時系列順では第2巻にあたる。
エースパイロットとなった草薙水素が
指揮官に出世するまでのお話。
以下、ネタバレはそれほど無い
と思うけど、引用はあり。
カンナミとの出会いのエピソードは
伏線として重要だし、
その後の二人の夢もとても美しい。
でも、その他の点では、
ちょっと雑味が多いかな。
特に後半の内容はワクワクさせられたが、
ちょっと取ってつけた感もあり。
クサナギ氏のような孤高の生き方に
憧れているわけではないのだが、
でも何か、心に響くものがある。
乾いた文体に対しても、
依然としてものすごくシンクロ率が高い。
文を二つか三つ読むだけで、気分が引き込まれる。
いくつかの気に入ったフレーズたち。
> 仲間なんか欲しくない。
> 仲間が欲しい奴らは、いつも周りを気にして、
> 他人の顔色を窺って、一緒に笑ったり、
> 慌てて怒ったり、無理をして泣いたり、
> 他人と同調することに必死だ。
> ・・・
> ここには、そんな連中は一人もいない。
> 一人で戦える奴だけが、空に上がってくる。
> 僕は、人を羨ましいと思ったことはない。
> それから、人に羨ましがられたいと思ったこともない。
> そもそも、羨ましいという感覚が正確に理解できない、
> といったほうが近いだろう。
> 他人がとても幸せだったり、とても立派だったり、
> とても優れていたり、そういうことを観察しても、
> 自分と比較する方向へ思考が進まない。
> 比較したって意味がない。なにしろ、
> それは乗っている機体が違うのと同じなのだ。
> 空へ上がってしまったら、乗り換えることはできない。
> 一度生まれてしまったら、人間だって
> 乗り換えることはできないのだから。
> 相手も、必死になって見ているんだ。
> 必死になって、考えているんだって、そう考える。
> 同じだ。同じコクピットが、空にもう一つあって、
> 向こうも必死になって、飛行機を操っている。
> どちらか一方だけしか残れない。
> どちらかは飛んでいられなくなる。だから必死だ。
> でも・・・・、この際だから、
> どうせなら楽しもうって思う。
> 力を抜いて、まず相手を好きになろうって思う。
> 一緒に遊ぼうって思う。
> 一緒に手をつないで踊ろうって・・・・。
> ポールが立っている周りを回っていて、音楽が聞こえてきて、
> 本当に身体の中から動きが浮かび出てくるような、
> 踊りたくなるような、そういう感じになる。
> 手を繋げば、相手の気持ちがわかって、
> 相手の動きも自然に見えてくる。
最後の奴なんかは、将棋で戦っている棋士や、
シングルスコートで戦っているテニスプレイヤー
なんかにも当てはまりそうだ。
もちろん、命を懸けているわけではないが、
でもその世界でのステータスを懸けて、
巨額の賞金を懸けて戦っているのだから。
目の前の盤面、ボールと敵以外の
すべてのことを忘れて、
今の瞬間に集中して戦っている人々。
目次の前、扉の裏におかれた
メッセージにもドキリとさせられた。
---
醜い大人たちよ。
人の命が美しいか醜いか
戦うことが正しいか間違っているか、
誰も教えてくれなかった。
教えられるはずがない。
誰も知らないのだ。
それを知ることを諦めた奴が
大人になる。
美しいという言葉でしか、
美しさを知らない。
戦うという言葉でしか、
戦う意味を知らない。
生きていることに怯えて、
なにも知りたくない及び腰。
美しくても正しくても、
醜くても間違っていても、
どちらでも良いのか?
戦う者だけが、
美しさを知ろうとしている。
ただそれだけのことだ。
それだけのことで大人になれなかった
子供たちが今も
お前たちを睨んでいる。
---
ちょっと引用し過ぎたかもしれない。
次は「フラッタ・リンツ・ライフ」。
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