイオワ大学は2014年に「大規模養豚場の近くに住む人は、抗生物質耐性感染症のリスクが高くなる。」と報告している。また同年WHO(世界保健機関)は感染症治療で使われるさまざまな抗生物質が多くの国で効かなくなっていると発表している。抗生物質で病気を予防しようとしても結局のところいたちごっこであり、それよりも抗生物質を使用しないでよい飼育環境にするほうが根本的解決になるのではないだろうか。山梨県の放牧養豚農家では抗生物質の投与をおこなっていない。ストレスのない自然に近い環境で飼育し免疫力を高める事で、日常的な抗生物質の投与をなくすことは可能である。
●妊娠豚ストールを廃止し、母豚の群飼育への移行を促進する内容にして欲しい。
EUでは既に妊娠豚ストールは廃止されており、2014年6月には穀物メジャーのカーギル社が2017年までに妊娠豚ストールの廃止を発表した。カナダも廃止に向けて動いているところである。このストールは動物福祉の観点から容認しがたい大きな問題のあるものであり、このストールを使って生産された豚肉は、今後国際的に通用しなくなると思われる。ストールの廃止にはクリアしなければならないさまざまな問題があると思うが、方向転換もできない檻の中で日本の母豚の多くが一生のほとんどの時間を過ごしている事を考えると、廃止にむけて取り組む価値は大きい。
●免疫去勢製剤の普及を盛り込んで欲しい
外科的処置をともなわない、免疫去勢製剤(インプロバック)がすでに2010年、日本で認可されているにもかかわらず、日本ではほとんどの豚に麻酔なしでの去勢が行われている。麻酔なしでの去勢により、心的外傷性疾患や腹膜炎で死亡したり、ストレスから発育や免疫力が落ちる傾向があることが知られている。オーストラリアやニュージーランドでは10年以上の使用実績があり安全性が確認されており安全性に問題はない。またワクチンを摂取したオス豚は、外科的去勢オス豚に比べると自然なパターンで発育することができるため、飼料効率がよく、糞量も少ない。生産性・動物福祉・病気予防全ての点に置いてメリットのある免疫去勢製剤を、高度な衛生管理の手法として推進していただきたい。
安全で安心して消費することができる豚肉の生産の促進及び消費の拡大に関する事項
●動物福祉食品の普及を目指す内容にして欲しい。
放牧や、歯・尾の切断を行っていない、スノコではなくオガクズを使用しているなどの動物福祉に配慮された豚肉は、消費者が見て分かりやすいようラベルをつけるなどして、動物福祉食品(フリーダムフード)の普及に努めるべきだと思う。
2012年に生協組合員を対称におこなわれたアンケート(715人)では、86.6%が「動物の飼育環境についてより多くの情報をのぞむ」と答えている。2009年に東京食育フェアで行われた動物福祉に関するアンケート(672人)では85.9%が「価格と家畜の福祉のバランスが大切」と答えている。しかし現実に日本のスーパーに並んでいる畜産物を見て、動物がどのように飼育されたものなのかどうか、消費者は判断することができない。動物福祉のラベルのついた畜産物を普及させることは、畜産動物福祉という考えを浸透させることにもつながる。
その他養豚農業の振興に関し必要な事項
●災害時の畜産動物の救護体制の強化を盛り込んで欲しい。
東北大震災では原発警戒区域内に飼育されていた3万頭ほどの豚が放置されたまま餓死しており、こういったことの二度と起こらぬよう災害時の豚の避難先、避難が難しいのならば安楽殺させるなど速やかな行動がとれるよう、救護計画を立てておく必要があると考える。また停電時に換気扇がとまって豚が大量に死ぬということが起こっている(※)。換気や、給餌・給水等の設備が自動化された豚舎においては、停電時に備え、自家発電機や代替システムを整備する等を義務付けることも必要だと考える。
※アニマルウェルフェアに対応した家畜の飼養管理に関する検討会
平成 20 年度 第1回豚分科会議事録より
「停電で換気扇がとまって豚が大量に死んだというのは、それこそ同じぐらいの規模の農場の人と勉強会なんかをやっていると、12~13 軒の中の、例えばここ 5 年以内に 2 人とか 3 人がそういう事故、で例えば豚が何百頭死んだりとか、恥ずかしい話ですけれども現実に、そういうのは起こっているのですよね。換気扇がとまってしまって窒息死したとか。」
●環境への配慮から、養豚の飼養規模拡大を抑え、放牧養豚を推進して欲しい。
年々1戸あたりの飼養頭数は増えており、肥育豚の70%が2000頭以上の養豚場で飼育されている。規模の拡大は、機械化、施設化、畜産と耕種部門の分離につながる可能性が高く、そのような工場型の畜産は石油エネルギーに依存しており環境への負荷が高いものになってしまう。近年の異常気象に見られるように環境破壊は深刻であり、自然循環型の放牧養豚を推進すべきと考える。
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2014/9/28
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