日々の寝言~Daily Nonsense~

日の名残り

英国在住(5才から?)の日本人作家である、
カズオ・イシグロの小説。
ブッカー賞という英国の文学賞を受賞。

映画レビューサイトで、原作と映画が違う、
というコメントがあったので、原作も読んでみた。
中公文庫の古書がアマゾンで128円だった。
(今はハヤカワから文庫で出ているようだ。)

翻訳はとても読みやすく、一気に読めた。
確かに、原作は映画とはかなり違う。
ラストもかなり違っていた。

小説は、全編がスティーブンスのモノローグになっていて、
旅をしながら昔を回顧する、というスタイルで、
さまざまな「日の名残り」が重層的に描かれる。

英国貴族の時代の名残り、
スティーブンスの人生の名残り、
ミス・ケントンとの恋の名残り、
六日間の旅の名残り、
そして、ある一日の夕暮れ。

映画はロマンスの部分に重みをつけていたが、
原作では全体が淡々と描かれる。
その結果、悔恨という印象も薄くなり、
さまざまな「名残り」が織り成す風景を
離れたところから見ているような感じだ。

どちらも良かったが、順番としては、
映画を観てから原作を読んでよかったと思う。

原作がとても丁寧にスティーブンスの心理を描いているので、
逆の順番だと、映画の説明の粗さや、やや強引な読み、
が目についてしまったかもしれない。

とても上手な作家だと思う。
他の作品も読んでみたくなった。
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「本」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事