日々の寝言~Daily Nonsense~

私たちは何を見ているのか?

還暦が近づいているので、
この機会に蔵書の整理を少しだけした。

その中で、美術書的なものを集めて
並べてみたら、結構いろいろある。

イタリアやロシアの宗教画から、
ダ・ヴィンチ、フランス宮廷画、ルーヴルの名品たち、
フェルメールやオランダの画家、
セザンヌ、モネ、ユトリロ、ルノアールなどの印象派、
ピカソ、ロートレック、マグリッドやエッシャー、
エステス、ホッパー、ウォーホール、オキーフ、
ラーソン、・・・

東大寺や正倉院、興福寺、から、
等伯、狩野派、琳派、若冲、深水、
天心と大観や春草、
佐伯祐三、小磯良平、有本利夫、
長谷川潾二郎、隠地妙、・・・

だいたいは、日本での展覧会の図録だ。

そうした中で、手に取って見たのは、
ニコラ・ド・スタール。

たとえば「オンフルールの空」

この、具象にもとづく抽象が大好きなのだ。
自分のものの見方がそのまま描かれている感じがする。
とても懐かしい、どこかで見たことのある空と海。

今回、何気なく解説を読んでいたら、

「対象を目に見えるとおりに描くことに
徐々に居心地の悪さを覚えるようになっていた。
というのも、あるひとつの対象、たった一つの対象を
描こうとすると、その対象と同時に存在する無限の他の対象の
集積に苦しめられることになってしまうのである・・・」

というスタールの言葉があった。

私たちは個の中に無限を、全体・普遍を見る
ようにできている。

それは、無限に変化する世界に対処するための
私たちの脳の働き方なのだ。

スタールの絵には、そうした私たちが
見ているものが、そのまま描かれているようだ。

それはまた、カズオ・イシグロの
「遠い山なみの光」にも
通じるものかもしれない。
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