カズオ・イシグロの小説。
ブッカー賞という英国の文学賞を受賞。
映画レビューサイトで、原作と映画が違う、
というコメントがあったので、原作も読んでみた。
中公文庫の古書がアマゾンで128円だった。
(今はハヤカワから文庫で出ているようだ。)
翻訳はとても読みやすく、一気に読めた。
確かに、原作は映画とはかなり違う。
ラストもかなり違っていた。
小説は、全編がスティーブンスのモノローグになっていて、
旅をしながら昔を回顧する、というスタイルで、
さまざまな「日の名残り」が重層的に描かれる。
英国貴族の時代の名残り、
スティーブンスの人生の名残り、
ミス・ケントンとの恋の名残り、
六日間の旅の名残り、
そして、ある一日の夕暮れ。
映画はロマンスの部分に重みをつけていたが、
原作では全体が淡々と描かれる。
その結果、悔恨という印象も薄くなり、
さまざまな「名残り」が織り成す風景を
離れたところから見ているような感じだ。
どちらも良かったが、順番としては、
映画を観てから原作を読んでよかったと思う。
原作がとても丁寧にスティーブンスの心理を描いているので、
逆の順番だと、映画の説明の粗さや、やや強引な読み、
が目についてしまったかもしれない。
とても上手な作家だと思う。
他の作品も読んでみたくなった。
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