日々の寝言~Daily Nonsense~

田中一村展 奄美の光 魂の絵画@東京都美術館

誘われて、東京都美術館で開催中の
「田中一村展」に行ってきた。

美術館に行くのは久しぶり。

今回の展覧会は、
大規模な回顧展で、
一村さんの子供の頃の
作品に始まって、
新たに発見された
初公開のものも含めて
たくさんの作品が集められていた。

代表的な作品は
こちらで紹介されている。

田中一村さんは、
奄美大島の画家という
イメージしかなかったが、
生まれたのは栃木県で、
その後も、千葉県などで
暮らしていたのだ。

奄美大島に移住したのは
50歳のときらしい。

小さい頃から絵の才能を発揮し、
南画家、日本画家としてキャリアを積んだが、
芸大に入るが(東山魁夷と同期らしい)、
2週間?で退学するなど、
アウトロー的なキャリアもあってか、
生前は画家としてあまり成功することはなく、
奄美大島でも染色の
アルバイトをしながら
絵を描いていたという。

会場はそれなりの混雑で、
ゆっくり進む列ができていたが、
順番に見るのは嫌いなので、
列には並ばずに、
良さそうな作品を
列の後ろから見て回った。

数え8歳の頃の作品も
とても上手。

初期には南画の山水が多いが、
その後、作風もいろいろと変わり、
模索していた様子がよくわかる。

1階、2階と時間を追って進み、
3階の最後の展示室が奄美時代。

最も有名な、田中一村の代名詞ともいえる
「アダンの海辺」と
「不喰芋と蘇鐵」が
並べて展示されている。

田中一村本人が、
「閻魔大王えの土産品」と
書いたとされているこの2作は、
いずれも個人蔵で、
一緒に観られるのは
今回が初めてということだ。

「アダンの海辺」は、
どうしてもアダンの実に
目が行くのだが、
海の描写が素晴らしい。

「不喰芋と蘇鐵」は、
ちょっとだけルソーを思わせるような
イラストっぽい構図で、
遠くに、立神という、
神が立ち寄った島も含めて、
生と死が余すところなく
描かれているという印象。

それ以外にも、
「海老と熱帯魚」や、
「奄美の郷に褄紅蝶」、
「草花に蝶と蛾」、
そして、「枇榔樹の森に浅葱斑蝶」
など傑作が並んでいて至福だ。

しかし、途中の展示室にも、
おもしろい作品はいろいろあった。

初期の頃から、
夕景のもつ懐かしい雰囲気を
描くのがとても上手。

夕景以外にも、
葉鶏頭とか、蝶など、
好きな(得意な?)画題がいろいろ
あったようで、多くの作品に登場する。

また、屏風の絵や襖絵も、
華やかな色と余白のコントラストが
良いなぁ・・・と思うものが多かった。

高知の旅で
ちょっと変わった視点から
風景を描いた
色紙も良かった。

あとは、近所の方のために描いたらしい、
写真をもとにした鉛筆の肖像画(遺影)
がいくつか展示sれていて、
これがさすがの上手さで、
「絵が上手い」のお手本のような感じ。

晩年のイラスト的なセンスも
若い頃の作品にも見え隠れしていて、
多才な人だからこそ、
成功しずらかったのかもしれない、
などと思ったり。

最後の部屋では、
NHK が作った奄美の映像が
4K で投影されていて、
これも良かった。

作品が多くて、全部見るのに
1時間半くらいかかってしまった。

図録と絵葉書を買って帰ったので、
しばらくしたら、また眺めなおして
愉しみたい。
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